Category: 航空専門家の視点

  • 燃料不足に見舞われる日本の空港―インバウンドの急増が問題なのか?

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Joanna Lu
    Joanna Lu

    Joanna Lu, Head of Consultancy Asia, Cirium Ascend Consultancy

    日本は豊かな文化遺産、技術革新、さらに風光明媚な自然の美しさで称賛され、世界の観光客を魅了する重要な国であり続けてきました。最近、日本の地方空港や成田のような主要空港で、インバウンド旅行の増加を背景にした燃料供給の危機的な問題が報告されています。しかしながら、よくよく考えてみると、こうした課題は、渡航者数の増加だけに起因するというよりも、日本の高齢化および厳格な移民政策によって悪化したサプライチェーンの混乱や労働力不足に起因するものであることが分かります。

    日本政府観光局(JNTO)は、韓国、台湾およびその他のアジア諸国からの観光客が大幅に増加していると報告しています。しかし、中国から日本へのアウトバウンド観光の回復が遅れているため、進化する旅行パターンを検証しつつ、日本にとっての現在の最大インバウンド市場を特定することが不可欠です。今回の分析では、日本の海外旅行の状況、特に今後2ヵ月間に予定されている主要路線の座席キャパシティに焦点を当てて、それらの傾向を新型コロナウイルスのパンデミック前の水準と比較します。

    私たちはCiriumのスケジュールデータを活用し、パンデミック後の航空会社のキャパシティ力学の変化を観察しています。中国市場は日本にとって依然として大きく落ち込んでおり、今年第3四半期の座席数は2019年同期比で6%減少しました。それでも、韓国は日本にとって最大の国際線の目的地市場となり、座席数が2019年第3四半期と比較して10%増加しました。

    加えて、日本はオーストラリアとベトナムに新たな市場機会を見出しており、2024年第3四半期には、2019年同期の水準に対してそれぞれ29%と9%の増加を予測しています。

    都市レベルで検証すると、路線によって大きな違いがあり、需要のパターンが変化していることが分かります。

    主要市場が力強く回復

    7月と8月にソウル行きの出発便座席数が20%近く増加したことは、日韓間の文化的結びつきとビジネス関係の拡大による力強い回復ぶりを裏付けています。外交努力の強化や渡航制限の緩和も、この座席数急増に寄与しています。韓国と日本の間の旅行は現在、両国が短期訪問のためのビザなし渡航を再開したこともあって、かなり容易になりました。韓国国民と日本国民は、観光または商用目的の90日以内の滞在であれば、ビザなしで両国を往来できるようになっています。

    ビジネスと観光の中心地における復元力

    台北便の座席数は7月に8%、8月に4%、それぞれ増加しました。これは、国際会議や各種展示会の再開や、日本と台湾のハイテク産業の強固な連携に後押しされ、ビジネスと観光の旅行が復活したことを示しています。上海便の座席数は、7、8月ともに2%の増加となっています。バンコク便の座席数は、7月はなお27%の減少となりましたが、8月には増加し、パンデミック前の水準に達しました。シンガポール便の座席数は7、8月ともに4%増加しています。航空路線における日本との強い接続性と、両国の戦略的なビジネス関係に支えられて地域間旅行が促されており、そこにシンガポールの回復力が映し出されています。シンガポールは、パンデミックの問題に効率よく対処したことで、日本発着の旅行者の玄関口としての魅力が増しました。香港市場は完全には回復していません。主にキャセイパシフィック航空の機材供給不足によるもので、香港便の座席数は約14%減少しています。

    伝統的なアウトバウンド市場が抱える課題

    その一方、釜山、マニラ、ホノルルといった伝統的なアウトバウンド市場は、日本からのアウトバウンド旅行の減少により、出発便座席数が2019年の水準と比較して減少しています。釜山は接続性が拡大したソウルとの競争の中で需要減に直面し、マニラとホノルルは経済の不確実性を背景に観光客の消費力の減退に見舞われています。

    燃料供給の不足の問題については、需要サイドの要因よりもむしろ供給サイドの制約によるものとみられます。

    今年第3四半期の日本発の全体的な国際線座席キャパシティはなお2019年の水準と比べて約7%下回っており、国内線座席キャパシティも2%減少しています。

    2024年第3四半期の日本発(国際線・国内線)の総座席数は、昨年同期比では6%増えており、現在の座席不足をインバウンド需要の急増によるものとする根拠としては不十分です。

    原油精製から生まれるジェット燃料は現在、生産量が減少しています。日本における省エネルギー対策や脱炭素化の取り組みの中で、ガソリンやその他の石油製品の需要が減少しているためです。日本の石油卸売会社は統合を進め、製油所の数を減らしており、1983年には49あった稼働製油所が、2024年6月現在では20しかありません。その結果、燃料は空港に届けるのにさらに遠くまで移動させなければならず、海運業者と陸運業者の双方に影響を及ぼす労働力不足が、この問題に拍車をかけています。さらに、日本最大の製油所であるENEOS鹿島製油所の技術的問題が、状況を悪化させているのです。

    燃料不足はすでに日本中の空港、特に地方空港で障害を引き起こしています。Ciriumの空港別のスケジュールデータを見ると、地方空港によって便数の伸び方に大きなばらつきがあることが分かり、特定の場所での問題の深刻度を示しています。Cirium Ascend Consultancyは今後もこの状況を注視していきますが、危機の主な要因は、日本への旅行が急速に回復していることではないと考えています。

    日本の旅行業界はいま、回復、復元力、そして課題への対応という複雑な局面に立たされています。これらの問題に対処するためには、進化する旅行力学とサプライチェーンの制約に直面しながらも、持続可能な成長と安定を確保するための戦略的計画と、さまざまな部門間の協力が必要となります。

  • ネットゼロへの道:増え続ける商用航空界のCO2排出量(パート3)

    Andrew Doyle
    Andrew Doyle

    Andrew Doyle, Senior Director – Market Development, Cirium

    注:これは3部構成の第2部です。第1部第2部をお読みください。


    2024年4月に世界で稼働したエアバスとボーイングの旅客機タイプのフリートを見てみると、前回の排出量ピークだった2019年7月と比較して、最新世代のボーイング737Maxが(2020年後半に世界的な運航停止命令が解除されて以降)1,500機近く導入された一方、エアバスのA320neoとA321neoが計1,800機近く追加されていることが最も注目されます。この間、旧世代のA320ceoの稼働フリートが500機以上減少し、450機以上の737-800が稼働フリートから排除されました。

    ワイドボディ機については、老朽化した旅客仕様の747-400の稼働フリートが130機から20機のみとなり、レガシー機の767-300のフリートは190機近く減少しました。A380の稼働フリートは233機から160機に減少し、A330-300の稼働フリートも110機以上減っています。これらの機材は、計400機弱の最新世代のA350とA330neoの追加機材、さらに270機以上の787に置き換えられ、補充されています。エアバスとボーイングの旅客ジェット機の稼働フリートの合計はこの5年間で1,000機以上増加し、約21,000機になりました。これは排出量の点からみて、最新世代のエンジン技術の普及が進んだことによる1フライトあたりの効率性向上の相殺分を上回る増加規模です。

    ここに私たちの見解を示します。

    商用航空業界はいま岐路に立たされており、増大する旅行需要に応えつつ、環境への影響を大幅に削減するという二重の課題に直面しています。その克服のためには、航空会社、航空機メーカー、各国政府、ステークホルダーが一丸となって、持続可能な技術と燃料に投資する必要があります。

    事態の緊急性に対応し、技術革新を受け入れ、野心的な炭素削減目標の達成に向け尽力することは、健全な地球を保ったまま航空業界の未来を切り拓いていくために不可欠なステップです。

    持続可能性の道のりは平坦ではありません。

    しかし、積極的な対策と協力的な取り組みによって、航空業界はこの重大な課題に立ち向かうことができるのです。

    航空機とフライトの排出量に関する正確な知見であるEmerald Sky Aircraft and Flight Emissionsをぜひご活用ください。

  • Ascend Consultancyによる今後の展望:長距離ビジネスジェット市場の寸評

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Youcef Berour Minarro
    Youcef Berour Minarro

    Youcef Berour Minarro, Principal Valuations Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    ガルフストリーム(Gulfstream)の新型機G700は、1年以上の納入遅延と数ヵ月の不確実な時期を経て、2024年3月29日に米連邦航空局(FAA)の型式証明を取得しました。これにより、長距離ビジネスジェットに分類される同機は、顧客への引き渡しに向けて大きな一歩を踏み出しました。これは、ガルフストリームの親会社であるジェネラル・ダイナミクス(General Dynamics)にとっても、収益回復をもたらすマイルストーンとなります。ジェネラル・ダイナミクスは、ボーイング737Maxの事故後、FAAの認証プロセスが長引いたために納入遅延に直面し、結果として2023年の収益において10億ドル、利益において2億5,000万ドルの損失をそれぞれ計上したと主張しています。

    ファルコン10Xが納入されればダッソー(Dassault)の最大かつ最長航続距離の航空機となり、ボンバルディア(Bombardier)のグローバル7500やガルフストリームG700と直接競合することになります。

    ガルフストリームは形式証明取得に加えて、G700の性能向上、すなわち当初計画よりも短くなった同機種の離着陸距離についても発表しました。G700のこの前向きな展開は、長距離ビジネスジェット機市場全体が現在どのような状況にあり、2024年に何を期待すべきかについて考える良いきっかけになると思われます。

    OEMのその他の進展について

    2023年にFAA欧州航空安全機関(EASA)の認証を取得したダッソーのファルコン6Xは現在、納入が進められています。現在2機が就航しており、今年中に増産が始まる見込みです。Cirium独自の新規納入予測によると、今年中に15機ほどの引き渡しが行われ、その後2025年にかけて納入が増加するとみられます。ダッソーが開発中のファルコン10XのEIS(稼働開始)は、当初は2025年を予定していましたが、サプライチェーンの問題を理由に2年遅れの2027年に延びました。ファルコン10Xが納入されればダッソー(Dassault)の最大かつ最長航続距離の航空機となり、ボンバルディア(Bombardier)のグローバル7500やガルフストリームG700と直接競合することになります。

    ボンバルディアのグローバル8000は、グローバル7500(現在165機以上が稼働中)の航続距離延長型バリアント(異形機種)として2022年に再びローンチ(開発立ち上げ)され、現在もなお開発中となっています。この8000は、最大マッハ0.925の速度まで認証された航続距離7,700nmの7500の後継機となるもので、機体と全長も同じになっています。その性能の向上は、GE Passportエンジンのソフトウェア更新と空虚重量の最適化によってもたらされ、既存のタンクにもっと多くの燃料を搭載できるようになります。ボンバルディアは、改修指示書(Service Bulletin=SB)を通じて7500の所有者に改修オプションを提示する予定です。Global 8000は2025年に就航する予定です。

    現在稼働中のビジネスジェット機フリートは23,000機を超えており、そのうち長距離向け区分の機材が4,000機近くを占めています。

    フリート規模

    現在稼働中のビジネスジェット機フリートは全体で23,000機を超えており、そのうち長距離向け区分の機材が4,000機弱(17%)を占めています。このセグメント(区分)の航空機は通常、航続距離が5,000海里を超え、さまざまなOEMの主力製品となっています。このセグメントにおけるOEMの裾野は、他のビジネスジェット機セグメントに比べてはるかに狭くなっています。長距離機材市場は現在、ガルフストリーム(49%)、ボンバルディア・グローバル(Bombardier Global)のファミリー(28%)、ダッソー(24%)が独占している状態です。このセグメントで最も人気のある機種はガルフストリームG550で、現在は570機が稼働しています。これに僅差でトライジェット(三発ジェット)のファルコン900ファミリーが続き、現在529機が稼働中です。

    ソース:Cirium Fleets Analyzer, In-service, April 2024

    在庫機材と流動性

    2023年の12ヵ月間に公開された利用可能機材状況に基づく当社の分析によると、同年の長距離ビジネスジェット機の総在庫水準は、2022年と比較して大幅に増加しています。2023年初頭の時点では、一般に販売可能な長距離ビジネスジェット機の数は、このフリート全体の4%強にあたる約160機となっていました。この数字が2023年末までには、230機以上にまで増加していたのです(50%増)。ビジネスジェット機全体でも同様の傾向が見られ、同じ12ヵ月間で在庫レベルが最も増加したのはミッドサイズ機(中型機)のセグメントでした。

    2024年4月現在、販売中の長距離ビジネスジェット機は230機で、これは販売中のビジネスジェット機フリート全体の6%に相当します。

    流動性の点についてCirium Fleets Analyzerのデータをみると、2023年に取引されたフリート総数は前年比約20%減となっています。2024年はこれまでのところ、中古機販売については相対的に伸びが鈍化し、機材の市場滞留日数が伸びていることから、市況が減退している可能性があります。

    ソース:Cirium Fleets Analyzer and Publicly Sourced Inventory

    2024年の長距離カテゴリー機の価値はどうなっているのか?

    今年に入ってからも、機材が市場に長く滞留する中、在庫水準が依然として増加を続けており、流動性は低下傾向にあります。機材についての当社の価値評価に関連して、航空機取引業者と話し合ってみると、機材価格には全般的に下落傾向が見られるようです。今年に入ってからの4ヵ月間で、既に機材の価値は若干軟化していると私たちは評価しています。私たちはこのサイズのカテゴリーだけでもガルフストリームG450、G550、V、G650/G650ERの各タイプについて評価を実施し、結果として、市場価値の評価(オピニオン)については2%から最大11%までの減少を観察しました。ただし、特にG450については、チャーター便の運航数が減少して以来、市場が大幅に減速しているため、顕著に20%も減少しています。一方でG650ERの低機齢の機材は、価値を安定して維持しています。ボンバルディアのグローバル7500は、当社による価値オピニオンが2~6%上昇しました。2024年を通して同じような傾向が続いても、驚くことはないはずです。私たちは折に触れ、市場に対して分析を報告するつもりです。

  • COMACはエアバス、ボーイングの2社独占に本当に挑戦できるのか?

    COMACはエアバス、ボーイングの2社独占に本当に挑戦できるのか?


    市場機会の見通し

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Rob Morris, Ascend by Cirium

    筆者:Rob Morris, Global head of consultancy, Cirium Ascend Consultancy

    今年1月に発生した737-9 Maxの不幸な事故により、ボーイング737の生産体制が引き続き苦境に陥っています。このため私たちは、シングルアイル機の供給がボーイングの納入遅延により不安視されるなか、中国商用飛機(COMAC)が生産を拡充してその需要を満たしていく可能性について何度も質問されてきました。エアバスもA320ファミリーの生産拡大に悪戦苦闘していることを考えれば、この疑問はさらに大きくなります。A320ファミリーの生産は、2019年には月平均で60機に近づいたものの、新型コロナウイルスのパンデミック期には40機未満に逆戻りしました。その後、現在は50機程度となり、2026年の計画目標である75機に向かおうとしているところです。5月初旬に香港で開催された航空機に関するイベント「ISTAT Asia」で、あるリース会社の幹部は「ボーイングとエアバスはCOMACにチャンスを与えた」と述べました。また、別の関係者は航空機メーカーの頭文字を使って「今日の“AB”は、10年後には“ABC”になる」と指摘しました。つまり、COMACに対してドアは開いているのですが、それをくぐり抜けていくことができるのかどうかが問題なのです。

    需要の観点から見れば、ビジネスチャンスは確かに存在します。

    2023年11月に公表された最新のCirium Fleet Forecastでは、今後20年間で計40,000機以上のシングルアイルおよびツインアイルの旅客ジェット機の納入需要が発生すると予測しています。

    エアバスとボーイングは2000年から2019年までの20年間に、計19,600機弱の商用旅客機を納入しました(納入機数には、ボーイングが1997年に買収したマクドネル・ダグラス社のレガシー航空機5機が含まれます。この買収により、2000年は、商用大型機市場が現在のような2社独占状態を築いた年となりました)。したがって、今の2強企業が2043年までに生産量を倍増させない限り、第3の企業の参入余地が確実に出てくるのです。

    それにしても、33,000機近くもの納入需要が予測されているコモディティのシングルアイル機分野において、COMACは現行機種のC919の生産拡大を果たし、そのチャンスを生かすことができるのでしょうか?受注状況には明るさが見えており、Ciriumの機材データベースには現在、既に引き渡された5機に加え、さらに998機が確定発注されていると記録されています。しかしながら、下のグラフが示す通り、この受注残は2040年いっぱいまでの納入が予定されており、競合するエアバスやボーイングのシングルアイル機よりもはるかに長い納入期間となっています。現在、受注残の46%のみが航空会社6社から発注コミットメント(発注の誓約)を得ており、全社の本拠地が中国となっています。残りの543機は12社のリース会社から発注されています。その発注元は、BOC Aviationを除いて本拠地が中国国内にある中国資本の会社です。これらの機材については、引き渡し先の顧客を見つける必要があります。新しい航空機プログラムがこれほど早い段階で、しかも数多くのリース会社から引き合いに出されるのは異例なことです。これはおそらく、航空各社がC919について、今のところどのように評価しているのかを示唆しています。ただし、最近の中国国際航空と中国南方航空からの100機ずつの発注は、多くのリース会社の発注よりもはるかに確固とした内容になっているようです。

    CiriumのFleet Forecastも楽観的な見方を示しており、2042年までのC919プログラムの機材納入数は現在1,700機弱と予測されています。これらの納入機の大半は国内顧客向けです。輸出顧客向けに販売されるのは、概ね政治的影響力によって販売キャンペーンを推進できる中国の「一帯一路」関連諸国向けの約250機にとどまると予想されます。今回の予測期間中、中国では6,000機以上のシングルアイル機の新規納入が見込まれており、C919の市場シェアはボーイングの30%、エアバスの45%に対し、約25%を獲得するとみられています。

    そのような楽観的な見方がある中で、シングルアイル機市場に参入しようと努力しているCOMACの現在の実績はどうなっているのでしょうか。また、その実績は、最も新しく市場に参入して成功した企業と比較してどうなのでしょうか。ここで言う企業とはもちろん、1980年代後半に市場に参入したエアバスのことです。エアバスは1988年3月、エールフランスに最初のA320を納入しました。COMACは2022年12月、中国東方航空にC919の初号機を引き渡しました。それから17ヵ月後の今、COMACは、その同じ単一の顧客に5機を納入したばかりです。エアバスは1988年のA320の初号機納入から17ヵ月間のうちに、ヨーロッパ、北米、アジアの9つの異なる航空会社に計49機を納入しました。35年以上前、とりわけ市場が現在よりもはるかに小さかった時代に、エアバスはその10倍の数の新型機を世界に向けて送り出しているのです。エアバスは当時、今のCOMACにはない重要な優位性を有していました。それは1960年代以降、フランスとイギリスにあるエアバスのパートナー企業が、シングルアイル旅客機であるカラベル、トライデント、ワン・イレブンを計630機以上製造し、世界の90弱の顧客に納入していたことです。このころのエアバスは、競合していたボーイングとマクドネル・ダグラスのシングルアイル機に対し、A320ファミリーを信用度の高い世界的な競合機として確立するのに必要な定時出発の信頼性と性能を顧客に提供するべく、独自の航空機サポートネットワークを活用できたのです。COMACはそのようなサポートネットワークを持たないため、これから顧客の航空会社向けのサポート体制を懸命に構築しなければなりません。航空各社は、定評あるエアバスやボーイングの機材を凌駕するような、性能と定時出発の信頼性をCOMAC機に期待するからです。

    既に納入された航空機の現在の実績は、どうなっているでしょうか?Ciriumのデータによると、中国東方航空の5機は今、上海虹橋から成都、北京、西安行きの国内3路線の定期便に使用されています。

    フライトト追跡データによると、同機は4月に計398便、1日平均では5.9時間、運航されたことが確認されています。

    この同じ月、中国で稼働しているボーイング737-8 MaxとA320neoの1日あたりの平均飛行時間は、それぞれ8.1時間と8.4時間でした。つまりC919は、今のところ明らかに抑制されたスケジュールで運航されています。運航サービス面での機材の能力を証明し始める段階に入る中、その稼働水準は、平均するとボーイングおよびエアバスの競合機の70%程度となっています。しかしながら、今年2月の時点では、C919は、737とA320の1日あたりの平均稼働時間の50%程度しか達成していなかったため、改善の兆しが既に見えていると言えます。また、路線の点でも改善の兆しがあります。報道によると、C919は2024年6月1日に、上海虹橋―香港線の単発の復路便で運航される予定です。この後、同路線がC919を使った定期便になるとの続報もありました。

    将来についてはどうでしょうか?既に触れた通り、Ciriumの受注残データでは、COMACが2031年に130機以上の機材を顧客に納入するとの見通しが示されています。COMAC自体、今後5年以内に年間の生産能力を最大150機に増強する意向を示しています。また、COMACは、A320にその小型、大型のバリアント(異形機種)であるA319とA321を追加したエアバスの戦略にやや似た形の航空機ファミリーを開発しているところです。現行のC919より胴体が短いバリアントである「プラトー(plateau)」バージョンについては、チベット航空がローンチカスタマーとして発注し、その製造・開発が今年2月に立ち上がっています。2029年までに年間150機の航空機を製造できるようにするという構想は、表面上は野心的に見えます。1998年に納入された168機のA320ファミリーは、同年にボーイングが324機、マクドネル・ダグラス(そのころにはボーイングが100%所有)も42機を納入した当時のシングルアイル機市場で30%以上のシェアを占めていました。それでも、エアバスは年間150機以上の納入を達成するのに10年以上を要したのです。Ciriumの予測では、2029年に世界で計約1,800機のシングルアイル機が納入されることになっているため、COMACの150機は市場全体の10%未満となります。

    COMACが大型商用機市場でエアバスやボーイングと肩を並べる可能性があることについては、疑いがありません。しかし、この分析によれば、COMACがその市場参入のドアをくぐるペースは、30年以上前にエアバスが同じドアをくぐった時よりも相対的に遅くなることが示唆されています。現在ボーイングは明らかに弱体化していますが、いずれは問題を解決し、ボーイング737ファミリーの生産についても、COMACが2029年に構想する生産機数の約4倍の水準にまで回復させることでしょう。同じ時間の尺度で、エアバスも、COMACが構想している約6倍の規模でA320ファミリーを生産することになりそうです。

    大型商用機市場への参入障壁は常に高く、ボンバルディアのシングルアイル旅客機であるCシリーズ(CSeries)が最終的に失敗に終わったように、多くの企業にとって乗り越えられない可能性が高い分野です。COMACは、そのような市場の最も新しい挑戦者です。COMACが享受しているのは巨大な国内市場です。おそらく新造シングルアイル機の総納入数の15%程度が中国向けになることでしょう。国内市場を活用して、売上を伸ばすことができるのです。しかし今のところ、その販売ペースは、1980年代に市場参入した当時のエアバスが達成したペースよりもはるかに遅いようです。したがって、今の「AB」が本当に「ABC」になるのは、かなり先のことになりそうです。

    Cirium Fleet Forecastの詳細についてはこちらをご覧ください。

    他の記事を読む

  • Ascend Consultancyによる今後の展望:足許の金利上昇がリース料に与えている影響について

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Toshimitsu Sogabe, Aviation Consultant, Cirium Ascend Consultancy

    FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年2022年3月より11回連続で利上げを行い、その後の5月1日には6会合連続で政策金利を据え置くことを発表した。

    金利とリース料についてはこれまで一定程度の相関関係が確認できるため、金利上昇はリース料の上昇にも寄与してきたものと考えられてきた。但し、リース料の上昇幅が十分であったかどうかについては議論の余地がある。

    The above chart shows that the market lease rates of Airbus A320neo and Boeing 737 Max jets have reached the $400,000-per-month mark

    ソース: Ascend Value Trends, Federal Reserve Economic Data (FRED)


    上図を確認する限り、A320NEOとB737MAXに関しては足許月40万ドルの大台に乗ったものと観測されている。特にA320NEOについては、デビュー年である2015年に月40万ドル超のリース料からスタートして以降下落傾向にあったが、2024年にようやく同水準まで回復したことになる。

    但し、同期間中の金利水準を確認してみると、足許の米10年債利回りよりも2015年のほうが遥かに低い水準で推移している。

    同様に、2007/2008年では新造機価格が数百万ドル単位で低かったであろう前世代のB737NGやA320CEOのリース料についても、当時40万ドル以上と高値圏で推移していたにも関わらず、同時期における米10年債利回りは足許の水準と同等以下で推移していた。

    リース料上昇幅は不十分か

    過去との対比で足許の資金調達コストが高くなっているにも関わらず、新造機のリース料が過去と同等以下の水準となっている背景として、過去と比較し(i) 航空機ファイナンス需要が過去対比で増加している一方、リース市場において次世代機の供給不足により十分なセール・アンド・リースバック取組機会がないことから、過当競争によりリース料が抑制されリターンが低くなっている、又は (ii) 各リース会社が取引時において、リース満了時の残価設定や重整備調整金及びメンテナンスリザーブの回収額を高めに設定している、或いは(iii)その両方が起きているものと推察される。

    上記(i)については、ボーイングとエアバスの直近の月間生産数を確認する限り、明らかに次世代機の供給不足となっている。ナローボディ機の月間初飛行機数を確認する限り、エアバスは2024年第1四半期で月平均46回、ボーイングは2024年の2月・3月に月平均12回であった。既に新造機の発注を行っている一部のリース会社では取組パイプラインを確保できているものの、全体として各リース会社は新造機の取組に苦慮している状況であり、トップライン確保のため中古機取組へ戦略シフトを検討するリース会社も出てきている。(ii)については、次世代機/前世代機ともに整備コストが上昇していること、次世代機の供給が追いついていないことから、リース満了時の残価及びリース満了時調整金の増加を期待した取組が一部で増えているものと考えられるが、供給不足が中長期なトレンドとなるかについては注意が必要である。

    将来のリース料の変動や各航空機リース会社の次世代機へのセール・アンド・リースバックの取組スタンス変更については、Cirium Ascend Consultancyとしても今後注視していきたい。

  • 誰が前進し、誰が後退するのか――航空機のグラウンドタイムに注目する

    Andrew Doyle
    Andrew Doyle

    Andrew Doyle, Senior Director – Market Development, Cirium

    CiriumのGround Events Analyticsの導入に伴い、これまで見えにくかった機体整備点検や客室改修の分野に対する独自の洞察が可能になりました。私はこの新しいツールを使って、中国のMRO市場、エミレーツ航空の大規模なエアバスA380の客室刷新キャンペーンの進捗状況、さらにボーイング787の納入の遅れが767のアップグレード需要に与える影響について調べました。

    宇宙ベースの追跡で中国の現状が明らかに

    中国における整備、修理、オーバーホール業務の競争状況については、包括的なフライト追跡データの入手が困難なため、これまでは把握が困難でした。しかし、Ciriumが宇宙ベースのADS-B(Automatic Dependent Surveillance – Broadcast=自動従属監視放送)のサービスプロバイダーであるAireonと提携したことにより、航空機の到着から出発までのグラウンドタイム(地上にいる時間)における位置と継続時間を初めて正確にモニタリングできるようになりました。この追跡情報を、市場をリードするCiriumの機材およびMRO契約データと組み合わせることで、当社の市場専門家とデータ科学者たちは、特定の機材がいつ、どこで定期整備を受けているかについて、高い信頼度をもって推測する高度なアルゴリズムを開発することができました。

    以下のツリーマップでは、Ground Events Analyticsを使用して実行できる分析タイプの例が示されています。これは、2024年2月までの12ヵ月間に記録された特定の機材タイプごとの地上日数の合計に基づき、中国のMROプロバイダーをランク付けしたものです。それぞれのケースで、ヘビーチェック(徹底した点検)を受けた機材の数と地上滞在時間の中央値を示すことが可能になっています。

    巨大な改修プログラム

    エミレーツ航空に目を向けると、この新ツールは、同社がアップグレードを予定している全67機のA380のうち少なくとも22機について、まったく新しいプレミアムエコノミー・キャビンの設置を含めた客室改修が完了したことを示しています。同社は2022年11月に業界最大級の改修プログラム計画を発表しており、8日ごとに1機の改修開始を目指し、各改修の完了までには約16日かかると述べています。つまり、今年5月末までに67機すべてのA380を改修し、運航に復帰させるということです。

    Ground Events Analyticsによれば、これまでにアップグレードが確認された22機のうち9機は、地上滞在中に「C」または「ヘビー」クラスの整備・点検も受けていることが分かっています。

    追跡された地上時間が最も短かった機材は、2023年5月中旬から客室の改修を受けた機体番号A6-EVFの23日間でした。これまでにアップグレードされた22機は、既に新キャビンが取り付けられた状態でエミレーツ航空に引き渡された最後の6機のA380フリートに加わることになります。

    ドリームライナー納入遅延でレガシー・ツインジェットが息を吹き返す

    最後に、2021年5月から2022年7月にかけてのB787(ドリームライナー)の納入停止が、ユナイテッド航空のレガシーフリートであるB767の客室アップグレード計画にどのような影響を与えるかを見てみました。私のグラフでは、ドリームライナーの引き渡しが遅れる中、旧型のツインジェット機の改修活動が著しく活発化していることが示されています。


    Ground Events Analyticsが将来の機材整備の監視と予測にどう役立つかについてもっと知りたい方は、Ground Eventsページ(英語)をぜひご覧ください。

  • Ascend Consultancyによる今後の展望:先進航空モビリティ – 2024年4月の寸評

    Ascend analyst Tim Chun Hing Li
    Ascend analyst Tim Chun Hing Li

    Tim Li, Aviation Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    今年第2四半期に入り、Cirium Fleets Analyzerのデータベースには、年初来計450件弱の先進航空モビリティ(AAM)セクターの新規発注コミットメントが記録されました。合計機数は13,500件をわずかに超えています。AAM市場は、ボロコプター(Volocopter)が2024年のパリ五輪期間中の運航開始を宣言するなど、当初設定された運航開始日の目標達成に少しずつ近づいています。第1四半期には、いくつか明るい材料も出てきました。EHangはE216-Sについて、中国民用航空局(CAAC)から世界初の型式認証を取得した後、その一般販売を開始しました。他のOEM(航空機メーカー)も、自国の規制当局から生産組織承認(POA)を取得し、設計に基づく生産への道をさらに切り開いています。それでも、そのような事業が実現するという絶対的な確証はまだありません。

    データの対象範囲は以下の通りとなっています。

    航空機市場グループ航空機メーカー機種注釈
    eVTOL – UAV/UASBETA TechnologiesALIA-250 
    eVTOL – Urban Air MobilityAMSL AeroVertiiaNewly added
    eVTOL – Urban Air MobilityAerofugiaAE200 
    eVTOL – Urban Air MobilityArcher AviationMidnight 
    eVTOL – Urban Air MobilityAscendance Flight TechnologiesAtea 
    eVTOL – Urban Air MobilityAutoFlightProsperity 1 
    eVTOL – Urban Air MobilityBETA TechnologiesALIA-250 
    eVTOL – Urban Air MobilityCrisalion MobilityIntegrityNewly added
    eVTOL – Urban Air MobilityDuFour AerospaceAero3 
    eVTOL – Urban Air MobilityEHangEH216 
    eVTOL – Urban Air MobilityEHangVT-30 
    eVTOL – Urban Air MobilityEve Air MobilityEve 
    eVTOL – Urban Air MobilityHorizon AircraftCavorite X7Newly added
    eVTOL – Urban Air MobilityJaunt Air MobilityJourney 
    eVTOL – Urban Air MobilityJoby AviationS4 
    eVTOL – Urban Air MobilityLilium GmbHLilium Jet 
    eVTOL – Urban Air MobilityManta AircraftANN2 
    eVTOL – Urban Air MobilityOdys AviationOdys eVTOL 
    eVTOL – Urban Air MobilityOverair IncButterfly 
    eVTOL – Urban Air MobilityPlanaCopterPlane CP-01 
    eVTOL – Urban Air MobilitySirius AviationSirius Jet 
    eVTOL – Urban Air MobilitySkyDriveSD-05 
    eVTOL – Urban Air MobilityTCab TechE20 eVTOL 
    eVTOL – Urban Air MobilityVertical Aerospace Group LtdVX4 
    eVTOL – Urban Air MobilityVolocopter GmbHVoloCity 
    eVTOL – Urban Air MobilityVolocopter GmbHVoloConnect 
    eVTOL – Urban Air MobilityWisk Aero LLCCora 
    eVTOL – Urban Air MobilityXTI Aircraft CompanyTriFan 600 
    Business Electric – Multi EngineElectraElectra eSTOL 
    Business Electric – Multi EngineAirflowM200 
    Business Electric – Multi EngineBye AerospaceeFlyer 800 
    Business Electric – Multi EngineElectronElectron 5 
    Business Electric – Multi EngineEviationAlice 
    Business Electric – Single EngineBETA TechnologiesCX300 
    Business Electric – Single EngineVoltAeroCassio 330 
    Regional Electric – SmallAura AeroERA 
    Regional Electric – SmallHeart AerospaceES-19Programme cancelled, and revised to ES-30
    Regional Electric – SmallHeart AerospaceES-30 
    Regional Electric – SmallJektaPHA-ZE 100 
    Regional Electric – SmallLYTE AviationLA-44 Skybus 
    Regional Electric – SmallMaeve AerospaceMaeve 01Programme cancelled, OEM revised to M80*

    eVTOL – アーバンエアモビリティ(UAM)

    Cirium Fleets Analyzerが捉えたeVTOLセクターの発注コミットメントの総数は現在、10,300件をわずかに上回っています。EVE Air MobilityとVertical Aerospaceは、過去9ヵ月間に新規受注を一切記録していないにもかかわらず、最も発注コミットメントが多いOEMとして際立っています。これらの新規コミットメントは圧倒的にアジア太平洋地域からのもので、以前はよく見られたリース会社のような馴染みのある名前はほとんどありません。

    資金調達の持続――業界の成長に不可欠な要素

    Ciriumのデータによると、発注コミットメントの伸び率自体は減少しています。この6ヵ月間のコミットメント総数の純増数は600件をわずかに下回る水準で、うち約80%がアジア太平洋地域からのものでした。コミットメント件数は全体として、その前の6ヵ月間と比較して50%以上減少しています。しかし、開発サイクルの現段階では、受注伸び率の減退は想定外ではありません。

    CiriumのFleets Analyzerデータベースによると、現在、機体デザインが登録され、発注コミットメントも得ている機体デザインは20以上に上っており、新規参入企業も続々と現れています。これらの要因からみて、AAM市場に対する熱意はまだ衰えていないことが分かります。

    一般に発注コミットメントとは、将来に支払いが行われることが確約されていることを意味し、多くの場合は合意された諸条件が適用されます。そのような条件の例としては、開発スケジュールの遵守が挙げられます。発注コミットメントは投資元の信頼を高め、最終的には支払いに結びつくものですが、OEMにとって即座にキャッシュフローの源にならないことがよくあります。製品開発、特にこのような先駆的技術の開発には、長い時間とコストがかかります。約束を果たすために設定された節目に到達し、それによってAAMのビジョンを実現する能力を獲得するために、OEM各社は、親会社、政府、あるいは既存・新規の投資家から、新たな資金を調達する必要があるのです。

    直接融資が減少すれば、業界の将来の発展に大きな影響を与えるでしょう。製品開発とマーケティングの努力への継続的なサポートを保証するという意味で、近い将来から中期的な将来にかけて、企業・事業の統合が注目を浴びる可能性があります。

    ビジネス電動機 – マルチエンジン

    電動ビジネス航空機セクターの発注コミットメントの総数は現在3,200件を超えており、過去6ヵ月間で約500件増えました。この約500件のうち330件以上を占めるのが、米ダラスを拠点とするJSX航空によるコミットメントです。その発注機種はAURA AEROのERA、ElectraのeSTOL、Heart AerospaceのES-30などさまざまです。また、ElectraのeSTOLは、アメリカのリージョナル機運航会社であるSurf Air(90件)のほか、インドのJet Set Go(50件)からも追加の受注コミットメントを得ています。

    *ヨーロッパの新興企業であるMaeve Aerospaceはその戦略を見直しして、「M80」と名付けられた80人乗りのハイブリッド電動航空機という新しいコンセプトを打ち出しました。つまり、もともと開発していた新型機「M01」(44人乗り)については、現在は保留中ということになります。その当初の発注がM80に移管されるかどうかはまだ不明です。

    現在、こうした大型規格のコンセプトに沿った機材設計のほとんどは、航空機が完全に電気だけで動くというビジョンから転換し、代わりにハイブリッドのコンセプトに基づいて行われるようになっています。


    Sara Dhariwal
    Lead Appraiser – Helicopters & AAM

    Ascend analyst Tim Chun Hing Li

    Tim Chun-Hing Li
    Aviation Analyst

    Pascal Chui

    Pascal Chui
    Valuations Analyst

    Yuri Zhang

    Yuri Zhang
    Valuations Analyst

    Eric Tamang

    Eric Tamang
    Valuations Analyst

  • ドリームライナーの第一陣の就航機、改修の時期が接近中

    James Mellon, Senior Aviation Data Research Analyst, Cirium

    Ciriumは、AIX 2024のOfficial Data Partner(オフィシャル・データパートナー)です。

    ボーイング787-8(ドリームライナー)の第一陣の就航機は、機齢が既に10年以上になっています。機体は大掛かりなメンテナンスが必要であり、最近ではいくつかの航空会社が運航機の客室の改修プログラムを発表しています。Ciriumのシニア航空データリサーチアナリストであるJames Mellonが、Cirium独自のデータ洞察力を駆使して、この新たな市場機会を分析します。

    ボーイング787はまったく新しい機種と見なされていますが、商用運航は2011年から行われています。したがって、最も古い787-8型機は、10年以上にわたって運航されています。機体の初回の構造的なメンテナンス・点検が必要な時期に達しているだけでなく、客室を刷新する機種の最有力候補にもなっています。

    いくつかの航空会社は最近、自社の787-8を今後数年間で新しい客室に改修することを明らかにしました。とはいえ、Ciriumが最近発表したGround Events(英語)分析ツールを使って調べてみると分かる通り、大掛かりな内装アップデートが行われるのは、これらの改修例が初めてではないとみられます。

    Ciriumは2019年10月以降、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)、ユナイテッド航空の各社が運航する787-8を対象に、計18件の客室改修事象を追跡してきました。

    先ごろユナイテッド航空は、自社のワイドボディ機全機について、新しいビジネスクラス「Polaris(ポラリス)」を組み込んでリフレッシュするとともに、プレミアムエコノミーの客室「Premium Plus(プレミアム・プラス)」を導入しました。Ground Eventsの分析によると、ユナイテッドの787-8の12機すべてがその改修作業のため、アモイにあるHAECOの施設(Taikoo Aircraft Engineering)に移送されました。

    ソース:Cirium Ground Events

    787-8については、2011年から12年にかけて最初の15機が納入された日本では新規航空会社の立ち上げに使用されています。格安航空会社(LCC)のZIPAIR Tokyo(ジップエア・トーキョー)は2019年にJALによって設立され、当初のフリートは親会社であるJALの最も機齢の高い787-8で構成されていました。この機材譲渡に先立ち、機体の整備点検と客室の改修が行われ、座席数は206席から290席に増え、より高密度な座席レイアウトが導入されました。

    ジップエアのフリートについてはその後、工場で生産されたばかりの787-8が2機、補充されました。しかし、ボーイングが2021年6月から2022年8月にかけて787の納入をいったん停止したため、2機とも当初の予定より遅れて同社に到着しています。新型コロナウイルスのパンデミック後に増加した旅行需要に対応するため、JALは中古の787-8を複数、ジップエアに追加譲渡していますが、いずれも以前に譲渡した機材と同様の客室改修工事が必要となりました。

    Ground Eventsの分析によると、ジップエアの6機の787-8は、3つの異なる施設において、自社とサードパーティのMROプロバイダーにより改修が施されました。

    ANAグループはAirJapan(エアージャパン)を立ち上げ、2024年2月に運航を開始しました。ジップエアと同様、エアージャパンもANAから譲渡された高機齢の787-8を使用して中距離・低コストの運航サービスを行っています。さらに5機がオールエコノミーの客室に改修され、2024年中に就航する予定です。

    「-8」は787の初期型のバリアント(異形機種)で、胴体延長・長距離型の787-9が初就航するまでの2年半の間に計165機が納入されています。

    ソース:Cirium Fleets Analyzer

    最近、787-8の改修プログラムに関する航空会社の発表が相次いでいます。改修の際、古い座席は多くの場合、新造機との共通化を図るため新しい座席に取り替えられます。

    Ciriumのフリートデータによると、787-8は7機が永久に使用を停止しました。ボーイングがプロトタイプ(試作機)として保有する4機に加え、Norwegian(ノルウェイジアン)の旧機体2機が2023年にパーツアウトされています。また、運航会社に引き渡されることのなかった別の機体も部品を取り外され、解体されようとしています。

    これまでに787の全バリアント計1,100機超が製造されており、中でも787-8は現在383機が稼働中で、11機が保管されています。787の受注残は800機弱で、その中には48機という比較的少ない数の787-8の確定購入契約が含まれています。つまり、787の生産は2030年代まで保証されているということです。

    新型ワイドボディ機の製造・納入ペースは、航空会社が希望するよりも遅くなっています。結果として、市場では中古機が好まれるようになりました。その機材価値は上昇し、長期的な運航を意図した客室改修のビジネス事例が正当化されるようになっています。

    航空会社6社が最近、今後数年以内に787-8の客室改修工事を実施すると発表しました。こうしたアップグレードの中心となるのは、新しい座席、機内エンターテインメント、インターネット接続システムです。場合によっては、これらの航空会社が運航する、一般的には低機齢の他のワイドボディ機と内装が同じものになるでしょう。

    ソース:Cirium Fleets Analyzer

    2019年にCollins Aerospace(コリンズ・エアロスペース)製の新しいビジネスクラス席「Club Suites(クラブ・スイート)」を立ち上げたブリティッシュ・エアウェイズは、2024年内にそれを787-8フリートに導入します。座席の横方向の配列が従来の「2-3-2」構成から「1-2-1」構成に変更されたため、すべての乗客が通路に直接アクセスできるようになり、利便性が向上しました。これらの機材は、他の客室のアップグレードとWi-Fiの追加を含めて、新たに納入される同類機種の787-10やエアバスA350-1000と同等の内装となります。CiriumのGround Eventsの分析によれば、今回の787-8の改修は、イギリスのカーディフにあるBAの整備施設で実施された同社の777フリートの改修に続くものです。

    エチオピア航空はAdient Aerospaceに対し、787のビジネスクラス用ライフラットシートの供給を依頼しています。CiriumのFleets Analyzerによると、エチオピア航空は、150度のリクライニングが可能で「2-2-2」配列のアングルシートのビジネスクラスを備えた787-8を10機運航していますが、どの機材に改修を施すかについては発表していません。この10機は同社保有機のうち最も機齢の高い787-8で、「1-2-1」配列でプライバシードア付きの最新世代のビジネスクラスシートが普及する前の2012年から2014年にかけて納入されました。

    今後予定されている改修のすべてにおいて、プレミアム客室が「1-2-1」配列に変更されるわけではありません。

    ジェットスターは、アブレスト(横一列の席数)が「7」の構成を維持する予定ですが、プレミアムの旅行需要が高まっているため、この客室クラスの座席数を21席から44席に増やします。カンタス航空の子会社も、11機の787-8に乗務員休憩スペースを設置すると発表しており、それらの機材を新たな長距離路線の市場開拓のために使用する可能性を示唆しています。Fleets Analyzerによると、ジェットスターは98機のA320neoファミリーを発注残として確保しており、その中にはA321XLRが36機含まれています。これらの長距離用シングルアイルジェット機は、現在787-8が就航しているジェットスターの路線に投入される可能性があり、それによりジェットスターの路線網拡大の余地が広がることになります。

    複数の航空会社がこうした比較的機齢の低い機材の客室改修を計画していること、また重整備が必要なタイミングでもあることから、論理的に考えて、787-8を運航する他の航空会社もこの機会に自社フリートを更新するとみられます。

  • 求めれば、必ず与えられる:データと対話し、スマートな知見を得る方法

    Thomas Burke, Director of Software Engineering, UI Platform, Cirium

    Alex Brooker, VP of Research, Development and Discovery, Cirium


    データがしばしば新たな石油と呼ばれる世界では、データへのアクセスやその分析方法が驚異的なスピードで進化しています。この分野で最もエキサイティングな進歩の一つは、間違いなく大規模言語モデル(LLM)が主流になってきたことです。今やあらゆる業界の開発者が、LLMの驚くべき能力を解き放つAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)にアクセスできるようになっています。

    こうしたテクノロジーに関する数多くの有望な応用例の一つとして、自然言語主導のデータアクセスを現実にする能力が挙げられます。データ実務者は常に、自分たちのデータからより効率的に情報を抽出したいと考えており、LLMはそのための魅力的な新機能を備えています。

    LLMがどれほど優れているかということはもちろん、LLMがデータを本質的に理解することはできないにせよ、適切に活用すれば、データの照会や要約に役立つのだということを知っておきましょう。しかし、LLMの活用にはいくつかのガイダンスが必要となります。そのようなガイダンスは、自然言語のプロンプトを正確にデータクエリに変換するのに役立つメタデータの形で提供されます。

    一般的な方法の一つに、Text-to-SQLがあります。これは、汎用LLMのパワーを活用しつつ、ユーザーの質問、SQLの挙動の詳細を示す「システム・プロンプト」、そしてデータベース・スキーマに関する詳細なメタデータを提供するものです。つまり、ここから何が生まれるのでしょうか?それは、データベースに対して検証、サニタイズ、実行できるようなSQLクエリです。

    「AA100便の現在位置は?」

    もう一つの一般的な戦略は、「ファンクション・コーリング」として知られているものです。このテクニックは、言語モデルを使用して、関数を呼び出すために使用できるパラメータを生成するものです。ファンクション・コーリング(Function Calling=関数呼び出し)は例えば、「AA100便の現在位置は?」「自分のフライトが遅れる可能性は?」といった質問に答えるべく、Cirium Sky API(英語)を呼び出すために必要なパラメータを生成し、返されたデータを自然言語として要約するとともに、ユーザーにアウトプットを中継することができます。ハルシネーション(事実に基づかない情報を生成すること)を起こすこともありません。

    Text-to-SQLとファンクション・コーリングのどちらを選択するかは、目の前にあるタスクによります。Text-to-SQLの方が表現力豊かで、複雑な洞察的知見を提供できることは間違いないのですが、実装次第では、信頼性とセキュリティ上の理由からファンクション・コーリングの方が望ましいかもしれません。

    セマンティック・レイヤー(Semantic Layer)は、柔軟なモデリングと、プログラムでアクセス可能な方法を用いたデータの記述を行う上で役に立ちます。

    どのようなテクニックを選ぶにせよ、メタデータへのアクセスを提供することは極めて重要です。これに対する一般的で効果的な解決策は、セマンティック・レイヤーの実装です。セマンティック・レイヤー(Semantic Layer)は、柔軟なモデリングと、プログラムでアクセス可能な方法を用いたデータの記述を行う上で役に立ちます。これは、言語モデルへの適切なメタデータの反映を保証するべく、スケーラブルなソリューションの提供を手助けします。

    要約すると、自然言語駆動型データのアクセスと分析の統合は、データ専門家の能力を増強し、複雑なタスクを自動化し、さらに膨大なデータセットを扱う際の効率化を促すのです。LLMはどのような製品であれ、その背後にあるシステムの一部に過ぎず、Text-to-SQL、ファンクション・コーリングともに、今やスタックの一部となっています。

    LLMが進化し続ける中、この分野でのより一層の刺激的な発展が期待されています。この分野でのさらなる最新情報に期待しましょう。当社の研究開発チームにぜひお問い合わせください。

    最新の生成AIテクノロジーに興味がおありですか?

    最新情報をご希望の方は、当社チームまでお問い合わせください CTA。または、当社ラボチームとの協働に関心がおありの方はご登録をお願いします。Cirium Sky API(英語)の詳細については、こちらをご覧ください 。

  • Ascend Consultancyによる今後の展望:ボーイング737の生産率が2024年の納入動向に与える影響とは?

    Aircraft Appraiser of the Year
    RobMorris Cirium
    RobMorris Cirium

    Rob Morris, Global Head of Consultancy, Cirium Ascend Consultancy

    3月20日にロンドンで開催された会議「バンク・オブ・アメリカ・グローバル・インダストリアルズ」で、ボーイングの最高財務責任者(CFO)を務めるBrian West氏は、現在の737の生産率について具体的には述べなかったものの、以前はその月産機数が「30機台前半から半ば」であったと明言しました。このことは、以下に掲載したCiriumのフリートデータのチャートで示されています。このチャートは、ボーイングとエアバスの主要なシングルアイル機製造ラインで生産された機材の初飛行を追跡したものです。しかし、ボーイングが今年1月と2月に達成した初飛行はそれぞれ19機と11機に過ぎず、月平均36機近い初飛行を記録した昨年2月から7月にかけての「30機台前半から半ば」の水準を大きく下回っていることも明らかです。昨年のその時期以降、生産数は明らかに下降線をたどり、現在では「10機台前半から半ば」あたりに位置しているのです。

    このことが2024年の納入動向に与える影響とは何でしょうか?現在、Cirium Ascendによる暫定的な仮説では、737Maxが今年中に500機納入されることになっています。数週間前までは、この仮説はほぼ確実なものに思えましたが、今では大きな下振れリスクがあるようです。

    3月22日の本稿執筆時点では、Ciriumのデータには、(上記の初飛行のデータには含まれているものの)分析からは除外された737-800ベースのP-8の1機を含む計58機の737が2024年に納入されると記録されています。したがって、現四半期末に近づく今、この合計には57機の737Maxのみが含まれています。同じデータによると、ボーイングのMaxの在庫は167機(いずれも初飛行済みではあるものの未納入の機体)です。しかし、この合計には27機の737-7Maxと6機の737-10Maxが含まれており、どちらの機種(バリアント)も米連邦航空局(FAA)による認証がまだ下りていないため、2024年に顧客に納入されることはほぼありません。そのような訳で、在庫から引き渡されると想定されるのは、最大で737-8 Maxが130機、737-9 Maxが4機となります。これを今年の累計値に加えると、計191機の納入となります。

    つまり、ボーイングが当社の暫定的な仮説である500機の納入を達成するためには、さらに309機を初飛行させて納入する必要があるのです。

    単純計算すると、ボーイングの月産機数が来月から「30機台前半から半ば」まで回復すると仮定すれば、1ヵ月あたり34機以上の新造機が製造されることになります。しかしながら、これはあり得ないシナリオのように思えます。ボーイングが諸問題を解決し、再び2023年半ばの水準に向けて増産を開始するまでには、おそらく最大で3ヵ月はかかると考えた方がよさそうです。

    このシナリオでは、6月まで現在の水準で生産が行われ、その後9月までには「30機台前半から半ば」に回復すると仮定した場合、2024年の新造機の追加数は約250機となります。この数字を現時点の総計および在庫からの将来の推定納入機数に加えると、2024年全体の推定納入機数は約440機となります。

    このリスクを僅かながら軽減する明るい材料が一つあります。1月29日に行われたボーイングの昨年第4四半期決算説明会では、最高経営責任者(CEO)を務めるDave Calhoun氏が「2023年に生産された機材のうち、まだ仕掛品が25機ほどある」と指摘しました。もしこれらの航空機がまだ初飛行を終えていないのであれば、今年中に完成して引き渡される候補となり、下振れリスクをある程度軽減することができます(ただし、これらの機材がどの機種なのかは不明ですが)。

    よって、2024年に737Maxを500機納入するという当社の暫定的な仮説についての下振れリスクは40~60機程度となります。

    航空会社からは既に今年の納入不足が予想されるとの声が聞かれ、地域的・世界的なキャパシティ不足はさらに深刻化しています。この”危機”が長く続くことがないとしても、ボーイング737の生産面の苦境は早急に解決する必要があるでしょう。


    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。

  • 航空輸送量は2023年に再上昇:2024年、業界回復の次に来るものは?

    Kevin O’Toole, Chief Strategy Officer, Cirium

    航空業界は遂に復活しました。出そろった2023年の実績関連の数字を見ると、世界の旅客数は明らかに新型コロナウイルス感染症のパンデミック前の水準に近づいており、年末までには2019年のピークよりわずかに3%少ないというところまで来ました。しかし、それ以上に重要なのは、旅客収入が遂に4年ぶりの高水準に達したことです。問題は、この力強い収益回復がどこまで続くか、さらに需要の回復が業界の収益力強化につながるかどうかです。

    業界の最近までの不況が前例のないものであったことは、記憶しておくべきでしょう。2020年初頭に世界的パンデミックとなった新型コロナウイルス感染症の発生により、旅客輸送量は60%減少し、2年後の2022年に需要が回復しても、輸送量はコロナ禍前の水準に比べてなお約27%減少したままでした。2001年に9・11アメリカ同時多発テロが発生したときのことを振り返ると、当時の世界の旅客輸送量は最悪時でも3%減と変動幅は比較的小さく、その数年後にはアジアでSARSが発生したにもかかわらず回復を果たしました。

    世界の四半期別旅客輸送量と収益 – 2023年

    四半期旅客数旅客収入旅客輸送量
     vs 2022vs 2019vs 2022vs 2019vs 2022vs 2019
    Q153%-7%84%2%63%-11%
    Q234%-3%43%6%39%-6%
    Q325%-1%22%6%28%-2%
    Q426%-1%21%6%28%-1%
    Year 202333%-3%37%5%37%-5%

    それとは対照的に、今回の景気後退は過去に例を見ないほど長く、深刻なものでした。 ちなみに、旅客輸送量は第二次世界大戦中でも毎年増加していました。したがって、2023年に収益(収入)と輸送量が回復したことは、市場がようやく正常に近い状態に戻るという歓迎すべき兆候となります。

    CiriumのDiio FM輸送・運賃モデルでは、世界の旅客数が2023年夏のピーク期にパンデミック前のレベルを僅差で上回ったことを示しています。通年で前年を上回るには至らなかったとはいえ、これは運賃の堅調な回復を伴うものでした。追跡された旅客収入はほぼ年間を通じて過去最高を記録し、2023年末時点で前回のピークから5%増加しました。そのような楽観論には、注意すべき点もあります。ドルのインフレ率は2019年からの5年間で約20%の上昇となったため、昨年の旅客収入の総計は実質的に減少したままでです。

    その回復ぶりも一様ではありません。出張旅行は相変わらず低迷しており、企業はコスト管理面だけでなく、二酸化炭素排出量の目標の達成も迫られています。

    これはアマデウス(Amadeus)とセーバー(Sabre)からの収益にも表れており、GDS代理店を通した予約は2023年中、パンデミック前の水準を約30%下回り続けていました。このGDSの水準低下には他の要因もありますが、搭乗した旅客数の回復と比べると対照的です。

    長距離路線の需要も回復が遅れていていますが、パンデミック時に国境を越えた旅行が制限されたことを考えれば、驚くには当たりません。2023年の世界の有償旅客キロメートル(RPK)は、リージョナル(地域)・国内市場は活況だったものの、長距離路線が伸び悩んだことから、5%減少しました。

    この地域路線需要を牽引してきたのはアメリカの国内市場で、2022年半ばからコロナ関連規制が解除され始めて以来、輸送量の伸びが着実にペースを上げています。その集計値は2023年、すべての月で2019年を上回りました。旅客数は前年のピークを4%上回り、旅客収入は同じく17%増という好調な結果となりました。

    西ヨーロッパは、2022年夏のやや混乱をきたした市場再開以来、出遅れを示しながらもアメリカ市場の上昇軌道に追随している状態です。路線網の拡大が続いたため、この域内のRPKは6%増加した一方、旅客数はなおパンデミック前より2%低い水準だったものの、旅客収入は堅調に伸びて9%増となりました。

    先導市場であるアメリカ―西ヨーロッパ間の北大西洋航路も、同じ軌道を辿っています。その旅客輸送量は2023年夏のシーズン以降、パンデミック前のレベルを常に上回りましたが、旅客収入は年間を通じて伸び、2023年末には6%上回りました。

    passenger walking through airport

    欧米市場では回復ペースが定着し始めていますが、アジア太平洋市場はまだこれからです。新型コロナウイルス感染症のもともとの発生源であった中国の市場は、2022年前半の都市封鎖の第2波で再びブレーキがかかり、中国人の旅客数を再び減少させ、アジア太平洋地域全体の成長を鈍化させました。

    中国本土とインド亜大陸を計算から除外しても、その他の東アジアおよび太平洋地域における需要回復は時間がかかっています。

    この地域内の旅客数は2019年の最高値を12%下回っており、おそらくアメリカ国内市場やヨーロッパ域内市場からは6~12ヵ月、回復が遅れています。それでも、回復傾向自体は定着しつつあり、旅客収入は2019年並みで、運賃水準も順調に推移しています。

    アジアの市場回復が続いていることから、世界の輸送量は2024年を通して上向き傾向を続けることでしょう。 より大きな問題は、特に投入コストが上昇し続ける中で、航空会社が需要と供給のバランスを保つことができるかどうかだと思われます。2024年に入って以降のCiriumの将来予測スケジュールを分析すると、年間の座席キャパシティの伸びは4%程度の微増にとどまり、2023年と同様、需要の伸びよりも1~2ポイント低くなる可能性が高くなっています。

    しかし、それもまだ変わるかもしれません。 9・11テロ後のような過去の回復サイクルでは、需要回復の見込みによって市場シェア争いに火が付き、業界の利益を圧迫したものでした。今回は違うかもしれないのです。この業界は20年前よりも企業統合が進んでいます。今後もハワイアン航空、ITAエアウェイズ、SAS、TAPポルトガル航空などがさらに大きなグループに加わる予定です。前例のないパンデミック、ヨーロッパと中東で勃発した武力紛争、持続可能性に関する圧力の高まりといった要素が合わさり、不透明な市場に座席キャパシティを再び加えようとする意欲を減退させる可能性があります。2024年にどうなっていくのか、ぜひ注目しておきましょう。

  • 2024年に注目すべき航空業界の指標が生産量である理由とは

    Chris Wills, Head of Consultancy Operations, Senior ISTAT Appraiser, Cirium Ascend Consultancy

    「私たちは(概ね)まだ上昇過程にある」という結論は、Cirium Ascend Consultancyの最新ウェビナー「まだ上昇中ですか? 2024年の航空市場展望」での議論から導き出されたものです。ウェビナーでは、Lalitya Dhavala(バリュエーションマネージャー)が司会を務め、Rob Morris(コンサルタント統括)とGeorge Dimitroff(バリュエーション統括)が、市場の主要素の2019年からの回復状況について議論しました。

    概要

    • 旅客輸送量は昨年11月には2019年の水準にほぼ達しており、なお概ね増加傾向にあります。その増加率は2.5%とわずかに落ち込んだものの、まだ失速を示唆するものではありません。しかし、地政学的リスクとマクロ経済の動向には注意を払う必要があります。
    • 座席キャパシティは増加し、2024年初頭には2019年同期の水準を6%上回る見込みです。
    • 世界の旅客フリートは増加傾向にあります。既に2019年の水準を上回っており、その構成も変化しています。
    • 機材の稼働率も上昇中で、月間稼働時間は2019年の水準にほぼ戻っています。
    • 駐機・保管中の在庫機材は減少しています。(一時的に)保管中の低機齢の機材のうち約400機がGTFエンジン搭載機または737-9となっていますが、737-9の方はほとんど保管されていません。
    • 納入機数は伸び悩んでいます。2024年1月は、2023年同月と比べて納入機数、初フライト数ともに減少し、2019年同月よりも顕著に減少しています。
    • 高機齢の機材に対する需要は上昇を続けており、在庫機数、価値、リース料にそれが反映されています。
    • 商用機の受注残は増加傾向にありますが、統計的に正規化して配備フリートに占める割合で見ると、以前のような歴史的な高水準には達していません。
    • Cirium Fleet Forecastに基づけば、受注が増加する余地はあるものの、納入が目標より遅れているため、既にかなりの数になっている受注残がさらに増えることになります。
    • 逸話に富んだ事例報告が相次いでいるにもかかわらず、現実の取引の増加ぶりはほんの僅かなものです。
    • 機材の価値とリース料は上昇しており、金利が急速または大幅に低下しなければ、リース料はさらに上昇する余地があります。
    • 新造機材の価格は上昇しています。これは9・11米国同時多発テロ以降に見られた現象ですが、今回の景気サイクルにおいては同様の状況にはならないかもしれません。
    • 新造機の価値全体に占めるエンジン価値の割合は、予備エンジン、オーバーホール、LLP(ライフ・リミテッド・パーツ=寿命制限部品)の価格高騰に伴って上昇しています。しかし、これは新造機の価格上昇によってのみ持続し得るものであり、そうでなければ、エンジン価値とメンテナンスコストは、ある時点で必然的にその上昇速度を緩めることになるでしょう。
    • 2024年に監視すべき重要な点は機材の生産体制であり、当面は特に計画された増産に向けた進捗状況に注目したいところです。しかしながら、OEMが今後5年間に生産率を急激に引き上げれば、価値とリース料の上昇傾向を台無しにしかねないというリスクにも留意すべきです。
    • 現在は明らかに機材の品質が重視されるようになっているため、ボーイングは以前よりも低い市場シェアを受け入れざるを得なくなるかもしれません。
    • 改めて、2024年のAppraiser of the Yearにおいて私たちに投票してくださった皆様、本当にありがとうございました。

    詳細情報

    旅客輸送量の動きを見ると、依然として増加傾向にあります。ただし、昨年12月については、11月よりも伸びが鈍化したため、世界全体での増減率は2019年12月比で2.5%減となりました。アメリカを含む大規模な国内線市場では、需要がやや軟化した一方、座席キャパシティは増加しています。これは今後注視すべき点です。当然ながら輸送量は季節によって変動します。2019年の数字は12月のものですが、回復が依然として軌道に乗っているかどうかを判断するには、夏のシーズンが重要な意味を持ちます。

    地政学的リスクは常に存在しており、今はむしろそのリスクは増大しています。

    マクロ経済も考慮すべきですが、今のところ物価上昇は需要動向には影響を与えていません。

    12月の減少は、ほぼ2019年の水準に戻った11月と比べて小幅な軟化傾向であり、少なくとも回復の失速を示すものではありません。

    キャパシティが輸送量を上回るペースで増大することは長期的には健全ではありませんが、成長予測の先行指標となることもあります。予定座席キャパシティは、2023年末に2019年の水準をわずかながら上回り、今年第1四半期末までには2019年比6%増となる見通しです。

    世界の旅客フリートは増大傾向にあり、今では2019年の稼働フリート規模を上回っています。確かに2024年のフリートは増大していますが、2019年のそれとは状況が異なっていることに注意しなければなりません。その一例として、市況が低迷した時期に事実上、すべての747-400が退役したことが挙げられます。

    さらに、フリートが増えただけでなく、もうひとつの重要なキャパシティ指標である機材稼働率も上昇しました。機材の月間フライト時間は、ほぼ2019年の水準に戻っています。

    駐機・保管機材の在庫は減少しており、再稼働しない機材もある一方で、復帰する可能性のある機材も相当数あります。現役復帰の有力候補となる機材は、保管期間が2年未満のものと、15年未満のものです。とはいえ、機齢15年以上の機材が1,000機もあります。通常なら復帰は期待できないものの、現在の制約のある供給状況を考えれば、復帰する機体が一部あるかもしれません。A320neoと737-9については、一時的に稼働を停止しているに過ぎません。今後数ヵ月は移動平均で約300機以上が駐機・保管されることになりますが、最終的にはすべてが復帰して運航されることになっています。

    新造機の供給は、市場の成長に向けて伸び悩んでいる分野のひとつです。2024年1月は、2023年同月と比べて納入機数、初フライト数ともに減少し、2019年同月よりも顕著に減少しています。このような課題を惹起する要因は数多くあります。エアバスもボーイングも、現在の水準を上回る月次納入率を目標としているにもかかわらず、これからの1年間でそれを達成する見込みはなさそうです。それでも、このどちらかのOEMが2025年または2026年に計画目標を達成した後、さらに高い生産率を求めようとした場合には、長期的にみて機材の供給過剰が問題となる可能性があります。

    商用機の受注残は増加傾向にあり、確定発注で14,000機に迫ろうとしていますが、配備(就航)フリートの割合は歴史的な高水準には達していません。シングルアイル機は2020年にピークに達して約85%となり(その年のフリートの混乱により偏りがあったとはいえ、それ以前のピークは2014年の77%でした)。一方、ワイドボディ機は、前回の景気後退期の2008年にピークの70%以上となりました。

    Cirium Fleet Forecastに基づけば、10年後までの納入を見据えた受注拡大の余地はあります。しかし、既にかなりの規模になっている受注残と、OEM(航空機製造企業)が直面している納入面の課題(その一部は直近のAscend Forecastの終了後に浮上しています)を考えると、受注拡大の余地はどの程度あるのでしょうか?

    リース付き機材の移動平均の売上が伸びている一方、昨年末の取引減少の影響もあり、また1月末に開かれたダブリンでの業界会合から伝えられた逸話的な示唆とも比較すると、予想されるよりも緩やかな上昇となっています。

    すべての機材タイプに当てはまるわけではありませんが、大半の機材の価値とリース料は上昇しています。フリート加重平均ベースでみると、基準価値に対する市場価値の比率(MV・BV率)はコロナ禍前よりも高くなっています。

    リース料は伸びているとはいえ、なお大体において価値の変動に追随しており、今年はさらに上昇する余地があります。コロナ下でどん底だった状況を考えると、最近の上昇ぶりはパーセンテージで見て顕著です。しかし一方、過去の水準と比較し、さらにインフレや金利を考慮すれば、リース料はそれほど高いとは言えません。また、機材の所有コストが、航空会社の直接運航コスト(DOC)の中で人件費、燃料費、整備費に次いで4番目に大きい項目であることは注目に値します。リース料が高騰しても、他のコストの上昇に比べれば、運航会社はそれほど痛みを感じることなく上昇分を吸収することができるのです。

    新造機の価格は、長年にわたる停滞を経て上昇しています。これは2003年から2008年にかけても見られた傾向ですが、その後の世界金融危機で価格は暴落し、真に回復することはありませんでした。しかし、いくつかの理由から、今回の景気サイクルではそうならないかもしれないのです。受注残は非常に大きな規模となっており、それが2030年代まで続く見込みです。つまり、OEMは既に受注契約にエスカレーション条項の要素を組み込んでおり、これは新規納入価格の継続的な上昇という点で有利に働きます。供給の制約が続いている間は、それが新造機価格の上昇を下支えします。ところが、今後10年間の後半にその制約が克服され、OEMが過剰生産に転じれば、上昇傾向の一部が反転するか、上昇幅が横ばいになる可能性があるのです。

    新造機の価値に占めるエンジンの価値の比率は上昇していますが、この状態が長く続くとは思えません。 新品の予備エンジン、オーバーホール、LLPの価格が上昇し続けるのであれば、機体の価値も上昇しなければなりません。そうでなければ、機齢の低い機材のパーツアウトを促す裁定取引が生じる可能性があります。解決策は、機材メーカーが新造機の価格を一貫して引き上げることです。一方でエンジンメーカーは、アフターマーケットからの収益への依存度を下げ、新造の搭載エンジンの販売価格を引き上げる必要があります。

    2024年以降に注目すべきは生産率です。今のところ、納入目標を達成することについては、明確な課題があります。生産率の向上が切実に求められているのですが、もし生産量が今後10年間の終わりまで、あるいはそれ以降も増え続ければ供給過多の状態となり、価値とリース料が再び圧迫される恐れがあります。当然ながら、特に持続可能性の目標を達成するためには、需要を満たすだけでなく、機材のリプレースを促すためにも、新しい航空機が必要なのです。

    競争という点では、デュオポリー(2社による市場独占)がなくなることはないでしょう。市場には、キャパシティの面でも価格競争力の維持の面でも、デュオポリーが必要なのです。

    また、私たちは、ボーイングが737の価格を大幅に引き下げることができるとは思えないし、その意思もない(あるいはその必要もない)とみています。納入率が低いと単価は高くなります。とはいえ、納入が大幅に遅れた場合の補償により、航空会社が支払う実質的な最終価格が引き下げられる可能性もあります。かつてボーイングは市場シェアを守ることに注力していた可能性があるものの、現在は明らかに量ではなく質に焦点を移しています。過去に私たちは、どちらかのOEMの市場シェアが著しく低下した場合には、まったく新しい航空機プログラムの立ち上げを予想することもあり得ました。しかし、これほど大規模かつ長期的な受注残を抱えているため、短期的にはそのようなビジネス機会はあまりないと思われます。したがって、ボーイングは当分の間、過去20年よりも数量的に小さい市場シェアを容認することになるかもしれません。

    Aircraft Appraiser of the Year

    最後に、Appraiser of the Yearにおいて私たちに投票してくださった皆様、重ねて本当にありがとうございました。

    私たちはこの栄誉に恥じないよう、最も多くの賞を受賞した鑑定士チームとして期待されるあらゆること、さらにそれ以上の努力をこれからも続けて参ります。


    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。