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誰が前進し、誰が後退するのか――航空機のグラウンドタイムに注目する
Ground Events Analyticsが、中国のMRO市場、エミレーツ航空のA380改修プログラム、そして世界中の何百もの整備格納庫でいま実際に何が起きているのかを明らかにします。
筆者:Andrew Doyle, Senior Director, Market Development
CiriumのGround Events Analyticsの導入に伴い、これまで見えにくかった機体整備点検や客室改修の分野に対する独自の洞察が可能になりました。私はこの新しいツールを使って、中国のMRO市場、エミレーツ航空の大規模なエアバスA380の客室刷新キャンペーンの進捗状況、さらにボーイング787の納入の遅れが767のアップグレード需要に与える影響について調べました。
宇宙ベースの追跡で中国の現状が明らかに
中国における整備、修理、オーバーホール業務の競争状況については、包括的なフライト追跡データの入手が困難なため、これまでは把握が困難でした。しかし、Ciriumが宇宙ベースのADS-B(Automatic Dependent Surveillance – Broadcast=自動従属監視放送)のサービスプロバイダーであるAireonと提携したことにより、航空機の到着から出発までのグラウンドタイム(地上にいる時間)における位置と継続時間を初めて正確にモニタリングできるようになりました。この追跡情報を、市場をリードするCiriumの機材およびMRO契約データと組み合わせることで、当社の市場専門家とデータ科学者たちは、特定の機材がいつ、どこで定期整備を受けているかについて、高い信頼度をもって推測する高度なアルゴリズムを開発することができました。
以下のツリーマップでは、Ground Events Analyticsを使用して実行できる分析タイプの例が示されています。これは、2024年2月までの12ヵ月間に記録された特定の機材タイプごとの地上日数の合計に基づき、中国のMROプロバイダーをランク付けしたものです。それぞれのケースで、ヘビーチェック(徹底した点検)を受けた機材の数と地上滞在時間の中央値を示すことが可能になっています。
巨大な改修プログラム
エミレーツ航空に目を向けると、この新ツールは、同社がアップグレードを予定している全67機のA380のうち少なくとも22機について、まったく新しいプレミアムエコノミー・キャビンの設置を含めた客室改修が完了したことを示しています。同社は2022年11月に業界最大級の改修プログラム計画を発表しており、8日ごとに1機の改修開始を目指し、各改修の完了までには約16日かかると述べています。つまり、今年5月末までに67機すべてのA380を改修し、運航に復帰させるということです。
Ground Events Analyticsによれば、これまでにアップグレードが確認された22機のうち9機は、地上滞在中に「C」または「ヘビー」クラスの整備・点検も受けていることが分かっています。
追跡された地上時間が最も短かった機材は、2023年5月中旬から客室の改修を受けた機体番号A6-EVFの23日間でした。これまでにアップグレードされた22機は、既に新キャビンが取り付けられた状態でエミレーツ航空に引き渡された最後の6機のA380フリートに加わることになります。
ドリームライナー納入遅延でレガシー・ツインジェットが息を吹き返す
最後に、2021年5月から2022年7月にかけてのB787(ドリームライナー)の納入停止が、ユナイテッド航空のレガシーフリートであるB767の客室アップグレード計画にどのような影響を与えるかを見てみました。私のグラフでは、ドリームライナーの引き渡しが遅れる中、旧型のツインジェット機の改修活動が著しく活発化していることが示されています。
Ground Events Analyticsが将来の機材整備の監視と予測にどう役立つかについてもっと知りたい方は、Ground Eventsページ(英語)をぜひご覧ください。