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Ascend Consultancyによる今後の展望:ボーイング737の生産率が2024年の納入動向に与える影響とは?


機材納入についての仮説には現在、大きな下振れリスクがあるようです。

Aircraft Appraiser of the Year


筆者:Rob Morris, Global Head of Consultancy, Cirium Ascend

3月20日にロンドンで開催された会議「バンク・オブ・アメリカ・グローバル・インダストリアルズ」で、ボーイングの最高財務責任者(CFO)を務めるBrian West氏は、現在の737の生産率について具体的には述べなかったものの、以前はその月産機数が「30機台前半から半ば」であったと明言しました。このことは、以下に掲載したCiriumのフリートデータのチャートで示されています。このチャートは、ボーイングとエアバスの主要なシングルアイル機製造ラインで生産された機材の初飛行を追跡したものです。しかし、ボーイングが今年1月と2月に達成した初飛行はそれぞれ19機と11機に過ぎず、月平均36機近い初飛行を記録した昨年2月から7月にかけての「30機台前半から半ば」の水準を大きく下回っていることも明らかです。昨年のその時期以降、生産数は明らかに下降線をたどり、現在では「10機台前半から半ば」あたりに位置しているのです。

このことが2024年の納入動向に与える影響とは何でしょうか?現在、Cirium Ascendによる暫定的な仮説では、737Maxが今年中に500機納入されることになっています。数週間前までは、この仮説はほぼ確実なものに思えましたが、今では大きな下振れリスクがあるようです。

3月22日の本稿執筆時点では、Ciriumのデータには、(上記の初飛行のデータには含まれているものの)分析からは除外された737-800ベースのP-8の1機を含む計58機の737が2024年に納入されると記録されています。したがって、現四半期末に近づく今、この合計には57機の737Maxのみが含まれています。同じデータによると、ボーイングのMaxの在庫は167機(いずれも初飛行済みではあるものの未納入の機体)です。しかし、この合計には27機の737-7Maxと6機の737-10Maxが含まれており、どちらの機種(バリアント)も米連邦航空局(FAA)による認証がまだ下りていないため、2024年に顧客に納入されることはほぼありません。そのような訳で、在庫から引き渡されると想定されるのは、最大で737-8 Maxが130機、737-9 Maxが4機となります。これを今年の累計値に加えると、計191機の納入となります。

つまり、ボーイングが当社の暫定的な仮説である500機の納入を達成するためには、さらに309機を初飛行させて納入する必要があるのです。

単純計算すると、ボーイングの月産機数が来月から「30機台前半から半ば」まで回復すると仮定すれば、1ヵ月あたり34機以上の新造機が製造されることになります。しかしながら、これはあり得ないシナリオのように思えます。ボーイングが諸問題を解決し、再び2023年半ばの水準に向けて増産を開始するまでには、おそらく最大で3ヵ月はかかると考えた方がよさそうです。

このシナリオでは、6月まで現在の水準で生産が行われ、その後9月までには「30機台前半から半ば」に回復すると仮定した場合、2024年の新造機の追加数は約250機となります。この数字を現時点の総計および在庫からの将来の推定納入機数に加えると、2024年全体の推定納入機数は約440機となります。

このリスクを僅かながら軽減する明るい材料が一つあります。1月29日に行われたボーイングの昨年第4四半期決算説明会では、最高経営責任者(CEO)を務めるDave Calhoun氏が「2023年に生産された機材のうち、まだ仕掛品が25機ほどある」と指摘しました。もしこれらの航空機がまだ初飛行を終えていないのであれば、今年中に完成して引き渡される候補となり、下振れリスクをある程度軽減することができます(ただし、これらの機材がどの機種なのかは不明ですが)。

よって、2024年に737Maxを500機納入するという当社の暫定的な仮説についての下振れリスクは40~60機程度となります。

航空会社からは既に今年の納入不足が予想されるとの声が聞かれ、地域的・世界的なキャパシティ不足はさらに深刻化しています。この”危機”が長く続くことがないとしても、ボーイング737の生産面の苦境は早急に解決する必要があるでしょう。


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