Category: 航空専門家の視点

  • 航空会社によるACMIの徹底活用

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。

    Toshimitsu Sogabe, Aviation Consultant, Cirium Ascend Consultancy

    航空会社にとって機材、乗務員、整備、保険(ACMI)のリースは、運航面の課題に対処する上でますます不可欠な戦略となっています。新造機材の納入遅延、部品不足につながるサプライチェーンの制約、整備ターンアラウンド時間の長期化、全体的な運航上の制限といった要因が、ACMIソリューションに対する需要を押し上げ続けています。このような状況下で、私たちは、ACMI専門プロバイダーのフリートを徹底して活用している航空会社を評価してみました。

    以下の表には、2024年7月(北半球の夏)時点でACMIプロバイダーからの旅客フリートを多く保有していた航空会社上位10社が列挙されています。注意していただきたいのは、Cirium Fleets Analyzerで非ACMIプロバイダーとして分類されている”伝統的な”航空会社は含まれないということです(例えば、フィンエアーは自社保有のA330をカンタス航空にウェットリースしていますし、エア・バルティックはA220をルフトハンザ・グループにウェットリースしています)。

     AirlinesJul-2024Fleet from ACMI
    1Lufthansa Group35E190 E1/E2, CRJ1000, A320
    2THY (Ajet)25A320, A321, 737 Max 8
    3TUI Group24A320, 737-800, 737 Max 8
    4VivaAerobus21A320
    5SAS20CRJ900
    6Indigo16A320
    7Air France-KLM Group13E190 E1, A319, A320, A330-200
    8Condor9A320, A321
    8Wizz9A320, 737-800
    10Jet28A320, A321
    Others118
    TOTAL 298

    出典: Cirium Fleets Analyzer

    上記のリストには、フルサービスキャリア、格安航空会社(LCC)、リージョナル航空会社、貨物を運ぶ航空会社など、多様な組み合わせの航空会社が反映されています。

    これとは対照的に、2025年1月(北半球の冬)時点の上位10社には、ACMIの専門プロバイダーからのフリートを増やしたり減らしたりする航空会社がある一方で、完全にリストから外れる航空会社もあり、順位に変動が見られます。

     AirlinesJan-2025vs Jul-2024
    1VivaAerobus243
    2Indigo182
    3Lufthansa Group23-12
    4SAS15-5
    5THY (Ajet)13-12
    6Condor7-2
    7Air Peace66
    7Air France-KLM Group6-7
    9Saudia4-1
    9Air Arabia41
    9El Al41
    9Azerbaijan Airlines41
    9PSA Airlines41
    Others76-69
    TUI Group2-22
    Jet20-8
    SunExpress0-7
    TOTAL204-94

    出典: Cirium Fleets Analyzer

    ルフトハンザ・グループ、ターキッシュ・エアラインズ(子会社のアジェを通して)、エールフランス-KLMグループ、スカンジナビア航空などのフラッグ・キャリアがACMIプロバイダーのフリートについて、2025年1月にもその数をやや減らしつつ活用を継続している一方で、レジャーおよびツアー系の運航会社がそのようなフリートの使用を大幅に縮小または完全に廃止していることは注目に値します。最も顕著な例はトゥイ・グループです。2024年7月時点では22機の機材を運航していましたが、その大半を2025年1月までにACMIプロバイダーに返却しました。同様に、2024年7月時点ではACMIプロバイダーのフリートを組み込んでいたJet2とサンエクスプレス(それぞれ8機と7機)は、2025年1月までにACMIプロバイダーから調達したフリートの使用を完全に中止しました。これについては、レジャーおよびツアー系運航会社の繁忙期と閑散期の需要の変動が大きいことを考えれば理解できます。これに対し、インディゴは、プラット・アンド・ホイットニー製GTFエンジンの問題に起因する自社所有機およびリース機の継続的な運航停止を補うため、ACMIプロバイダーからのフリートを維持(実際には若干増加)しています。

    Operator RegionJul-2024Jan-2025Jan-2025 vs
    Jul-2024
    Europe1998744%
    Africa312374%
    Asia Pacific2632123%
    Latin America2435146%
    Middle East1320154%
    North America57140%
    TOTAL29820468%

    出典: Cirium Fleets Analyzer

    上記のグラフは、ヨーロッパが、ACMIプロバイダーからのフリートの利用の面でなお最大の市場であることを明確に示しています。興味深いのは、他の大陸に比べて航空部門が比較的小規模であるにもかかわらず、アフリカが第2位の市場になっていることです。アジア太平洋およびラテンアメリカ市場におけるACMI需要の大部分は、インディゴとビバエアロバスが牽引しています。このため、両社を除外すると、これらの2地域におけるACMIプロバイダーからのフリートの使用実績が大幅に減ることになります(トルコは、Cirium Fleet Analyzerでは「ヨーロッパ」に分類)。さらに、ヨーロッパの航空会社は、2025年1月にはACMIプロバイダーからのフリートの使用を大幅に減らしています。 一方、他の地域は全体的に増加していますが、アフリカだけは例外で、わずかに減少しています。これは、航空交通量の季節変動(南半球の国々を含む)や、インディゴのケースで見られたように、ACMIの使用を余儀なくさせる季節以外の課題など、複合的な要因によるものと考えられます。

    上述の通り、”伝統的な”航空会社が提供するウェットリースについては評価していないため、この評価が、市場におけるすべてのウェットリース需要の影響を完全に捕捉したものではないという点に留意することが重要です。しかしながら、その範囲内であっても、ACMIの活用に関する航空会社の要件や運航戦略には、明確な違いが見られます。

  • APACにおける2024年の飛行機利用を分析する――明るい兆しと残された課題

    Pang Yee Huat
    Pang Yee Huat

    Pang Yee Huat, Solutions Consultant, Cirium

    2024年はアジア太平洋地域における飛行機利用の面で特筆すべき年となり、とりわけ国際路線の著しい成長が見られました。今年はどの市場がトップパフォーマーになるでしょうか?

    APACにおける国別国際線旅客輸送量の上位10路線

    APAC’s Top 10 International Country Routes by Passenger Traffic Jan – Aug 2024

    ソース:Cirium FM Traffic, data filed Nov 4, 2024

    2024年の最初の8ヵ月間、日本は最も混雑する目的地の一つであり続け、韓国、中国、台湾を結ぶ路線が旅客輸送量のトップ3にランクインしました。日本と韓国、台湾を結ぶ路線の旅客数が2桁台の力強い伸び率を示した一方で、中国と日本を結ぶ路線の旅客数は25%減という顕著な下落率となりました。この減少ぶりは、座席キャパシティの21%減という数字にも表れています。全体として、中国発着の国際線座席キャパシティは、新型コロナウイルスのパンデミック前の2019年の水準から28%減と回復が遅れ続けています。中国に接続するすべての主要路線で減少が見られ、旅客輸送に関する課題を引き続き提起しています。 2024年の最初の8ヵ月間、日本は最も混雑する目的地の一つであり続け、韓国、中国、台湾を結ぶ路線が旅客輸送量のトップ3にランクインしました。日本と韓国、台湾を結ぶ路線の旅客数が2桁台の力強い伸び率を示した一方で、中国と日本を結ぶ路線の旅客数は25%減という顕著な下落率となりました。この減少ぶりは、座席キャパシティの21%減という数字にも表れています。全体として、中国発着の国際線座席キャパシティは、新型コロナウイルスのパンデミック前の2019年の水準から28%減と回復が遅れ続けています。中国に接続するすべての主要路線で減少が見られ、旅客輸送に関する課題を引き続き提起しています。

    日本は依然として最も混雑する目的地の一つだったのですが、中国の国際線座席キャパシティはパンデミック前の2019年の水準から28%減っており、回復が遅れ続けています。

    一方、ベトナム―韓国線は順調な成長ぶりを示しています。その旅客輸送量は15%増加し、2024年1月から8月にかけての座席キャパシティは2019年同期比で11%増加しました。この8ヵ月間には、ニャチャン―清州、ダラット―釜山、フーコック島―清州、フーコック島―釜山、カントー―ソウルの5路線が新たに開設されました。この市場ではベトジェットエア(VietJet Air)が圧倒的な存在感を示しており、総座席数390万席のうち110万席を同社が提供しています。これに続くのは、大韓航空の57万8,000席、次いでベトナム航空の50万席です。

    同様の成長ぶりが見られたもう一つの市場はインド―アラブ首長国連邦線で、2019年から2024年にかけて旅客輸送量と座席キャパシティがともに15%増加しました。この成長の原動力となった要素は、インディゴ(6E)とエア・インディア・エクスプレス(IX)がそれぞれ55%増と21%増の座席キャパシティを投入したことと、エア・アラビア・アブダビ(3L)の新規参入の結果、アラブ首長国連邦(UAE)発インド行き路線に40万7,000席がさらに加わったことです。

    APACにおける国別国際線座席キャパシティの上位10路線

    APAC’s Top 10 International Country Routes by Seat Capacity Q1 (Jan – Mar) 2025

    ソース:Cirium SRS Analyser, data filed Nov 4, 2024

    2025年第1四半期のアジア太平洋路線における予定座席数の上位10路線を分析すると、ほとんどの主要市場がパンデミック以前の水準を突破し、現在は成長段階にあることが明らかになります。注目されるのは、韓国―ベトナム線やインド―アラブ首長国連邦線といった路線が力強い上昇傾向を維持していることです。この2路線の座席キャパシティはそれぞれ27%と20%、増加しています。

    しかし、中国はこの上昇傾向の例外になっています。タイ、韓国、香港への主要国際路線は2019年の水準をなお大幅に下回っており、タイへの輸送量は依然として22%減の状況です。回復の可能性はあると思われますが、今後も市場の需要や国家政策の変更、さらに広範な経済条件を含め、さまざまな要因によって実績は大きく左右されるでしょう。とはいえ、適切な条件が整ってくれば、緩やかな回復が見えてくる可能性があります。

    中国発の主要国際路線は2019年の水準を大幅に下回っています。回復は市場の需要、政策変更、より広範な経済状況などの点で適切な条件が整うかどうかにかかっています。

  • データの活用:CiriumのEmeraldSky Analyticsでフライトの排出傾向を解明する

    フライトに起因する排出ガスが環境に与える影響を理解することは、航空業界のステークホルダーにとって極めて重要です。最先端のフライト排出量分析プラットフォームであるEmeraldSkyの最新データは、現在のフライト排出トレンドにまつわる包括的概要を提供します。注目すべきは、イギリス国内市場の1フライトあたりの排出量が過去5年間で18%増加していることです。同様に、イギリス―日本線のフライトは、主にロシア空域の閉鎖に伴う飛行時間の延長により、1フライトあたりの排出量が21%増加しました。

    こうした統計は、現在の業界慣行に影響を与える要因が複雑に絡み合っていることを浮き彫りにしています。ロシア空域の閉鎖により、多数の航空会社がより長距離の路線を選択せざるを得なくなり、結果として燃料消費量、ひいては排出量にも影響を及ぼすようになっています。しかしながら、この課題は、効率性の低い旧型機材の退役を含めた技術の進歩によって解決されつつあります。特に英米間の大西洋横断路線における次世代ジェット機への移行により、2024年夏には1フライトあたりの排出量が新型コロナウイルスのパンデミック前と比較して7%減少しており、定期便の数の全体的な増加にもかかわらず、CO2総排出量も減少したのです。

    特に英米間の大西洋横断路線における次世代ジェット機への移行により、2024年夏には1フライトあたりの排出量が新型コロナウイルスのパンデミック前と比較して7%減少しており、定期便の数の全体的な増加にもかかわらず、CO2総排出量も減少したのです。

    航空業界内の専門家の意見をみても、これらの結果が裏付けられています。Ciriumの市場開発担当シニアディレクターであるAndrew Doyleは、排出量を軽減するために革新的な技術を統合することの重要性を訴えています。

    Andrew Doyle
    Andrew Doyle

    航空業界は今後、変革の時を迎えます。航空機の効率性を高め、代替燃料を追求するためには、研究開発への継続的な投資が不可欠となります。ステークホルダーは、これらの洞察的知見を活用して事業戦略に磨きをかけつつ、地球環境の目標に沿った持続可能な慣行に焦点を当てることが求められるのです。

    航空業界が進歩を遂げる中、そのようなトレンドを理解することこそが、企業、旅行者の双方にとって重要になります。情報収集力と適応力を維持することで、企業は複雑なフライト排出量の問題に対処し、事業の成長と環境に対する責任のバランスを確保することができるのです。


    EmeraldSky logo representing aircraft and flight emissions

    本稿で使用したEmeraldSkyのデータの概要については、Emissions Calculations Overview (排出量計算の概要)をダウンロードしてください。

    その方法論についてより深く知りたい方は、Cirium.com/EmeraldSkyをご覧いただくか、またはこちら から当社専門家との面談をぜひご予約ください。

  • 航空路線の再編――グレーターベイエリアに注目する

    Aircraft Appraiser of the Year
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    Lionel Olonga
    Lionel Olonga

    Lionel Olonga, Senior Valuations Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    香港空港管理局は、周辺地域の競争力を高めることを目的として、航空会社に対し新規路線の開設と増便を奨励する施策を戦略的に導入しています。しかしながら、この手法は前向きな動きではあるものの、現地の人手不足と地域内の連携強化という広範な課題に対処するには不十分であることを証明するかもしれません。これらの問題をさらに深刻にしているのが、ロシア空域の使用制限による不公平な競争を理由に、一部の外国航空会社が中国発の運航を取りやめたことです。香港、マカオ、広東省を含むグレーターベイエリア(GBA=大湾区)の空港にまつわるこうした不利な状況は、この地域の当面の見通しに疑問を投げかけるものとなっています。

    さまざまな改善努力にもかかわらず、香港国際空港(HKG)のキャパシティは、新型コロナウイルスのパンデミック発生前の水準を下回る状態が続いています。Ciriumのデータによると、2024年第2四半期の香港出発便の座席キャパシティは、2019年同期と比べて29%減少しています。HKGは全地域向けにおいて大幅な減便に見舞われており、特にアフリカ、ヨーロッパ、オーストラレーシアへの路線の減便が最も顕著となっています。こうした苦境は、政情不安、経済的圧力、近隣空港との競争激化など、さまざまな要因に起因すると考えられます。それでも、最大の障害はやはり慢性的な人材不足です。

    輸送キャパシティが完全に回復する時期の予測を下方修正し、従来の2024年末ではなく2025年第1四半期の回復を目指すとしています。この遅れはパイロットと客室乗務員の不足に起因するものです。加えて、地上ハンドリングサービスの提供業者も人員不足に悩まされており、そのために外国航空会社のフライトのハンドリングを断ったり、過度に高いサービス料を課したりしているのです。このような労働力不足は香港の接続性を著しく阻害し、世界の航空関連産業における香港の全体的な回復をも妨げています。結果として、航空券の価格は高止まりし、旅行者が利用できる発着路線の選択肢も限られることが予想されています。

    GBAの主要空港の出発便座席数

    The departing seat capacity of major GBA airports

    Source: Cirium Core

    主要2空港である広州白雲国際空港(CAN)と深圳宝安国際空港(SZX)の座席キャパシティは、国内市場の力強い回復により、パンデミック以前の水準を上回りました。CANの全体的な便数および座席数は増加しており、特にアジア市場向けの伸びが顕著となっています。しかし、北米とオーストラレーシアへのフライトは著しく減少しています。有効座席キロ(ASK)の推移を見ると、CAN発着の大陸間輸送の回復がまだ遅れていることが示されています。SZXは、国際ハブ空港としての重要性が増していることを反映し、アジア、ヨーロッパ、中東線を中心にフライトが大きく伸びています。しかし、オーストラレーシア、北米各線のフライトは急減しました。

    GBA主要空港の有効座席キロ(ASK)ベースの座席キャパシティ

    GBA主要空港発フライトの地域別キャパシティ

    Flight capacity by region from major GBA airports

    Source: Cirium Core

    香港はグレーターベイエリア(GBA)内での競争激化に直面しています。国際航空会社が他の地域ハブ空港への直行路線を選択する傾向が強まっているため、トラフィック(輸送量)が香港から流出している可能性があります。この課題に香港が対処するためには、航空会社に運航を維持してもらうべく、財政面で魅力的な環境を用意することが不可欠です。この戦略において鍵となる要素は、パイロット、客室乗務員、地上ハンドリング担当者を含めた現在進行中の人員不足に対処することです。香港政府が航空セクターのために導入した労働力輸入スキーム(Labour Importation Scheme)は、こうした人的資源の目先の制約を緩和し、地域における香港の競争力を支えるものと期待されています。CANとSZXはともに2019年第2四半期から2024年第2四半期にかけて成長したことを示しており、CANは6.85%、SZXは18.39%という大幅な輸送キャパシティの増加をそれぞれ記録しています。これは、両空港が地域の主要ハブ空港としての地位を高めていることを示唆しています。深圳の急成長は、香港から市場シェアを奪う可能性のある戦略的転換を示しているのかもしれません。とはいえ、両空港とも、地政学的緊張の影響を反映して、北米へのフライトは減少しています。全体としてみれば、これらGBAの2空港の拡大ぶりは、グローバルな力学の変化によってもたらされる課題に直面しながらも、両空港が地域における重要性を高めていることを裏付けています。

  • “静かな”ファーンボロー航空ショーでツインアイル機が際立ちを見せる

    Aircraft Appraiser of the Year
    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。
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    Max Kingsley-Jones, Head of Advisory, Cirium Ascend Consultancy

    7月下旬に開かれたファーンボロー航空ショーでは、計260件の新規受注と発注コミットメントが発表されました。 ショーでの発表数としては近年で最も少ない規模だったのですが、Cirium Ascendでは、すべての新規取引の合計額は260億ドル(フルライフ価値ベース)に近いと推定しています。

    ショーで発表された取引の大半は”ビッグ2″メーカーに対するもので、その数は245機に上ります。残りの15機は、リージョナル・ターボプロップ機(ATRとデ・ハビランド・エアクラフト)でした。メインライン向け航空機の発注および発注コミットメントの3分の2(164機)は、エアバスの帳簿に計上されていました。

    Ciriumのフリートデータによると、今回のファーンボロー航空ショーでは、ワイドボディ機関連の発表が比較的多くなりました。総受注・コミットメント数はツインアイル機(貨物機を含む)がシングルアイル機を少し上回り、その内訳は126対119となっています。ツインアイル機の発注・コミットメントの総額は188億ドルです。これに対してシングルアイル機は70億ドルでした。

    ファーンボロー航空ショーにおけるエアバス、ボーイングの航空機カテゴリーおよび金額別の発表内容

    bar chart: Farnborough Airbus/Boeing announcements by aircraft category & value

    Source: Cirium Fleets Analyzer, *Includes factory freighter. Data includes firm orders and commitments to order

    今年、ツインアイル機市場が重視されているのは、シングルアイル機の生産ライン全体にはびこる過度に長いリードタイムを考えれば当然のことです。航空関連業界ではコロナ禍後、ツインアイル機の受注がやや少なくなっていたのですが、現在では10年後にかけて受注残の数が伸び始めています。

    エアバスとボーイングは、合わせて91件の新規確定受注と154件の受注コミットメントを発表しました。

    ボーイングは、ツインアイル機と貨物専用機(フレイター)の発表比率が比較的高いため、金額ベースではライバルのエアバスに肉薄しています(シェア44%)。

    ショーにおいて総機材ユニット数の点で最大規模の発表を行ったのは、サウジアラビアの格安航空会社フライナスです。同社は、A320neoファミリーの75機とA330-900の15機、合計90機の購入を発表しました。いつも多くみられる中東系航空会社の発表は、今回は顕著に少なくなりましたが、カタール航空は3月に777-9を20機発注していたことを明らかにしました。 ほかの中東系からの発表は、エミレーツ航空のみでした。同社は777F(新造フレイター)を新規に5機、確定発注しています。

    それでも、アジア太平洋地域の機材オペレーターがそれを補いました。4社合わせて106機の航空機の発注を発表し、ショーにおける取引ユニット数の43%を占めました。この地域のユニット数の中には、JAL(A321neo・11機、A350・20機、787・10機)、大韓航空(777-9・20機、787・20機)、ベトジェットエア(A330-900・20機)、ドルック・エア(A320neoファミリー・5機)が含まれています。

    ファーンボロー航空ショーにおけるエアバス、ボーイングの地域および航空機カテゴリー別の発表内容

    bar chart-Farnborough Airbus/Boeing  category17

    Source: Cirium Fleets Analyzer, *Includes factory freighter. Data includes firm orders and commitments to order

    世界の他地域の航空会社からの取引発表は、あまり目立ちませんでした。ヨーロッパからの発表は2件のみで、うち1件はヴァージン・アトランティック航空のA330-900・7機、もう1件はルクスエアの737-10 Max・2機となっています。アメリカの取引は1件のみでした。マイアミを拠点とするナショナル・エアラインズが、777F・4機の発注コミットメントを発表しています。ゴル航空とアビアンカ航空の親会社であるアブラ・グループは、ラテンアメリカ地域で唯一、A350・5機の発注コミットメントを発表しました。アフリカでは、リビアのベルニク・エアウェイズ(Berniq Airways)が、6機のA320neoファミリーを発注しました。

    今年のショーでは、伝統的に多いリース会社からの発表はあまりありませんでした。マッコーリー・エアファイナンス(Macquarie AirFinance)のみが発注(737-8Max・20機)を発表しています。

    エンブラエルは、ショーでの商業的な受注の発表こそありませんでしたが、E-Jet E1コンバージョン貨物機、E2旅客機バリアント、C-390エアーリフターを展示し、目を引きました。C-390エアーリフターについては、オランダとオーストリアから受注があったとしています。ブラジル系OEMの商業部門のCEOであるArjan Meijer氏はショーの中で、正式発表はしていないものの、少なくとも300機の航空機に関する様々な取引について現在交渉中であると述べました。

  • Ascend Consultancyによる今後の展望:A330neoが中国にやってくる?―適合性の分析 

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Yuanfei Zhao (Scott) Aviation Analyst
    Yuanfei Zhao (Scott) Aviation Analyst

    Yuanfei Zhao (Scott), Senior Aviation Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    最近の市場動向をみると、人気の高いツインアイルタイプのA330ceoの後継機であるA330neoが、中国に導入される可能性が出てきています。ブルームバーグが6月に発表したリリースによると、エアバスと中国の航空会社の間で、100機以上のA330neoの売却に向けた話し合いが進められています。エアバスはこの協議についてまだ正式に認めていませんが、市場関係者はさらなる進展を待っているところです。

    この機種が中国市場に導入される可能性に今、関心が集まっているのです。コストと性能の観点から言えば、A330ファミリーは主に短・中距離の高密度路線向けに設計されており、A350のような類似タイプの機種と比べて競争力のある価格設定となっています。Ciriumのデータでもこうした特性が示されています。トレント(Trent)のエンジンを搭載したA330-900neo(2024年1月製造、追加の仕様なし)のフルライフの推定市場価値は約1億700万ドルです。これに対し、A350-900は同様の条件で1億5800万ドルとなっています。

    この価格戦略により、A330neoは長距離路線で運航できるにもかかわらず、特定の市場セグメント内において、単価、運航経費、性能バランスの点で有利に位置づけられています。

    このような特徴は、A350や787、777のような長距離路線を最大のターゲットとする他の主要ツインアイル機とは明らかに異なります。

    下のグラフは前述の航空機について、2015年以降、中国系航空会社による中国発全便の運航機種ごとの平均ブロックレンジ(航空機が動き出してから停止するまでの距離)を示しており、国内線と国際線の両方を網羅しています。

    中国系航空会社のA330ceoフリートの平均ブロックレンジは2,250kmである一方、A350は2,530km、787は2,920km、777は3,780kmとなっています。

    このことは、A330ceoフリートが中国の他の主要ツインアイル機と比べて平均的に短い路線で運航されているというだけではなく、中国の航空会社が運航する他の長距離路線向け機種の平均ブロックレンジも、ceoフリートと比較してそれほど長くないことを裏付けています。

    2015年から2023年にかけて中国の航空会社が運航したフライトを分析したところ、5,000kmを超えるフライトはわずか14%であることが判明しました。このような状況を踏まえると、中国の航空会社にとっては、大半の短・中距離路線でA330をより多く利用することが、経済的には賢明であるように見えます。

    フリート計画の視点から見ると、中国で稼働中および駐機・保管中の212機のA330ceoのうち、33機(全フリートの15%)の機齢が現在15年以上となっています。

    これらの機材は、10年後までにフリート計画に基づく決断を迫られる可能性が高くなっています。加えて、当該A330ceoフリートの約22%は、中国国外で登録された中国系ファンドの支援を受けるリース会社を含む外国リース会社との間でオペレーティングリース契約を結んでいます。

    リース満了時のリース機材の運命は、不確実性に大きく左右されます。リース会社は、リースを延長するか、より有利な市場に機材資産を移転させるか、より良い価値を引き出すために機材を退役させてパーツアウトするか、あるいは市場の実勢に基づいて旅客機から貨物機に転換(コンバート)するかについて、柔軟に決定できるからです。

    要約すると、A330ファミリーの機材のコストと性能の特性は中国市場に合致しており、資産単価、運航コスト(座席数ベース)、機種・ルート適合性のバランスの取れた組み合わせを提供しています。中国系航空会社が長期的にA330フリートを維持または拡大するつもりであれば、新世代のneoを想定した計画立案に着手することが望まれます。しかし、その際の主な考慮事項としては、機材納入枠の不足とOEMの生産率の制約が挙げられます。この制約があるため、10年後までにA350や787といった機材の納入枠を確保することが事実上不可能になってしまっているのです。A330neoのオーダーブックが比較的少ないことから、この10年間に納入できる枠はなお一定程度、確保できる可能性はありますが、その数は多くないとみられます。

    その結果、新型A330neoがリプレースまたは納入増を通して中国系航空会社の大規模なフリートとして定着するのは、受発注契約が速やかに確定、成立したとしても、10年後以降になるかもしれません。

  • 燃料不足に見舞われる日本の空港―インバウンドの急増が問題なのか?

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Joanna Lu
    Joanna Lu

    Joanna Lu, Head of Consultancy Asia, Cirium Ascend Consultancy

    日本は豊かな文化遺産、技術革新、さらに風光明媚な自然の美しさで称賛され、世界の観光客を魅了する重要な国であり続けてきました。最近、日本の地方空港や成田のような主要空港で、インバウンド旅行の増加を背景にした燃料供給の危機的な問題が報告されています。しかしながら、よくよく考えてみると、こうした課題は、渡航者数の増加だけに起因するというよりも、日本の高齢化および厳格な移民政策によって悪化したサプライチェーンの混乱や労働力不足に起因するものであることが分かります。

    日本政府観光局(JNTO)は、韓国、台湾およびその他のアジア諸国からの観光客が大幅に増加していると報告しています。しかし、中国から日本へのアウトバウンド観光の回復が遅れているため、進化する旅行パターンを検証しつつ、日本にとっての現在の最大インバウンド市場を特定することが不可欠です。今回の分析では、日本の海外旅行の状況、特に今後2ヵ月間に予定されている主要路線の座席キャパシティに焦点を当てて、それらの傾向を新型コロナウイルスのパンデミック前の水準と比較します。

    私たちはCiriumのスケジュールデータを活用し、パンデミック後の航空会社のキャパシティ力学の変化を観察しています。中国市場は日本にとって依然として大きく落ち込んでおり、今年第3四半期の座席数は2019年同期比で6%減少しました。それでも、韓国は日本にとって最大の国際線の目的地市場となり、座席数が2019年第3四半期と比較して10%増加しました。

    加えて、日本はオーストラリアとベトナムに新たな市場機会を見出しており、2024年第3四半期には、2019年同期の水準に対してそれぞれ29%と9%の増加を予測しています。

    都市レベルで検証すると、路線によって大きな違いがあり、需要のパターンが変化していることが分かります。

    主要市場が力強く回復

    7月と8月にソウル行きの出発便座席数が20%近く増加したことは、日韓間の文化的結びつきとビジネス関係の拡大による力強い回復ぶりを裏付けています。外交努力の強化や渡航制限の緩和も、この座席数急増に寄与しています。韓国と日本の間の旅行は現在、両国が短期訪問のためのビザなし渡航を再開したこともあって、かなり容易になりました。韓国国民と日本国民は、観光または商用目的の90日以内の滞在であれば、ビザなしで両国を往来できるようになっています。

    ビジネスと観光の中心地における復元力

    台北便の座席数は7月に8%、8月に4%、それぞれ増加しました。これは、国際会議や各種展示会の再開や、日本と台湾のハイテク産業の強固な連携に後押しされ、ビジネスと観光の旅行が復活したことを示しています。上海便の座席数は、7、8月ともに2%の増加となっています。バンコク便の座席数は、7月はなお27%の減少となりましたが、8月には増加し、パンデミック前の水準に達しました。シンガポール便の座席数は7、8月ともに4%増加しています。航空路線における日本との強い接続性と、両国の戦略的なビジネス関係に支えられて地域間旅行が促されており、そこにシンガポールの回復力が映し出されています。シンガポールは、パンデミックの問題に効率よく対処したことで、日本発着の旅行者の玄関口としての魅力が増しました。香港市場は完全には回復していません。主にキャセイパシフィック航空の機材供給不足によるもので、香港便の座席数は約14%減少しています。

    伝統的なアウトバウンド市場が抱える課題

    その一方、釜山、マニラ、ホノルルといった伝統的なアウトバウンド市場は、日本からのアウトバウンド旅行の減少により、出発便座席数が2019年の水準と比較して減少しています。釜山は接続性が拡大したソウルとの競争の中で需要減に直面し、マニラとホノルルは経済の不確実性を背景に観光客の消費力の減退に見舞われています。

    燃料供給の不足の問題については、需要サイドの要因よりもむしろ供給サイドの制約によるものとみられます。

    今年第3四半期の日本発の全体的な国際線座席キャパシティはなお2019年の水準と比べて約7%下回っており、国内線座席キャパシティも2%減少しています。

    2024年第3四半期の日本発(国際線・国内線)の総座席数は、昨年同期比では6%増えており、現在の座席不足をインバウンド需要の急増によるものとする根拠としては不十分です。

    原油精製から生まれるジェット燃料は現在、生産量が減少しています。日本における省エネルギー対策や脱炭素化の取り組みの中で、ガソリンやその他の石油製品の需要が減少しているためです。日本の石油卸売会社は統合を進め、製油所の数を減らしており、1983年には49あった稼働製油所が、2024年6月現在では20しかありません。その結果、燃料は空港に届けるのにさらに遠くまで移動させなければならず、海運業者と陸運業者の双方に影響を及ぼす労働力不足が、この問題に拍車をかけています。さらに、日本最大の製油所であるENEOS鹿島製油所の技術的問題が、状況を悪化させているのです。

    燃料不足はすでに日本中の空港、特に地方空港で障害を引き起こしています。Ciriumの空港別のスケジュールデータを見ると、地方空港によって便数の伸び方に大きなばらつきがあることが分かり、特定の場所での問題の深刻度を示しています。Cirium Ascend Consultancyは今後もこの状況を注視していきますが、危機の主な要因は、日本への旅行が急速に回復していることではないと考えています。

    日本の旅行業界はいま、回復、復元力、そして課題への対応という複雑な局面に立たされています。これらの問題に対処するためには、進化する旅行力学とサプライチェーンの制約に直面しながらも、持続可能な成長と安定を確保するための戦略的計画と、さまざまな部門間の協力が必要となります。

  • ネットゼロへの道:増え続ける商用航空界のCO2排出量(パート3)

    Andrew Doyle
    Andrew Doyle

    Andrew Doyle, Senior Director – Market Development, Cirium

    注:これは3部構成の第2部です。第1部第2部をお読みください。


    2024年4月に世界で稼働したエアバスとボーイングの旅客機タイプのフリートを見てみると、前回の排出量ピークだった2019年7月と比較して、最新世代のボーイング737Maxが(2020年後半に世界的な運航停止命令が解除されて以降)1,500機近く導入された一方、エアバスのA320neoとA321neoが計1,800機近く追加されていることが最も注目されます。この間、旧世代のA320ceoの稼働フリートが500機以上減少し、450機以上の737-800が稼働フリートから排除されました。

    ワイドボディ機については、老朽化した旅客仕様の747-400の稼働フリートが130機から20機のみとなり、レガシー機の767-300のフリートは190機近く減少しました。A380の稼働フリートは233機から160機に減少し、A330-300の稼働フリートも110機以上減っています。これらの機材は、計400機弱の最新世代のA350とA330neoの追加機材、さらに270機以上の787に置き換えられ、補充されています。エアバスとボーイングの旅客ジェット機の稼働フリートの合計はこの5年間で1,000機以上増加し、約21,000機になりました。これは排出量の点からみて、最新世代のエンジン技術の普及が進んだことによる1フライトあたりの効率性向上の相殺分を上回る増加規模です。

    ここに私たちの見解を示します。

    商用航空業界はいま岐路に立たされており、増大する旅行需要に応えつつ、環境への影響を大幅に削減するという二重の課題に直面しています。その克服のためには、航空会社、航空機メーカー、各国政府、ステークホルダーが一丸となって、持続可能な技術と燃料に投資する必要があります。

    事態の緊急性に対応し、技術革新を受け入れ、野心的な炭素削減目標の達成に向け尽力することは、健全な地球を保ったまま航空業界の未来を切り拓いていくために不可欠なステップです。

    持続可能性の道のりは平坦ではありません。

    しかし、積極的な対策と協力的な取り組みによって、航空業界はこの重大な課題に立ち向かうことができるのです。

    航空機とフライトの排出量に関する正確な知見であるEmerald Sky Aircraft and Flight Emissionsをぜひご活用ください。

  • Ascend Consultancyによる今後の展望:長距離ビジネスジェット市場の寸評

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Youcef Berour Minarro
    Youcef Berour Minarro

    Youcef Berour Minarro, Principal Valuations Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    ガルフストリーム(Gulfstream)の新型機G700は、1年以上の納入遅延と数ヵ月の不確実な時期を経て、2024年3月29日に米連邦航空局(FAA)の型式証明を取得しました。これにより、長距離ビジネスジェットに分類される同機は、顧客への引き渡しに向けて大きな一歩を踏み出しました。これは、ガルフストリームの親会社であるジェネラル・ダイナミクス(General Dynamics)にとっても、収益回復をもたらすマイルストーンとなります。ジェネラル・ダイナミクスは、ボーイング737Maxの事故後、FAAの認証プロセスが長引いたために納入遅延に直面し、結果として2023年の収益において10億ドル、利益において2億5,000万ドルの損失をそれぞれ計上したと主張しています。

    ファルコン10Xが納入されればダッソー(Dassault)の最大かつ最長航続距離の航空機となり、ボンバルディア(Bombardier)のグローバル7500やガルフストリームG700と直接競合することになります。

    ガルフストリームは形式証明取得に加えて、G700の性能向上、すなわち当初計画よりも短くなった同機種の離着陸距離についても発表しました。G700のこの前向きな展開は、長距離ビジネスジェット機市場全体が現在どのような状況にあり、2024年に何を期待すべきかについて考える良いきっかけになると思われます。

    OEMのその他の進展について

    2023年にFAA欧州航空安全機関(EASA)の認証を取得したダッソーのファルコン6Xは現在、納入が進められています。現在2機が就航しており、今年中に増産が始まる見込みです。Cirium独自の新規納入予測によると、今年中に15機ほどの引き渡しが行われ、その後2025年にかけて納入が増加するとみられます。ダッソーが開発中のファルコン10XのEIS(稼働開始)は、当初は2025年を予定していましたが、サプライチェーンの問題を理由に2年遅れの2027年に延びました。ファルコン10Xが納入されればダッソー(Dassault)の最大かつ最長航続距離の航空機となり、ボンバルディア(Bombardier)のグローバル7500やガルフストリームG700と直接競合することになります。

    ボンバルディアのグローバル8000は、グローバル7500(現在165機以上が稼働中)の航続距離延長型バリアント(異形機種)として2022年に再びローンチ(開発立ち上げ)され、現在もなお開発中となっています。この8000は、最大マッハ0.925の速度まで認証された航続距離7,700nmの7500の後継機となるもので、機体と全長も同じになっています。その性能の向上は、GE Passportエンジンのソフトウェア更新と空虚重量の最適化によってもたらされ、既存のタンクにもっと多くの燃料を搭載できるようになります。ボンバルディアは、改修指示書(Service Bulletin=SB)を通じて7500の所有者に改修オプションを提示する予定です。Global 8000は2025年に就航する予定です。

    現在稼働中のビジネスジェット機フリートは23,000機を超えており、そのうち長距離向け区分の機材が4,000機近くを占めています。

    フリート規模

    現在稼働中のビジネスジェット機フリートは全体で23,000機を超えており、そのうち長距離向け区分の機材が4,000機弱(17%)を占めています。このセグメント(区分)の航空機は通常、航続距離が5,000海里を超え、さまざまなOEMの主力製品となっています。このセグメントにおけるOEMの裾野は、他のビジネスジェット機セグメントに比べてはるかに狭くなっています。長距離機材市場は現在、ガルフストリーム(49%)、ボンバルディア・グローバル(Bombardier Global)のファミリー(28%)、ダッソー(24%)が独占している状態です。このセグメントで最も人気のある機種はガルフストリームG550で、現在は570機が稼働しています。これに僅差でトライジェット(三発ジェット)のファルコン900ファミリーが続き、現在529機が稼働中です。

    ソース:Cirium Fleets Analyzer, In-service, April 2024

    在庫機材と流動性

    2023年の12ヵ月間に公開された利用可能機材状況に基づく当社の分析によると、同年の長距離ビジネスジェット機の総在庫水準は、2022年と比較して大幅に増加しています。2023年初頭の時点では、一般に販売可能な長距離ビジネスジェット機の数は、このフリート全体の4%強にあたる約160機となっていました。この数字が2023年末までには、230機以上にまで増加していたのです(50%増)。ビジネスジェット機全体でも同様の傾向が見られ、同じ12ヵ月間で在庫レベルが最も増加したのはミッドサイズ機(中型機)のセグメントでした。

    2024年4月現在、販売中の長距離ビジネスジェット機は230機で、これは販売中のビジネスジェット機フリート全体の6%に相当します。

    流動性の点についてCirium Fleets Analyzerのデータをみると、2023年に取引されたフリート総数は前年比約20%減となっています。2024年はこれまでのところ、中古機販売については相対的に伸びが鈍化し、機材の市場滞留日数が伸びていることから、市況が減退している可能性があります。

    ソース:Cirium Fleets Analyzer and Publicly Sourced Inventory

    2024年の長距離カテゴリー機の価値はどうなっているのか?

    今年に入ってからも、機材が市場に長く滞留する中、在庫水準が依然として増加を続けており、流動性は低下傾向にあります。機材についての当社の価値評価に関連して、航空機取引業者と話し合ってみると、機材価格には全般的に下落傾向が見られるようです。今年に入ってからの4ヵ月間で、既に機材の価値は若干軟化していると私たちは評価しています。私たちはこのサイズのカテゴリーだけでもガルフストリームG450、G550、V、G650/G650ERの各タイプについて評価を実施し、結果として、市場価値の評価(オピニオン)については2%から最大11%までの減少を観察しました。ただし、特にG450については、チャーター便の運航数が減少して以来、市場が大幅に減速しているため、顕著に20%も減少しています。一方でG650ERの低機齢の機材は、価値を安定して維持しています。ボンバルディアのグローバル7500は、当社による価値オピニオンが2~6%上昇しました。2024年を通して同じような傾向が続いても、驚くことはないはずです。私たちは折に触れ、市場に対して分析を報告するつもりです。

  • COMACはエアバス、ボーイングの2社独占に本当に挑戦できるのか?

    COMACはエアバス、ボーイングの2社独占に本当に挑戦できるのか?


    市場機会の見通し

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Rob Morris, Ascend by Cirium

    筆者:Rob Morris, Global head of consultancy, Cirium Ascend Consultancy

    今年1月に発生した737-9 Maxの不幸な事故により、ボーイング737の生産体制が引き続き苦境に陥っています。このため私たちは、シングルアイル機の供給がボーイングの納入遅延により不安視されるなか、中国商用飛機(COMAC)が生産を拡充してその需要を満たしていく可能性について何度も質問されてきました。エアバスもA320ファミリーの生産拡大に悪戦苦闘していることを考えれば、この疑問はさらに大きくなります。A320ファミリーの生産は、2019年には月平均で60機に近づいたものの、新型コロナウイルスのパンデミック期には40機未満に逆戻りしました。その後、現在は50機程度となり、2026年の計画目標である75機に向かおうとしているところです。5月初旬に香港で開催された航空機に関するイベント「ISTAT Asia」で、あるリース会社の幹部は「ボーイングとエアバスはCOMACにチャンスを与えた」と述べました。また、別の関係者は航空機メーカーの頭文字を使って「今日の“AB”は、10年後には“ABC”になる」と指摘しました。つまり、COMACに対してドアは開いているのですが、それをくぐり抜けていくことができるのかどうかが問題なのです。

    需要の観点から見れば、ビジネスチャンスは確かに存在します。

    2023年11月に公表された最新のCirium Fleet Forecastでは、今後20年間で計40,000機以上のシングルアイルおよびツインアイルの旅客ジェット機の納入需要が発生すると予測しています。

    エアバスとボーイングは2000年から2019年までの20年間に、計19,600機弱の商用旅客機を納入しました(納入機数には、ボーイングが1997年に買収したマクドネル・ダグラス社のレガシー航空機5機が含まれます。この買収により、2000年は、商用大型機市場が現在のような2社独占状態を築いた年となりました)。したがって、今の2強企業が2043年までに生産量を倍増させない限り、第3の企業の参入余地が確実に出てくるのです。

    それにしても、33,000機近くもの納入需要が予測されているコモディティのシングルアイル機分野において、COMACは現行機種のC919の生産拡大を果たし、そのチャンスを生かすことができるのでしょうか?受注状況には明るさが見えており、Ciriumの機材データベースには現在、既に引き渡された5機に加え、さらに998機が確定発注されていると記録されています。しかしながら、下のグラフが示す通り、この受注残は2040年いっぱいまでの納入が予定されており、競合するエアバスやボーイングのシングルアイル機よりもはるかに長い納入期間となっています。現在、受注残の46%のみが航空会社6社から発注コミットメント(発注の誓約)を得ており、全社の本拠地が中国となっています。残りの543機は12社のリース会社から発注されています。その発注元は、BOC Aviationを除いて本拠地が中国国内にある中国資本の会社です。これらの機材については、引き渡し先の顧客を見つける必要があります。新しい航空機プログラムがこれほど早い段階で、しかも数多くのリース会社から引き合いに出されるのは異例なことです。これはおそらく、航空各社がC919について、今のところどのように評価しているのかを示唆しています。ただし、最近の中国国際航空と中国南方航空からの100機ずつの発注は、多くのリース会社の発注よりもはるかに確固とした内容になっているようです。

    CiriumのFleet Forecastも楽観的な見方を示しており、2042年までのC919プログラムの機材納入数は現在1,700機弱と予測されています。これらの納入機の大半は国内顧客向けです。輸出顧客向けに販売されるのは、概ね政治的影響力によって販売キャンペーンを推進できる中国の「一帯一路」関連諸国向けの約250機にとどまると予想されます。今回の予測期間中、中国では6,000機以上のシングルアイル機の新規納入が見込まれており、C919の市場シェアはボーイングの30%、エアバスの45%に対し、約25%を獲得するとみられています。

    そのような楽観的な見方がある中で、シングルアイル機市場に参入しようと努力しているCOMACの現在の実績はどうなっているのでしょうか。また、その実績は、最も新しく市場に参入して成功した企業と比較してどうなのでしょうか。ここで言う企業とはもちろん、1980年代後半に市場に参入したエアバスのことです。エアバスは1988年3月、エールフランスに最初のA320を納入しました。COMACは2022年12月、中国東方航空にC919の初号機を引き渡しました。それから17ヵ月後の今、COMACは、その同じ単一の顧客に5機を納入したばかりです。エアバスは1988年のA320の初号機納入から17ヵ月間のうちに、ヨーロッパ、北米、アジアの9つの異なる航空会社に計49機を納入しました。35年以上前、とりわけ市場が現在よりもはるかに小さかった時代に、エアバスはその10倍の数の新型機を世界に向けて送り出しているのです。エアバスは当時、今のCOMACにはない重要な優位性を有していました。それは1960年代以降、フランスとイギリスにあるエアバスのパートナー企業が、シングルアイル旅客機であるカラベル、トライデント、ワン・イレブンを計630機以上製造し、世界の90弱の顧客に納入していたことです。このころのエアバスは、競合していたボーイングとマクドネル・ダグラスのシングルアイル機に対し、A320ファミリーを信用度の高い世界的な競合機として確立するのに必要な定時出発の信頼性と性能を顧客に提供するべく、独自の航空機サポートネットワークを活用できたのです。COMACはそのようなサポートネットワークを持たないため、これから顧客の航空会社向けのサポート体制を懸命に構築しなければなりません。航空各社は、定評あるエアバスやボーイングの機材を凌駕するような、性能と定時出発の信頼性をCOMAC機に期待するからです。

    既に納入された航空機の現在の実績は、どうなっているでしょうか?Ciriumのデータによると、中国東方航空の5機は今、上海虹橋から成都、北京、西安行きの国内3路線の定期便に使用されています。

    フライトト追跡データによると、同機は4月に計398便、1日平均では5.9時間、運航されたことが確認されています。

    この同じ月、中国で稼働しているボーイング737-8 MaxとA320neoの1日あたりの平均飛行時間は、それぞれ8.1時間と8.4時間でした。つまりC919は、今のところ明らかに抑制されたスケジュールで運航されています。運航サービス面での機材の能力を証明し始める段階に入る中、その稼働水準は、平均するとボーイングおよびエアバスの競合機の70%程度となっています。しかしながら、今年2月の時点では、C919は、737とA320の1日あたりの平均稼働時間の50%程度しか達成していなかったため、改善の兆しが既に見えていると言えます。また、路線の点でも改善の兆しがあります。報道によると、C919は2024年6月1日に、上海虹橋―香港線の単発の復路便で運航される予定です。この後、同路線がC919を使った定期便になるとの続報もありました。

    将来についてはどうでしょうか?既に触れた通り、Ciriumの受注残データでは、COMACが2031年に130機以上の機材を顧客に納入するとの見通しが示されています。COMAC自体、今後5年以内に年間の生産能力を最大150機に増強する意向を示しています。また、COMACは、A320にその小型、大型のバリアント(異形機種)であるA319とA321を追加したエアバスの戦略にやや似た形の航空機ファミリーを開発しているところです。現行のC919より胴体が短いバリアントである「プラトー(plateau)」バージョンについては、チベット航空がローンチカスタマーとして発注し、その製造・開発が今年2月に立ち上がっています。2029年までに年間150機の航空機を製造できるようにするという構想は、表面上は野心的に見えます。1998年に納入された168機のA320ファミリーは、同年にボーイングが324機、マクドネル・ダグラス(そのころにはボーイングが100%所有)も42機を納入した当時のシングルアイル機市場で30%以上のシェアを占めていました。それでも、エアバスは年間150機以上の納入を達成するのに10年以上を要したのです。Ciriumの予測では、2029年に世界で計約1,800機のシングルアイル機が納入されることになっているため、COMACの150機は市場全体の10%未満となります。

    COMACが大型商用機市場でエアバスやボーイングと肩を並べる可能性があることについては、疑いがありません。しかし、この分析によれば、COMACがその市場参入のドアをくぐるペースは、30年以上前にエアバスが同じドアをくぐった時よりも相対的に遅くなることが示唆されています。現在ボーイングは明らかに弱体化していますが、いずれは問題を解決し、ボーイング737ファミリーの生産についても、COMACが2029年に構想する生産機数の約4倍の水準にまで回復させることでしょう。同じ時間の尺度で、エアバスも、COMACが構想している約6倍の規模でA320ファミリーを生産することになりそうです。

    大型商用機市場への参入障壁は常に高く、ボンバルディアのシングルアイル旅客機であるCシリーズ(CSeries)が最終的に失敗に終わったように、多くの企業にとって乗り越えられない可能性が高い分野です。COMACは、そのような市場の最も新しい挑戦者です。COMACが享受しているのは巨大な国内市場です。おそらく新造シングルアイル機の総納入数の15%程度が中国向けになることでしょう。国内市場を活用して、売上を伸ばすことができるのです。しかし今のところ、その販売ペースは、1980年代に市場参入した当時のエアバスが達成したペースよりもはるかに遅いようです。したがって、今の「AB」が本当に「ABC」になるのは、かなり先のことになりそうです。

    Cirium Fleet Forecastの詳細についてはこちらをご覧ください。

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  • Ascend Consultancyによる今後の展望:足許の金利上昇がリース料に与えている影響について

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Toshimitsu Sogabe, Aviation Consultant, Cirium Ascend Consultancy

    FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年2022年3月より11回連続で利上げを行い、その後の5月1日には6会合連続で政策金利を据え置くことを発表した。

    金利とリース料についてはこれまで一定程度の相関関係が確認できるため、金利上昇はリース料の上昇にも寄与してきたものと考えられてきた。但し、リース料の上昇幅が十分であったかどうかについては議論の余地がある。

    The above chart shows that the market lease rates of Airbus A320neo and Boeing 737 Max jets have reached the $400,000-per-month mark

    ソース: Ascend Value Trends, Federal Reserve Economic Data (FRED)


    上図を確認する限り、A320NEOとB737MAXに関しては足許月40万ドルの大台に乗ったものと観測されている。特にA320NEOについては、デビュー年である2015年に月40万ドル超のリース料からスタートして以降下落傾向にあったが、2024年にようやく同水準まで回復したことになる。

    但し、同期間中の金利水準を確認してみると、足許の米10年債利回りよりも2015年のほうが遥かに低い水準で推移している。

    同様に、2007/2008年では新造機価格が数百万ドル単位で低かったであろう前世代のB737NGやA320CEOのリース料についても、当時40万ドル以上と高値圏で推移していたにも関わらず、同時期における米10年債利回りは足許の水準と同等以下で推移していた。

    リース料上昇幅は不十分か

    過去との対比で足許の資金調達コストが高くなっているにも関わらず、新造機のリース料が過去と同等以下の水準となっている背景として、過去と比較し(i) 航空機ファイナンス需要が過去対比で増加している一方、リース市場において次世代機の供給不足により十分なセール・アンド・リースバック取組機会がないことから、過当競争によりリース料が抑制されリターンが低くなっている、又は (ii) 各リース会社が取引時において、リース満了時の残価設定や重整備調整金及びメンテナンスリザーブの回収額を高めに設定している、或いは(iii)その両方が起きているものと推察される。

    上記(i)については、ボーイングとエアバスの直近の月間生産数を確認する限り、明らかに次世代機の供給不足となっている。ナローボディ機の月間初飛行機数を確認する限り、エアバスは2024年第1四半期で月平均46回、ボーイングは2024年の2月・3月に月平均12回であった。既に新造機の発注を行っている一部のリース会社では取組パイプラインを確保できているものの、全体として各リース会社は新造機の取組に苦慮している状況であり、トップライン確保のため中古機取組へ戦略シフトを検討するリース会社も出てきている。(ii)については、次世代機/前世代機ともに整備コストが上昇していること、次世代機の供給が追いついていないことから、リース満了時の残価及びリース満了時調整金の増加を期待した取組が一部で増えているものと考えられるが、供給不足が中長期なトレンドとなるかについては注意が必要である。

    将来のリース料の変動や各航空機リース会社の次世代機へのセール・アンド・リースバックの取組スタンス変更については、Cirium Ascend Consultancyとしても今後注視していきたい。

  • 誰が前進し、誰が後退するのか――航空機のグラウンドタイムに注目する

    Andrew Doyle
    Andrew Doyle

    Andrew Doyle, Senior Director – Market Development, Cirium

    CiriumのGround Events Analyticsの導入に伴い、これまで見えにくかった機体整備点検や客室改修の分野に対する独自の洞察が可能になりました。私はこの新しいツールを使って、中国のMRO市場、エミレーツ航空の大規模なエアバスA380の客室刷新キャンペーンの進捗状況、さらにボーイング787の納入の遅れが767のアップグレード需要に与える影響について調べました。

    宇宙ベースの追跡で中国の現状が明らかに

    中国における整備、修理、オーバーホール業務の競争状況については、包括的なフライト追跡データの入手が困難なため、これまでは把握が困難でした。しかし、Ciriumが宇宙ベースのADS-B(Automatic Dependent Surveillance – Broadcast=自動従属監視放送)のサービスプロバイダーであるAireonと提携したことにより、航空機の到着から出発までのグラウンドタイム(地上にいる時間)における位置と継続時間を初めて正確にモニタリングできるようになりました。この追跡情報を、市場をリードするCiriumの機材およびMRO契約データと組み合わせることで、当社の市場専門家とデータ科学者たちは、特定の機材がいつ、どこで定期整備を受けているかについて、高い信頼度をもって推測する高度なアルゴリズムを開発することができました。

    以下のツリーマップでは、Ground Events Analyticsを使用して実行できる分析タイプの例が示されています。これは、2024年2月までの12ヵ月間に記録された特定の機材タイプごとの地上日数の合計に基づき、中国のMROプロバイダーをランク付けしたものです。それぞれのケースで、ヘビーチェック(徹底した点検)を受けた機材の数と地上滞在時間の中央値を示すことが可能になっています。

    巨大な改修プログラム

    エミレーツ航空に目を向けると、この新ツールは、同社がアップグレードを予定している全67機のA380のうち少なくとも22機について、まったく新しいプレミアムエコノミー・キャビンの設置を含めた客室改修が完了したことを示しています。同社は2022年11月に業界最大級の改修プログラム計画を発表しており、8日ごとに1機の改修開始を目指し、各改修の完了までには約16日かかると述べています。つまり、今年5月末までに67機すべてのA380を改修し、運航に復帰させるということです。

    Ground Events Analyticsによれば、これまでにアップグレードが確認された22機のうち9機は、地上滞在中に「C」または「ヘビー」クラスの整備・点検も受けていることが分かっています。

    追跡された地上時間が最も短かった機材は、2023年5月中旬から客室の改修を受けた機体番号A6-EVFの23日間でした。これまでにアップグレードされた22機は、既に新キャビンが取り付けられた状態でエミレーツ航空に引き渡された最後の6機のA380フリートに加わることになります。

    ドリームライナー納入遅延でレガシー・ツインジェットが息を吹き返す

    最後に、2021年5月から2022年7月にかけてのB787(ドリームライナー)の納入停止が、ユナイテッド航空のレガシーフリートであるB767の客室アップグレード計画にどのような影響を与えるかを見てみました。私のグラフでは、ドリームライナーの引き渡しが遅れる中、旧型のツインジェット機の改修活動が著しく活発化していることが示されています。


    Ground Events Analyticsが将来の機材整備の監視と予測にどう役立つかについてもっと知りたい方は、Ground Eventsページ(英語)をぜひご覧ください。