お問い合わせ
お問い合わせ
Moscow Airport

Ascend Consultancy, 航空専門家の視点, 航空機投資

商用航空機市場のセンチメント指数:ロシアへのリース済みフリートを回収する

April 29, 2022

私たちはアンケートの対象者に対し、国際リース会社からロシア系航空会社にリースされていた機材のうち、どれだけの機数を今後6ヵ月以内に再度市場に出す必要があるのかを尋ねました。

Michael Graham, Ascend by Cirium

筆者:Michael Graham, Valuations manager at Ascend by Cirium

Ascend by Ciriumは2021年4月、商用航空機市場センチメント指数(CAMSI)を導入しました。この月次指標では、主要市場のステークホルダーへのアンケート調査を通して、市場センチメントと価値・リース料のトレンドを追跡します。ステークホルダーには、リース会社、銀行、OEM、パーツアウト事業者、航空会社、ブローカーが含まれます。

私たちはCAMSIにおいて、NPS指標の手法を使用しています。これは、「高過ぎる」または「上昇傾向にある」の回答数から「低過ぎる」または「下降傾向にある」の回答数を差し引き、それを当該の質問に対する総サンプル回答数で除した割合として算出されます。40~-40%の範囲のスコアは概ね「安定」を表し、-40%未満のスコアは「否定的センチメント(感情)」を表し、40%超のスコアは「肯定的センチメント(感情)」を表すものとします。


政治の世界では、一週間は長い期間であるとよく言われます。しかし、戦時においては、一週間は一生涯であるかのように感じられる可能性があります。私たちが3月のアンケートに着手した時点で、ウクライナの人々は既に2週間近くロシアとの紛争に耐えてきていました。この記事を執筆している時点でも、終結にはほど遠い状況と思われます。この軍事侵攻を受け、EU、アメリカやその他の先進国は、ロシア経済に対して厳しい制裁措置を発動しました。

この制裁には、国際リース会社に対し、3月28日までにロシアの顧客とのすべてのリース契約の解除を要求する内容が含まれています。それ故、これらのリース会社は、ひと月も経たないうちに515機*を回収するという厳しい課題を背負わされることになったのです。制裁が発動された当時、世界の商用機材の供給力にどのような影響が出る可能性があるのか、という点で疑問がいくつか提起されました。このため、私たちは3月のアンケートにおける補足的な質問として、アンケートの対象者に対し、国際リース会社からロシア系航空会社にリースされていた機材のうち、今後6ヵ月以内に再度市場に出す必要がある機数について、見解を尋ねました。

Aircrafts leased to Russian airlines which will need to be remarketed

約33%の回答者は、当該機材の25%以上を再度市場に出す必要があるとの見解を示しました。このことは、ロシア系航空会社にリースされていたフリートの4分の1以上が、リース会社によって回収されることを暗示しています。そして、67%超の回答者は、当該機材の25%未満を再度市場に出す必要があると答えました。これは、国際リース会社が、自社のロシア関連フリートのうち、非常に少ない割合の機数しか回収できない可能性があることを示しています。今はもう、前述の3月28日の最終期限は過ぎています。Cirium Fleets Analyserによると、3月29日の時点で、515機のうち79機が回収されていました。恐らくこの15%という割合が、アンケート回答者の先見の明を実証していると思われます。

アンケートの機材価値に関する正規の質問に目を向けると、私たちがこの調査が始まって以来見てきた、概して価値トレンドには肯定的であるという傾向は、概ね持続していました。しかし、特に注目すべきは、ツインアイル型の2機種が現在、初めて肯定的な範疇に入っているということです。そのボーイング787-9とエアバスA350-900は、価値トレンドにおいて肯定的なNPSスコアを示しています。このことは、長距離市場がさらに開放され、ジェット燃料コストが上昇する中で、低燃費のツインアイル機に対する需要が回復し、潜在的に価値を下支えしていることを示している可能性があります。

Direction of trend in values NPS index (twin-aisle)

シングルアイル機においても、トレンドは肯定的でした。ただし、2012年式ビンテージ機のエアバスA320-200ceo(シャークレット付き)や新造機種のエアバスA220-300を含む一部のタイプは、NPSスコアが数ヵ月間概ね上昇を続けた後、一息ついた状態となっています。私たちは先月、A320ceoについて具体的に言及しました。なぜなら、調査対象の全機種の中でも、アンケート回答者たちが当社による価値判定が低過ぎていたことを最も明確に示した機種だったためです。これに対応して私たちは、当社の価値調査に注目し、最近の大量のデータポイントを再評価しました。その結果、この機種の3月末時点の価値は、最大20%引き上げられました。

Ascend by Ciriumが価値とリース料の見解を提示するあらゆる主要投資家と同様、私たちもA320ファミリーを引き続き調査していきます。そしてもし、価値の再修正の必要があることを示す十分なデータが集まれば、それに基づいてすぐに対応します。


私たちは、市場のすべての側面を反映させるべく、常に新たなアンケート回答者を探しています。回答者には、調査結果の完全版(上記の内容は主な概要に過ぎません)を入手できるというメリットがあります。アンケートに回答するための時間はわずか3分ですが、それにより回答者は、入手し得る最も大局的な機材価値の市場トレンド情報を手に入れることができるのです。CAMSIのアンケート調査に参加したい方は、michael.graham@cirium.comまでご連絡ください。アンケート回答者には、調査結果の完全かつ詳細な分析(10以上のグラフを含む)が提供されます。


Ascend by Ciriumのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend by Ciriumのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

Ascend by Ciriumのチームをご紹介します。

RELX logo