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航空専門家の視点, 航空機業界の動向予測, 運航

航空会社の新たな課題―2022年のオイルショックと対処法

May 2, 2022

ジェット燃料は、多くの航空会社にとって最大の、あるいは少なくとも人件費に次いで二番目のコスト要因となっています。

Mike Malik, CMO, Cirium

筆者:Mike Malik, Chief Marketing Officer, Cirium

航空会社のビジネスは決して容易なものではありません。コストのうち人件費が占める割合が大きいうえ、運営には大きな資本を必要とします。この業界は、戦争から天災、最近のパンデミックに至るまで、世界のありとあらゆる災厄に左右されやすいように見えます。そのなかでも、燃料のことを忘れてはいけません。

東アジアのような主要市場の一部はなお、新型コロナウイルス関連の混乱に対処している最中ですが、力強い回復フェーズに入った市場も数多くあります。世界各地の航空会社が、短距離路線を中心としたチケット予約の活況に沸いています。しかし、昔から何度も業界を悩ませてきた問題が今、非常に嫌な形で、嫌なタイミングに再来しています。2020年初頭には1バレルあたり平均18ドルだった原油価格は、2月のロシアによるウクライナ侵攻後、100ドルを優に超える水準に達してしまいました。この直近のオイルショックは、長く待望されてきた航空会社の回復を阻止することになるのでしょうか?

ジェット燃料は、多くの航空会社にとって最大の、あるいは少なくとも人件費に次いで二番目のコスト要因となっています。ありがたいことに、楽観的になれる理由もいくつかあります。一つには、航空各社のフリートの燃料効率が、2014年半ば(前回、原油価格が100ドルを突破した時期)よりもずっと高くなっていることが挙げられます。

Ciriumの業界トレンド時報「On The Fly(即時分析)」の最近の記事では、当社のFleet Analyserツールを活用してある傾向を詳しく説明しています。つまり、航空各社はパンデミック中、高機齢のジェット機を大量に退役させており、その多くを最新モデルと置き換えたというのです。

過去の経緯からすれば、航空会社は好況時にはキャパシティを増やすことに力を入れますが、不況時にキャパシティを減らすことには消極的でした。市場占有率が落ちること、法人顧客を苛立たせること、または単位原価が膨らむことを恐れたのです。しかし、業界はここ2年間の経験から、需要が単にないという場合には、キャパシティの削減をより安心して実施するようになってきました。恐らく業界は今後、燃料コストが上昇する中で、再び躊躇なくキャパシティを減らし始めることでしょう。

航空各社が現在の燃料費高騰についてどう考えているかを示すいくつかの例をご紹介します。

  • ブラジルでは、アズールブラジル航空が2月28日、大規模なフリート転換計画を実行に移し、ASK(有効座席キロ)あたりの燃料消費量を20%弱減らすと述べました。同社は、業界が燃料価格に対応してどう軌道修正を行ってきたかについて説明し、「キャパシティは3月から4月にかけて減少してきました。これは非常に良い傾向です。航空業界も運賃を上げてきています」と述べました。
  • トルコ航空は3月2日、競争状況や、運賃値上げの可否に影響を与えるその他の要因次第では、燃料費高騰により一部の市場が他市場よりも低調になると認識していると述べました。しかし同社は、自社ネットワークの大部分では競合他社が撤退を余儀なくされていると付言しています。同社はリスク回避も十分に行っており、今年に必要な燃料の約45%の価格について、現行のスポット価格を大きく下回る価格で固定させています。
  • ルフトハンザ航空の場合は、2022年に同社が必要とする燃料の63%について、1バレルあたりわずか74ドルで固定させています。同社は3月3日の業績発表の場で、燃料価格の上昇を相殺できる程度にまで運賃が上がるかどうか尋ねられました。この問いに対する同社CFOのRemco Steenbergen氏の答えは、「タイムラグはあるかもしれませんが、関係する価格の水準を考えれば、今後運賃が上がるのは明らかだと思います」というものでした。

為替レートも常に、一つの要因となっています。米ドルと比較して弱い通貨を有する経済圏を本拠地とする航空会社は、概して低迷しています。日本円の対ドルレートは複数年ぶりの安値となり、日本航空全日空のような航空会社にとっては、今回の燃料ショックは非常に痛手となっています。その一方で、数多くの米国系航空会社を含む一部の航空会社は、リスク回避しないことを選択しています。これらの航空会社のケースでは、企業統合やその他の要因により、かなり規律のとれた市場が形成されました。そのような市場では、キャパシティが燃料ショックにすんなりと適応できているのです。アメリカン航空は最近、原油価格が2010年にどのようにして平均80ドルに至ったかを説明しましたが、この時アメリカの航空業界は、総計で48億ドルの純利益を上げていました。原油の年間平均価格は、2013年までには109ドルに急騰したものの、業界全体の純利益は88億ドルとなりました。言い換えれば、燃料ショックは必ずしも災いをもたらすものでもないのです。


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Ciriumは、その業界随一の正確な燃料燃焼モデリングを、物理的機材からフライト運航、旅客情報までをカバーする総合的なデータセットに当てはめることにより、世界の燃料需要の予測とジェット燃料の価格予想を行う唯一無二の存在となっています。

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