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航空専門家の視点, 航空機業界の動向予測

2022年に期待できる7つのこと

February 22, 2022

CiriumのCEOであるJeremy Bowenが、航空業界と協力し合って将来のシナリオ、つまり今年以降に期待できることを予想します。

Jeremy Bowen, Cirium CEO
Jeremy Bowen, CEO Cirium

飛行機を2020年に利用せず、2021年には利用した人は皆、航空業界にとって今後の回復の兆しとなる貴重な存在です。2022年はさらに期待できそうです。

回復途上の航空業界は、数々の困難を経験してきました。私たちは、先行きの読めない新型コロナウイルスの感染者数の増減、新しい変異株、そして国によってばらつきがあるワクチンの接種状況に対処し続けてきました

世界各国が敷いた入国制限は、アメリカや中国のような強固な国内旅行需要がある市場には、急速な字回復をもたらしました。渡航の自由を前提とする国際線に依存する市場や、そうした市場で運航する航空会社は、悪戦苦闘しました

しかしながら、回復の兆しは見えています。イギリス~アメリカ間などの市場では、渡航制限が解かれ始めています。新しい変異株が勢いをそぐ面はありながらも、航空各社は何とか難局を切り抜けてきました。

Ciriumのデータによると、昨年(2021年1~10月)の旅客フライトの総数は約1,788万2,200便に達し、2020年の1,500万便から増加しました。 これは、業界が回復基調にあることを明確に示しています。

完全な回復にはまだほど遠いのですが、世界的にその途上にあり、今年は上昇トレンドに向かうとみられます。 私たちCiriumは、航空業界と協力し合って将来のシナリオ、つまり今年以降に期待できることを予想しました。ここで、2022年を占う上でカギとなる7つのことをご紹介します。

2022年に期待できる7つのこと

1. 世界の国内線旅客輸送はコロナ禍前の水準に戻り、国際線輸送は3分の2の水準に達する

旅客需要は着実に回復してきています。多くの国々でワクチンを完全に接種した人の数が増え、それに伴って渡航制限が緩和されているからです。特に北米およびロシアの市場の回復に牽引され、2021年9月までには国内線輸送(搭乗客数で計算)が上向きとなり、2019年1-9月期と比べて36%減の水準にまで戻っています。

このトレンドは、2022年を通して続くと考えられます。ロシアの国内線輸送は既に2019年の水準を超えており、私たちは、続いて中国も好転すると予想しています。2022年全体の北米、ヨーロッパ、中南米の国内線輸送は2019年の水準となり、他地域も5~10%減程度に収まると予想しています。

EUのデジタルCOVID証明書(ワクチン接種証明書)の導入に後押しされてヨーロッパ域内の旅行需要が戻ってきた2021年半ばまでは、国際線はほとんど運航されていませんでした。それ以降、北米発着の国際線需要と同様、ヨーロッパ域内市場も着実に回復基調を歩んでいます。しかしながら、2021年9月の国際線旅客数は、なおも2019年同月比62%減でした。Ciriumの2022年の基礎シナリオは、各国が自国民の70%以上のワクチン接種率を達成し、継続的に国境を開放することです。中国については、新型コロナウイルスの撲滅戦略が変更される兆しが今はないため、どうなるかまだ分かりません。国際航空輸送は、その地域独特のさまざまな動きを反映するものです。それでも、私たちは、2022年下半期には長距離の飛行機利用が大きく増加すると考えており、2022年末までには、国際線旅客輸送は2019年と比べて概ね25~30%減の水準になると予想しています。

総合的に見ると、世界の航空旅客輸送量は、2021年9月には2019年同月比で47%減の水準だったのに対し、2022年末までには、2019年と比べてわずかに15%低い水準まで回復すると見込んでいます。

2. 就役旅客フリートの規模は、ほぼパンデミック前の水準に戻る

CiriumのコンサルタントチームであるAscend by Ciriumは、2022年末までには、世界の就役旅客フリートが2万700機に増大すると予想しています。これは、2019年末と比べてわずかに数百機少ないだけの水準です。2021年末までには、1万7,000機弱の旅客機が就役すると予想されています。エアバスとボーイングは、計1,400機超の新造機材を2022年に、計1,600機弱の新造機材を2023年にそれぞれ納入する見込みです。現在余剰となって駐機中の約4,800機のフリートは継続的に減少し、来年末までには約3,700機になると予想されています。この減少傾向により、2023年末までには余剰フリートが2,400機にまで減る見込みです。

ほとんどの市場が回復基調となり、2023年半ばまでには世界の航空旅客輸送量が2019年の水準を超えるとみられる中、コロナ危機のピークだった2020年4月には1万4,000機を超えていた旅客用ジェット機の余剰機材は、その大部分が再び就役フリートに吸収される見込みです。私たちは、2022年から2024年にかけて、年間約550機が退役すると予想しています。余剰機材のうち機齢が高く燃料効率の低い機材は、スクラップに回るとみられます。

航空会社は、再構成したフリートを活用してコロナ危機から脱しつつあります。そのフリートにおける次世代機の燃焼効率は、置き換えられた燃費の低い機材と比べて15%高くなっています。このフリートには、9,600機弱の次世代型シングルアイル機と1,600機の次世代型ツインアイル機の予備機材が含まれており、それぞれ2020年代から2030年代にかけて納入される予定となっています。

3. 2022年には、ビジネスイベントやビジネス会議の増加に後押しされて、出張のための飛行機利用が加速する

世界的にワクチン接種が進み、経済が回復する中、会社の経営陣は既に出張への支出を増やしています。グローバル・ビジネストラベル・アソシエーション(GBTA)によると、渡航制限の緩和を背景に、出張への支出は2021年に21%増えたとみられています。例えば、2021年3月に追跡された国際線フライト数は21万7,000便だったのに対し、同年10月に追跡された国際線フライト数はその1.5倍の54万2,300便となりました。

このトレンドは今後も持続し、2022年には出張が一段と加速すると見込まれています。GBTAは、2022年の出張の規模が、前年比で36%の大幅増になると予想しています。私たちは、ビジネスイベントやビジネス会議が、この急増の原動力になると予想しています。Ciriumは、ビジネスイベントにまつわるオンライン活動を追跡し、その活動に機械学習を適用しています。そのようにして得たデータを、今度は航空会社の予測モデルに統合しています。CiriumのDiio Signalsは、企業のイベントや会議に関するウェブ上の活動が増加していることを示しています。例えば、Ciriumのデータによると、バルセロナでは2019年1月、飛行機利用に影響を与えた大規模なビジネスイベントが10件、開催されました。2020年1月は23件、2021年1月はわずか2件でした。2022年1月には、4件のイベントが開催される見込みです。これは、ビジネスイベントが少しずつ戻ってきていることを示す明確なサインです。

このプラス要素は、2024年末までに出張が完全に回復するとするGBTAの予想にも反映されています。その予想では、出張に対する年間支出高は、パンデミック前の水準を上回る1兆4,800億ドルになると見込まれています。

4. 旅客機の貨物コンバージョンが史上最高の水準になる

航空貨物市場は引き続き成長しており、2021年は好調な年となりました。2021年1~9月期の貨物輸送量(貨物輸送トンキロで計算)は、前年同期比8%増となっています。しかしながら、キャパシティは今年、12%弱減少しました。この背景には、旅客機の貨物室キャパシティの継続的な不足があります。

Ciriumのフリートデータの分析では、2021年には61機の新造貨物輸送機の発注がありました。これは、2018年以降では最高の数字です。エアバスは、A350貨物機の新型機の製造計画を立ち上げようとしています。この新型機は、大容量貨物輸送機の市場における競合機種となります。ボーイングも、777-X貨物機の製造で対抗しようとしています。

2021年1~10月期には、2020年同期の70機を大きく上回る97機のジェット旅客機が、貨物機に改修されました。この記事を執筆中の今から2021年末までの間に、さらに多くのコンバージョン(改修)が実施される可能性があります。最終的には、同年全体のコンバージョン総数が、2020年の2倍の140機になるかもしれません。この水準は、これまでの単年での最高だった107機を遥かに上回ります。2022年には、さらに高い数字になると予測されています。2021年には既に、250機を超えるコンバージョンの受注がありました。この活況は、機材がより安く手に入るようになっていることや、電子商取引がブームになっていることなど、複合的な要因によるものです。

5. 機材価値は底値に達しているものの、一部機材は監視が必要

機材価値とリース料は2020年4月から2021年3月にかけての12か月間、前例のない打撃を受けました。2021年4月から9月にかけて、多くの機種の機材価値とリース料は安定してきており、それらが上昇している機種もいくつかあります。

世界フリートの収益動向は、シングルアイル機とツインアイル機の違いだけではなく、シングルアイル機の範疇の個別機種によっても異なっています。2021年には、ATR72、エンブラエルE190/195、ボーイング737MAXファミリーの価値が上昇しました。エアバスA320の収益動向は、複雑な様相を呈しました。機齢の高いビンテージ機の価値は改善しましたが、機齢の低い機材の価値は一段と低下しました。機材価値とリース料の動向を比較すると、価値が先に改善し、一方でリース料は、相場の底とみられる価格帯で安定し続けています。

ツインアイル機部門をみると、リース料が継続的に下落しており、最近のA350-900の賃貸料は最大19%減で推移しています。787については、引き続き注視しておく必要があります。この部門は、様子見をしている航空会社の需要を刺激し、遊休フリートのために新たな就役先を探さなければなりませんでした。

今のところ、積極的に機材を売却したい売主はいないため、価値が増減しない状況が続いています。しかしながら、ツインアイル機のリースレートファクターの一部が下落し、市場価値に対して0.5%未満になっていることに注意すべきです。そのような価値が今後どれだけの期間、維持できるのかははっきりと分かりません。

6. 航空会社は、パートナーシップを利用して乗客を提携相手の国内市場に輸送するようになる

私たちは、コロナ禍後、二次市場に運航する航空会社に変化が起きるとみています。航空会社はその代わりに、自分たちの提携相手を利用して、乗客を二次市場の都市に輸送すると予想しています。

デルタ航空の例が参考になります。デルタは2019年、世界規模の航空連合「スカイチーム」のヨーロッパにおけるパートナーであるKLM、エールフランス、アリタリアのハブ空港のほかに、88のアメリカ~ヨーロッパ路線の市場を有していました。デルタは2022年の通年で、元の88市場のうち72市場にのみ運航する計画を立てています。その運航市場には、アトランタとシュトゥットガルト、デュッセルドルフ、ブリュッセル、チューリッヒを結ぶ各路線と、ニューヨーク(JFK)とベルリンおよびマラガを結ぶ路線が含まれています。これらすべての市場の路線は、KLMのアムステルダムのハブや、エールフランスのパリのハブを越えて運航されています。

2022年通年にデルタが計画するアムステルダムおよびパリ行き便の座席数は、2019年と比べてなお25%減となっています。大西洋横断路線も、同様に著しく減少しています。デルタ航空にとっては、利用の少ない長距離路線に投入する自社機材に投資するよりも、乗客をフィルターにかけることにより、現在停止中の路線について、提携相手のハブを越えて乗客を乗せる方が理にかなっています。こうした欧州域内の搭乗区間でコードシェアリングを活用することにより、提携航空会社同士が、双方の努力なしに満席にならない可能性がある路線について、互いに相手のフライトに乗客を供給できるのです。

7. フライトが続々と再開されることによってCO2の排出量が増加するが、航空会社は今、よりクリーンなフリートを保有している

2021年に運航されたフライト数が減少する中(2021年1月1日から10月31日までに追跡されたフライトの数は、2019年同期比29%となっています)、フライトに起因するCO2の排出量は、パンデミック前よりも40%減りました。2021年には、国内フライトが戻るにつれて燃料燃焼が増える傾向が見られましたが、航空会社が自社機を運航する時間を著しく減らし、より燃焼効率の高い機材を優先して利用したために、排出量は減っています。

相対的に大幅な排出量削減となったのは、長距離の国際路線市場が、国内および地域内路線よりも、回復に時間がかかったからでもあります。これにより、運航機材の平均サイズが小さくなったほか、フライトの距離も短くなりました。一方で、空域と空港の混雑度は低下し、結果として、離陸待機や上空での着陸許可の待機に費やした時間も減ったのです。

相対的に大幅な排出量削減となったのは、長距離の国際路線市場が、国内および地域内路線よりも、回復に時間がかかったからでもあります。これにより、運航機材の平均サイズが小さくなったほか、フライトの距離も短くなりました。一方で、空域と空港の混雑度は低下し、結果として、離陸待機や上空での着陸許可の待機に費やした時間も減ったのです。

航空業界は今後、「ネットゼロ2050」の目標を達成するため、フライトの実際の燃料燃焼の把握に一層努め、持続可能な航空燃料(SAF)やオフセットに注目するようになるでしょう。この目標達成に向けて水素航空機や電動航空機が果たす役割はずっと小さいものになりますが、それでも私たちは、これらの方法にまつわる議論も引き続き活発に交わされると予想しています。

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