アセンド by Cirium, 航空専門家の視点, 運航

航空業界はグリーン化したのか?

January 19, 2022

数多くの航空会社が、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする“ネットゼロ”の誓約を立てています。とはいえ、その成功は、まだ実証されていないテクノロジーに大きく依存しています。

Richard Evans(Ascend by Cirium シニアコンサルタント)

Richard Evans, Ascend by Cirium

航空会社や航空関連企業の経営陣にとっては、パンデミックからの回復の道筋がどうなるのかが、今年に入ってからも引き続き最大の関心事となっています。しかし、環境問題と地球温暖化に対する取り組みも、僅差で2位に入る関心事です。

環境、社会、ガバナンスを表す頭字語であるESGの“E”(Environment=環境)は非常に大きなテーマですが、いくつかの重要な注目点が、ここ12カ月の間に浮かび上がってきました。

2021年には、数多くの航空会社が二酸化炭素(CO2)の排出量削減の目標を発表しました。そのほとんどは、2050年またはそれより早い時期に、ネットゼロを達成するとの誓約も伴っています。そしてついに国際航空運送協会(IATA)も、昨年10月に米ボストンで開いた年次総会(AGM)において、会員企業に対して2050年までにネットゼロを達成することを求めました。これは、国際民間航空機関(ICAO)が定めた現行の目標をはるかに上回ります。その目標とは、2050年までにCO2の排出量を2005年の数値から50%削減するというもので、パリ協定における目標と一致しています。

2050年は遠い未来のように思えるかもしれません。そもそもネットゼロを達成するまでのロードマップは、未だ実証されていないテクノロジーに大きく依存しています。 それでもなお航空各社は、今後5~10年間のうちにある程度のCO2削減を確実に達成することを目標として掲げています。いくつかの例を以下に示します。

  • スカンジナビア航空(SAS):CO2排出の絶対量を、2025年までに25%、2050年までに50%、それぞれ2005年の数値から削減する。2030年までに、スカンジナビア地域内のすべてのフライトを持続可能な航空燃料(SAF)を使用して運航する。
  • アラスカ航空:2040年までにネットゼロを達成する。2019年から25年にかけて、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出の実質ゼロ)による成長を実現する。有償トンキロ(RTK)あたりのCO2排出量ベースで最も燃費効率のよいアメリカの航空会社になる。
  • インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG):2030年までに、フライトの10%をSAFを使用した運航とする。2025年までに有償旅客キロ(RPK)あたりのCO2排出量を10%削減し、2030年までにCO2の実質排出量を20%削減する。
  • ライアンエアー:2035年までに、フライトの12.5%をSAFを使用した運航とする。
  • ヴァージン・アトランティック航空:2025年までにRTKあたりのCO2排出量を2019年の数値から15%削減し、2040年までにCO2の実質排出量を40%削減する。

こうした計画の一部では、CO2の総排出量と実質排出量との間の微妙な差異、測定法の差異、CO2の絶対測定と特定の測定との間の微妙な差異が強調されています。事業規模が現行より2倍になった航空会社が、RPKあたりのCO2排出量を20%削減しても、排出量はなお60%増となります。

実質排出量は、いわゆるカーボンオフセットを通じて削減できますが、この方法には異論も多く、恐らくは短期的な解決策にしかなりません。ほとんどの航空会社は、2019年の排出量レベルを基準としています。その数値は、Ciriumの新しいGlobal Aircraft Emissions Monitor(世界航空機排出量モニター)を活用すれば簡単に評価できます。

EUは2021年に、独自の「Fit for 55(欧州グリーンディール)」プランを発表しており、2030年までに温室効果ガスの排出量を1995年の水準より55%減らそうとしています。このプランの一部として、欧州連合域内排出量取引制度(EU-ETS)に基づく航空会社への排出割当量の無償配分が、2024年から2027年にかけて段階的に廃止される予定です。この割当量はその分、競売にかけられる割当量に追加されることになります。これは、航空会社が、割当量のコストが今も引き続き記録的水準にまで高騰しているにもかかわらず、2027年までにEU-ETSに基づく全割当量を公開市場で購入しなければならないことを暗示しています。

2020年のエアバスZEROeのローンチに続き、2021年は、グリーン化推進と航空機テクノロジーの分野に関する発表が非常に多く行われた年でした。例えば、エンブラエルは、電動およびハイブリッド電動の航空機計4機種の概要を発表し、2040年までに水素を動力源とする35~50席型の地域航空用機材を展開するとしています。ZeroAviaも、水素を動力源とする地域航空機2機種のプログラムについて発表しました。この2機種のうち、最初のダッシュ8-400はデ・ハビランド・カナダとアラスカ航空を、2機目のCRJ550(50席型リージョナルジェット機)はユナイテッド航空と三菱重工系のMHIRJをそれぞれ開発パートナーとしています。

このほかの重要なステップとしては、すべての大手エンジンおよび航空機メーカーが、2030年までに現行生産機種の燃料に占めるSAFの割合を100%とする計画を打ち出しています。現在は、SAFと灯油の混合比率が最大50%という状況です。

すべての航空会社、特にヨーロッパの航空会社にかかるコスト圧力は今後、増大していく見込みです。新しい駆動技術、水素、SAFの増産、さらにETSの割当量対策はすべて、膨大な投資を必要とします。代替の燃料ソースや駆動技術への移行によるCO2削減の費用は、現在は灯油を燃焼させるための全費用、またはカーボンオフセットの費用をはるかに上回っています。この費用ギャップは、新技術が低廉化し、CO2排出コストが増加するにつれて、縮小していくでしょう。どうみても、費用の安いフライトの時代は早晩終わりを告げるのです。

CiriumのGlobal Aircraft Emissions Monitorの詳細については、こちらをクリックしてください。

RELX logo