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商業戦略, 航空専門家の視点, 航空機投資

航空業界におけるボラティリティの軽減と機材資産への影響

August 8, 2023

予測的知見は、航空ファイナンスにおける意思決定力をどのように強化するのでしょうか。

Rahul Oberai, Cirium

筆者:Rahul Oberai, Global Head of Sales at Cirium

商用機材の市場は今、かつてないほどダイナミックになっています。新型コロナウイルスのパンデミック後、機材の価格決定権は、需要の加速に伴ってリース会社や銀行に移ったようです。

機材需要は旺盛であり、2024年には世界的に成長状態に復帰すると予測されています。航空会社は引き続き大量の機材を発注しており、その発注残は、前回の市況サイクルの過去最高値をわずかに下回る水準を維持しています。課題は機材の供給面にあります。OEMが納期に間に合わせるのに難航し、リース会社の使用機材の在庫も減少し続ける一方、駐機・保管中の機材が引き続き再稼働しているからです。それでも、整備・修理・組織(MRO)の能力とスペアパーツの供給がある限り、この再稼働の状態は加速するでしょう。

投資家らの役割がこれほど重要となり、かつ変化する厳しい環境下に置かれたことはありません。

焦点は今、機材資産の条件面から、航空会社によるリース契約の履行能力に移ってきています。金利上昇や供給減により、その能力がますます問われているのです。

コンプライアンスを360度の視点から見る

機材資産やポートフォリオがどのような影響を受けているかを完璧に把握するために、データと分析を活用するケースが増えています。Ciriumのコンプライアンスとリスクの担当チームは、航空会社のスケジュール状況と回復具合、航空会社の収益性、ポートフォリオ内の機材が環境に与える影響、そして旅客の需要および予約の状況をモニタリングしています。

状況認識と機材所有に関する見識はますます深まっている

パンデミックの最中とそれ以降、注目すべきリース会社の統合が見られましたが、地政学的な状況が市場のボラティリティ(変動性)を増幅させているため、そうした統合劇はさらに増えるかもしれません。今後12~24ヵ月の間に、新たな資金調達法が増えると予想されます。

ロシアとウクライナの紛争と、ロシアで運航する機材への影響は、リース会社が所有する機材についての状況認識を高める必要性を痛感させるものでした。とりわけ、特定のリース会社が所有し、現在はロシア系航空会社の手中にある機材は、10億ドルもの値が付けられています。

こうした市況に伴って、大小のリース会社が統合されつつあり、機材フリートに投資する新規参入業者も増えています。投資家たちは、売買取引される機材の増加ぶりと、制約の多い中古機市場での機材価値の上昇傾向を注視しています。

データは投資プロセスのあらゆる段階を支える

私たちは、市況は上昇傾向にあると考えています。最近のエア・インディアやIndiGoによる記録的な発注コミットメント(それぞれ470機と500機)を含め、航空各社による過去最大規模の機材発注が行われているためです。マクロ経済環境が需要に及ぼす悪影響の懸念は後退しており、特にアジア太平洋地域の需要は順調に回復しています。

今は銀行やリース会社による投資が注目を浴びています。こうしたこともあり、投資先の選定やリスクの軽減方法についての確かな情報に基づいた意思決定を行うため、投資の計画段階でデータや分析を十分に考慮する必要性が高まっています。

実際にデータは、投資利益率を向上させる上でも、またポートフォリオ内の資産に対する包括的なリスク分析を行う上でも、中心的な役割を担うようになっています。さまざまなタイプの航空関連資産の価格と流動性水準が、マクロトレンドの文脈で過去からどのように推移してきたかを理解することは、極めて重要なのです。

予測的知見は意思決定力を強化する

航空業界はこれまで困難な時期を経験してきました。それがボラティリティを加速させ、結果として航空関連資産のリスクも高めてきました。このリスクを軽減するために、より多くの知見が必要になってきているのです。

業界は現在、説明的、予測的、そして処方的な分析に注目しています。この処方的な分析の段階にまで到達するためには、データとアプリケーションに関する多くの作業が必要になってきます。

Ciriumは、意思決定力を強化するため、航空関連ファイナンスに説明的および予測的分析をもたらすことに重点を置いています。

私たちは現在、メンテナンスに関する事象を予測する新しい機能を構築している最中であり、今年後半のリリースを予定しています。さらに、よりきめ細かな到着予定時刻の予測を開始することも検討しています。

航空業界には、リスクと課題がつきものです。そうであればこそ、ここ2、3年の状況が証明しているように、航空関連業界、特にファイナンス市場と連携して、ボラティリティを効果的に管理および監視し、資産や信用のリスクを軽減することが非常に重要になるのです。


本稿は最初にAirline Economicsに掲載されました。

  • 機材の稼働状況をモニタリングし、CO2排出削減のための戦略を確立する上で、Cirium Ascend Risk Analyticsがどのように役立つかをぜひご覧ください。
  • Cirium Ascend Value Trendsを活用すれば、さまざまな機材の資産クラス別に、主要な価値と流動性の指標をモニタリングし、ベンチマーキングすることができます。
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