お問い合わせ
お問い合わせ

Ascend Consultancy, 航空専門家の視点

Ascend Consultancyによる今後の展望:A350 XWB、険しかった1,000機受注までの道のり

July 27, 2023

エアバスの大型ツインアイル機は、計画変更や顧客とのいざこざにより、販売数の大台達成までの道のりが険しいものとなりました。

Max Kingsley Jones, Ascend by Cirium

筆者:Max Kingsley-Jones, Senior Consultant at Cirium Ascend Consultancy

ここ数ヵ月間に受注が殺到したエアバスA350 XWBは、1,000機以上の受注を達成した6機目のツインアイル(ワイドボディ)機となりました。この機種の納入が確実に収益を生む状況に移行するまでには、おそらくあと5年はかかるでしょう。それでも、エアバスのトゥールーズ工場にとっては、やや厳しいスタートを切ったこの機種の生産プログラムの経緯からみても、1,000機という受注数が重要なマイルストーンになったのは間違いありません。

XWB(エクストラ・ワイドボディ)という接尾辞が付けられたこのA350は、エアバスが数年間、売れ行きの好調なボーイング787に対抗する機材戦略を確立するのに難航し、未決定の状態が続いた後、ようやく2006年にクリーンシート設計(ゼロから開発すること)の航空機として誕生しました。Cirium Coreのデータによると、エアバスは2005年から2006年にかけて、A330の派生型機として計画された一連の航空機を「A350」の名称で提供し、計100機の確定受注を獲得しています。これらのA350 “v1.0(バージョン1.0)”の受注が下火になると、最新機材の開発立ち上げを支えるべく、その一部の機材がXWBバージョンに移行されました。

グラフ1:A350 XWBのオーダーブックの推移

エアバスが2006年12月にA350を再びローンチした際、ベースライン機の「-900」と、今は開発中止となっている”シュリンク(胴体短縮型)”の超長距離機である「-800」という2つのバリアント(変異機種)が提供されました。しかし、エアバスは、2006年12月のXWB初受注を含め、この小型の方のバリアント「-800」に対する180件以上の注文を積み上げた後、2013年にはひっそりとそのバリアントの開発計画を棚上げしていたのです。これらの注文の多くはキャンセルされたものの、約半数は他のXWBバリアントの注文へと移行しました。エアバスは、既存契約をA330neoの受注とすべく再交渉することにより、キャンセルされたXWBの事業の一部を維持し、実質的にA330neoを製品ラインアップにおけるA350-800の代替機種としました。

このようなやや複雑な経緯があったにもかかわらず、A350 XWBは上掲のグラフ1に示した通り、発売から18年で実質的に1,000機の受注を達成しました(A330をベースにした初期バージョンの受注をカウントすると19年になります)。このグラフでは、2007年における最初の「-1000」の受注状況と、A350-800の開発縮小が総受注数に与えた影響が明確に示されています。現在までのところ、A350-900が売れ筋の機種であることは証明されており、今年6月末時点のオーダーブック(注文控え帳)全体の4分の3を占めています。

8年目から11年目(つまり2013年から2016年)にかけてオーダーブックが伸び悩んでいる数年間は、開発から稼働開始への移行期や、未納入の期間が何年にも及ぶ場合に、機材生産プログラムがしばしば経験する減速状態が浮き彫りになっています。

エアバスとカタール航空の塗装品質を巡るいざこざが、ここ数年のA350のオーダーブックに与えた影響は明らかです。エアバスが2021年と2022年にキャンセルし、今年初めに復活させた23機の「-1000」の受注については、新型機A350Fが事実上相殺する形となりました。

A350は、カタール航空の塗装問題と新型コロナウイルスのパンデミックによる2020年から2022年にかけての低迷の後、2023年に力強い回復を果たしました。その総受注機数は今年6月末、昨年末時点から11%増加して1,000機を超えています。これにより、総受注機数に占める受注残の割合は、2022年の44%という低水準から、再び50%へと上昇し始めました。

グラフ2:ツインアイル1,000機受注のランレートの比較

A350は1,000件の受注を達成したことで、A330/A340(およびA330単独)、747、767、777、787を含むツインアイル機の同じ大台突破のグループに加わることになりました。グラフ2(上)に示されている通り、A350の受注が1,000機に達したペースは、現行のいくつかの同類機種のペースに匹敵しています。1,000機の大台に乗るまでの年数は、エアバスがファミリーとして販売したA330/A340が19年、単独機種としてのA330が21年となっています。それでも、787については、発売からわずか10年で1,000機の大台を突破し、現在では1,700機の受注を達成しています。このような販売ペースを示したツインアイル機は他にありません。最も販売数の多い777とA330/A340はそれぞれ、今では2,000機を超える受注数を記録しています。

エアバスは、現在までに計542機のA350を納入しています。Cirium Ascendによる最新の長期予測では、A350-900について、カタール航空が2014年12月に最初の機材を受領してから約14年後の2028年に、機材の引き渡し総数が1,000機を超えると予測しています。


Ascend by Ciriumのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend by Ciriumのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

Ascend by Ciriumのチームをご紹介します。

RELX logo