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アセンド by Cirium, 航空専門家の視点

Ascend by Ciriumによる今後の展望:APACにおける国境再開時のキャパシティプランニング

May 13, 2022

北アジアの多くの国々がいまだ入国制限を継続しており、東南アジア諸国の国境再開の動きも鈍いため、旅行産業の回復には時間がかかりそうです。

Joanna Lui, Ascend by Cirium

筆者:Joanna Lu, Head of consultancy Asia at Ascend by Cirium

アジア太平洋地域の一部の国々がここ2週間、新型コロナウイルスに起因するロックダウンの解除計画を打ち出してきています。この地域では入国制限がようやく解除され始めており、アジアの航空各社は今、国際線フライトの便数を増やすことができるようになっています。注目すべきは、全日空がエアバスA380を再稼働させて、7月からハワイ便に使用するというニュースです。このダブルデッカー(2階建て)の機種は2年以上前から、定期便の運航を停止していました。これは、アジア太平洋地域の国際線需要が復活し、ツインアイルの商用ジェット機を再就航させる必要性が高まる兆しなのでしょうか?アジア太平洋地域が国際線サービスを再開する中、この地域における運航網とフリート展開のトレンドはどのようなものになっているのでしょうか?

まず、地域別にツインアイル旅客機フリートの回復状況を確認してみましょう。Ciriumの利用率データでは、2022年5月初め、アジア太平洋地域における旅客フライトとして追跡されたツインアイル機が、2019年と比べて1日あたり約45%の水準まで回復していることが示されています。この回復状況は、他地域からはかなり遅れています。対照的に、北米の航空会社は、ツインアイル機の旅客便の運航について、2019年の80%弱の水準で安定させています。アメリカにおける国内線の飛行機利用の需要が回復する一方、一部の国境がなお閉鎖されている中で、アメリカの航空各社は、自社のツインアイル機の運航内容を一新しています。マイアミ、ロサンゼルス、ポートランド、フェニックスといった以前はシングルアイル機での運航が一般的だった到着先空港では今、ツインアイル機での運航が見られるようになっています。米国の三大航空会社はそれぞれツインアイル機でハブ空港間を結ぶ接続便を充実させており、その平均ロードファクター(有償座席利用率)が再び80%に迫る勢いとなっています。

旅客便として利用されているツインアイル機(2019年と比較した変動率)

 Source: Cirium Utilisation

しかし、アジア太平洋地域の国内便の到着先空港においては、シングルアイル機をツインアイル機に置き換える同様の動きはまだ見られません。この地域では、中国や日本などの最大級の国内便市場であっても、その経済活動を限られた数の大都市圏に集中させてきた傾向があります。ツインアイルジェット機は、そのような人口密度の高い短距離路線市場で既に使用されています。そのため、国内の他の目的地同士を結ぶ路線に、より大型の機材をさらに投入する機会は限られるのです。

アジア太平洋地域における国際線サービスの再開は、また別の話になってきます。アジア太平洋航空協会によると、この地域の航空会社が2021年に運航した国際線の旅客便数は1,670万便となり、パンデミック前と比べて95.6%減少しました。その平均ロードファクターは、わずか32%ほどでした。個人も企業も、国際線を躊躇なく利用できるようになるまでには時間がかかるため、需要はなお問題となる可能性があります。それでも、渡航禁止から2年以上が過ぎ、蓄積した需要がようやく解放される中で、そうしたアジア太平洋地域における需要回復の遅滞は、他の地域の回復によって急速に相殺されてきています。検査と隔離の要件は大幅に緩和されていますが、見込みのある一部の飛行機利用者はなお、レジャー目的の旅行で不必要な煩わしさを体験したくないと考える可能性があります。また、帰路に就く直前に検査で陽性になるという最悪の事態に陥り、海外で足止めを食うという潜在的なリスクを心配している可能性もあります。

この地域では、再稼働する機材が増えるにつれて、いくつか根本的な変化が起きました。これから需要がより多様化する中で、この地域におけるすべての国際線市場に対応する一つの解決法というものはないでしょう。可能性のある動きの一つは、休暇の旅行先としてよく利用される場所を目的地とする運賃の高い長距離路線で、小型の効率性の高い機材を採用することです。大型機材に見合う需要が、まだ十分にないためです。現在は、利益の大きい大都市への中距離路線(1,500~4,000km)で、ツインアイル機を採用する動きも目立っています。

日本のANAホールディングスは、傘下の中距離航空会社であるエアージャパンが2023年の終わりから2024年初頭にかけて、アジア太平洋地域への路線を開設すると発表しました。出発地はエアージャパンの本拠地である東京(成田空港)で、使用機材は2クラスの客室構成のボーイング787-8となります。

貨物のイールド(距離あたりの単価)は、しばらくの間は高水準を維持するとみられます。このため、メインデッキを満たすのに十分な旅客需要がない場合でも、ツインアイル機が多くの路線で依然として魅力的な選択肢となっています。

さまざまな文化を持つ40近い国々で構成されるアジア太平洋地域は、極めて多様です。北アジアの多くの国々がいまだ入国制限を継続しており、東南アジア諸国の国境再開の動きも鈍いため、旅行産業の回復には時間がかかりそうです。Ciriumの機材利用状況データによると、日本では今、この地域最大規模の現役ツインアイル機フリートが運航されており、中国を追い抜きました。中国で運航されているツインアイルジェット機は現在、同国内の全ツインアイル機フリートの約4分の1にあたる100機強に過ぎません。原因は、厳しい出入国管理と、目下の国内のロックダウン(ただし、これは別のテーマになりますが)です。LCC(格安航空会社)とリージョナル航空会社は以前、シングルアイル機ファミリーを地域内および国内路線に投入していました。しかし、多くのアジア太平洋路線の輸送量がまだ十分に回復していない中、そうした航空会社には、あらゆる路線でキャパシティを需要に合わせる柔軟さが求められています。

APAC(アジア太平洋)諸国で運航されたツインアイル機

 Source: Cirium Utilisation

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