Category: 航空専門家の視点

  • South Side Story – 東南アジア航空会社の成長停滞 

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    Thomas Kaplan Senior Valuations Analyst, ISTAT Appraiser
    Thomas Kaplan Senior Valuations Analyst, ISTAT Appraiser

    Thomas Kaplan, Senior Valuations Consultant, Cirium Ascend Consultancy

    今月初め、AirAsiaが最大70機のA321XLR発注を発表したニュースは多くの注目を集めました。もともと多大なバックログ(注文残)を抱え、なお再編からの復活途上にある同社が、表向きさらに発注を追加するべきか疑問視する声もありました。しかし、見出しの裏側を見れば、70機のA321XLRは確定発注ではなく、コミットメントに過ぎません。AirAsiaグループの確定発注は402機(20 XLRを含むA321neoが大半、A330neoは15機)。現役の旅客機フリートはわずか219機(主にA320ファミリーと24機のA330neo)で、2019年に運航していた240機超をいまだ下回っています。 

    2015年、アジア太平洋で現役フリートを大きく超える注文残を有する航空会社をまとめたスライドを準備したことがあります。中でもLion AirとAirAsiaが突出していました。当時伝えたメッセージは、「これまで両社は過去に2桁成長率を達成してきており、同様の成長が続けば理論上バックログを吸収できるはず」というものでした。 

    東南アジアの航空市場への楽観は理由がありました。島々と半島に広がる6億4,000万もの人口は豊かになり、近い将来必ず旅行客が増える、と見込まれていました。観光業は隆盛を極め、中国人旅行者が無限の需要源になると思われていました。AirAsiaやLion Airが採用した超低コストキャリア(ULCC)モデルこそが、その成長を最大限享受する戦略と受けとめられていました。 

    しかし、急成長の物語は長く続きませんでした。経済・地政学要因やULCC同士の競争もあり、この10年で成長は明確に鈍化する結果となります。 

    下図は最大級のバックログを持つ東南アジア航空会社の現役ナローボディ旅客機フリートの複合年間成長率(CAGR)を、地域全体のフリート成長と比較したものです。5年ごとの区切り(パンデミック影響を除くため2020年を2019年に合わせる)で見ると、2005〜2015年はAirAsiaとLion Airが年20%以上の持続的成長を記録し、地域全体でも約年10%の成長でした。 

    2015〜2019年には成長が一桁台へ大きく鈍化し、AirAsiaのナローボディフリートは地域平均と同等のペースとなります。ベトナムのULCCであるVietJetは24機から76機へと3倍に増えましたが、Lion Airほどの増機数ではなく、AirAsiaよりやや多い程度でした。 

    2019年以降、このすべての航空会社にとって成長は苦しい状況です。直近6年、東南アジアのナローボディ旅客機フリートは年率1%の縮小となり、ULCCで最高のCAGRもVietJetの3%止まり。かつて地域最大手が20%以上達成した時代からは様変わりしています。 

    フイルター: Narrowbody jets, passenger usage, years calculated as 1 July, company category Airlines. Southeast Asia is defined as: Brunei, Cambodia, East Timor, Indonesia, Laos, Malaysia, Myanmar, Philippines, Singapore, Thailand, Vietnam.
    出典:Cirium Fleets Analyzer

    この成長停滞は大量の注文残について疑問を投げかけます。東南アジアの航空会社は、1,366機のナローボディ旅客機を注文中であり、これは現役フリートの144%に相当します。世界全体の注文残の比率(現役ナローボディ機フリートに対する注文残)は66%と比べ極めて大きい水準です。東南アジア大手ULCCの場合、注文残は現役フリート比180%~300%超、これは約10年前と変わりません。下図はこの状況を示しています。なお、パンデミック中の一時駐機による現役フリート急減と注文残比率の膨張期間は除外しています。 

    フイルター: Narrowbody jets, passenger usage, years calculated at 1 July, company category Airlines. Southeast Asia is defined as: Brunei, Cambodia, East Timor, Indonesia, Laos, Malaysia, Myanmar, Philippines, Singapore, Thailand, Vietnam.
    出典:Cirium Fleets Analyzer

    東南アジア航空会社は、こうした注文残の引き取り(納入)が十分に進んでいません。業界を長く悩ませるサプライチェーンの課題もありますが、フリート成長が鈍化し始めたのはパンデミックやMAX運航停止よりも前です。東南アジアにおける旅客ナローボディ機の納入ピークは2014年(126機)で、2020年以降に納入された合計よりも多い水準です。 

    今後は拡大期というより、機材の更新サイクルによって納入が進むかもしれません。ただ、古い注文には問題もあります。たとえばAirAsiaは2011年にA320neoを200機発注しましたが、現時点でグループに納入されたのはわずか55機。発注時に有利な条件を引き出せたとしても、14年以上のエスカレーションが納入価格にどう響くかは課題でしょう。パンデミック中に再交渉したとしても、価格エスカレーションでコストは増え続けます。 

    こうした現象は東南アジアだけのものではありません。インド、サウジアラビア、ハンガリー(Wizz Airの本拠地)でも現役ナローボディ機フリートの200%以上の注文残が際立ちます。それぞれ成長要因は異なりますが、東南アジアULCCのこの10年の傾向をみれば、発注超過の可能性も指摘できます。 

    これはグローバルな過剰供給リスクには直結しません。OEMは世界的な需要に見合うペースで引き渡しできず、供給が追いついていないからです。しかし、こうした規模のバックログは、納入価格のエスカレーションなどによる負債リスクを拡大させます。成長が野心に追いついていない、超競争的な市場でその傾向は顕著です。 

    ※チャート注記: 
    対象はナローボディジェット(旅客用)、各年7月1日時点、会社カテゴリはエアライン。東南アジアの定義:ブルネイ、カンボジア、東ティモール、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム 

  • 2025年の商業航空:巡航中か、それとも上昇中か?

    MUFGの航空リサーチ責任者サイモン・フィンが、Cirium Ascend ConsultancyのMax Kingsley-JonesおよびSofia Zoidouとともに、最近のウェビナー「2025年の商業航空:巡航中か、それとも上昇中か?」に登壇し、商業航空の見通しについて議論しました。 

    航空業界は2025年において、明確な勢いを示しつつも、セクターの軌道を再形成する可能性を持つ新たな課題に直面しています。このウェビナーでは、業界の前進を形作る主要要因について、データとインサイトを交えて幅広く議論されました。 

    関税が業界全体に不確実性をもたらす 

    議論の多くは貿易緊張に集中し、関税が広範なリスク要因として浮上しました。Max Kingsley-Jonesは「関税は需要、供給、航空機価値すべてにリスクをもたらす」と述べ、北米市場を含む国際貨物便の需要が5月中旬以降、前年同期比で継続的に減少していることを指摘しました。 

    新造航空機の市場価値については、関税自体が価値を押し上げる可能性は低いとしつつも、納入数の減少が供給をさらに逼迫させ、セカンダリーマーケットの価値やリース料に上昇圧力を与える可能性があると説明しました。 

    サイモン・フィンは「航空業界ほどグローバル化された業界は他にない」と述べ、関税の影響がサプライチェーン全体に波及することを強調しました。メーカーは、コストを顧客に転嫁するか、自社で吸収するかの判断を迫られています。 

    生産回復の遅延が継続 

    OEM各社は生産拡大を進めているものの、依然としてパンデミック前の水準には達していません。サプライチェーンの制約により、完全な回復時期は2025年から2026年へと後ろ倒しになっています。 

    Maxは「2025年も目標に遅れている」と述べ、Ciriumは2025年の納入予測を3%下方修正。上半期には修正後目標の40%しか達成されていないと報告しました。 

    エアバスは特に注目されており、2025年上半期にA320neoファミリーを232機納入(年間予測の約38%)。CFM LEAPエンジンの供給がボトルネックとなり、約40機がエンジン待ちの状態です。 

    ボーイングの回復は比較的前向きですが、両社とも業界全体の生産能力を制限するサプライチェーンの複雑性に直面しています。 

    エンジンサプライチェーンのボトルネック 

    CFMのLEAPエンジンは新造機の多くを支えており、供給制約が納入遅延を引き起こしています。データによると、約40機がエンジン待ちの「グライダー」状態にあり、CFMは2025年上半期のA320neoファミリー納入の54%を占めています。 

    このようなエンジン関連の遅延は、航空会社の需要に応え、既存のバックログを解消しようとするメーカーの取り組みにおいて、さらなる制約要因となっています。

    次世代航空機開発は前進中 

    現在の課題がある中でも、業界は次世代商業航空機の開発に向けて前進しています。エアバスは2030年のローンチ、2038年の納入を目指して新型単通路機の開発を継続中で、CFM RISEオープンファンエンジンが有力候補とされています。

    サイモンは「2030年代初頭に向けて、エンジンメーカーが技術を進化させるのは妥当で現実的」と述べました。

    市場の動きもこれを後押ししています。2025年上半期のエアバスとボーイングの合算純受注は1,000機を超え、6月だけで300機以上が追加されました。これは航空会社の長期的な需要回復への信頼を示しています。 

    また、中国のComacの台頭も将来的な市場競争に影響を与える可能性があります。サイモンは「Comacは強力な立場にあるが、実現にはまだ多くの課題がある」と述べました。 

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  • 2025年上半期 貨物専用機市場の動向

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    Yinan-Qin
    Yinan-Qin

    Yinan Qin, Senior Aviation Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    トラフィックおよび収益

    2025年に入ってからの貨物便運航データを見ると、2月に発表された新たな米国関税の影響で、一時的に北米向けを中心に便数が急減しました。しかし、5月の関税発効前には前倒し出荷が進み、便数は急速に回復しました。貨物便は旅客便に比べて柔軟で、市場動向に即応するため、今後も関税に基づく調整が予想されます。 

    航空貨物の収益率は2020~2022年にかけて大きく変動しましたが、2023年後半以降は安定し、コロナ前と比べて約33%高い水準で推移しています。一部(欧州-北米間など)ではパンデミック前の水準に戻った一方、アジア-欧州・アジア-北米間の料金は容量制約と地政学的な影響で引き続き高止まりしています。米国関税の影響は不透明なままで、収益率がコロナ前に戻る兆しは当面見られません。 

    Note: (narrowbody/widebody freighters) * total = all Asia-Pacific and Europe to North America, and Asia-Pacific to Europe
    Source: Cirium Core

    フリート状況

    過去20年で貨物専用機の在籍数は増加を続け、2025年中頃にはワイドボディ機が約1,400機、ナローボディ機が約800機に達しています。ワイドボディ貨物機の増加は新造機や旅客機から貨物機への改造(P2F)、さらにはパンデミックで一時的に退役した機体の再稼働が要因です。 

    一方、ナローボディ貨物機は急増後に供給過剰となっています。ワイドボディ機の約13%と比べ、ナローボディ機は26%が保管中です。多くはボーイング737-800やエアバスA321で、需要が弱いことやリース先の確保難、高コストによるものです。エンジン単体のリース料高騰も、全機リースよりエンジン単位リースの傾向を加速させています。 

    Note: Widebody and Narrowbody Freighters only
    Source: Cirium Fleets Analyzer

    P2F改造の進行状況

    2025年のP2F(旅客機から貨物専用機への改造)は大きく減速し、特にボーイング737-800は15機のみ完了しました。年内の改造予定は約48機、主にワイドボディ機が中心です。改造待ちバックログは約320機に減少、主体は737-800、A321、A330、777-300ERです。ただし改造コスト増やSTC取得の遅延、需要の弱まりで一部機体は旅客運用に戻る可能性もあります。 

    Note: Widebody and Narrowbody Freighters only
    Source: Cirium Fleets Analyzer

    新造貨物機の注文

    2025年これまでに約25機の新造貨物専用機が発注され、主力はエアバスA350Fとボーイング777-200LRF。カタール航空は将来の777-8Fを最大規模で注文し、A350Fはリース会社を含め幅広い顧客に採用されています。 

    Source: Cirium Core; Press Release

    ボーイング767と777の生産は2027年で終了予定で受注枠には限りがあり、供給不足の懸念が出ています。ボーイング777Xの認証遅延やメーカーの納期遅延も市場に短中期の生産ギャップをもたらすと考えられています。 

    中古貨物機の市場価値とリース料 

    Ciriumの調査によると、主な20年機齢貨物専用機の市場価値は安定しており、特にワイドボディ貨物機が顕著です。唯一の例外がボーイング747-400Fで、エンジンの価値低下が影響しています。リースマーケットも同様の傾向で、パンデミック期の変動後は強含みです。 

    ワイドボディ貨物機への継続的な需要、新造貨物機の納期遅延、777 P2F改造認証の遅れ、メンテナンスコスト上昇、MROスロットの不足などが市場価値の下支え要因です。供給制約が緩和されるまで、この傾向が続くと見込まれます。 

    Note: Value as of June 2025
    Source: Cirium Valuation Analyzer

    展望 

    2025年上半期を通じて、世界の貨物専用機市場は主に供給制約下に置かれ、特にワイドボディ容量で顕著です。北米向けは関税問題による不確実性が最大となる一方、生産制限、P2F改造減速、高い利幅が当面の市場構造を規定します。全体として、供給のタイト化と適度な需要、ナローボディの供給余剰縮小という組み合わせが続くと予想されます。

  • ウィズエアーが主要航空会社の排出量ランキングで首位に

    ロンドン–(BUSINESS WIRE)–(ビジネスワイヤ) — 航空分析会社のシリウムが発表した最新のランキングで、世界で最も排出効率の高い航空会社にウィズエアーが選ばれました。シリウム・フライト・エミッションズ・レビュー は、航空会社の排出量に関する一貫したベンチマークに基づき、世界の航空会社のトップ20をランキングしています。

    同レポートによると、ハンガリーを拠点とする超格安航空会社ウィズエアーの有効座席キロメートル(ASK)*当たりのCO₂排出量は、53.9グラムと業界最低で、フロンティア航空(54.4グラム)、ペガサス航空(57.1グラム)が続きました。

    航空業界が2050年までに排出量ネットゼロを目指す中、このランキングは、公平な条件で比較できる検証済みのデータを提供します。ランキングのパフォーマンス評価は、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のISAE 3000「合理的保証」と、ロッキーマウンテン研究所(RMI)の公式認定を取得した、シリウムのEmeraldSkyプラットフォームに基づいています。

    CO₂/ASK排出量による主要航空会社トップ20のうち、上位3社はウィズエアー、フロンティア、ペガサス

    主要航空会社の世界トップ20が掲載されています。

    注目すべきは、アジアで首位のインディゴ、ラテンアメリカおよびカリブ海地域で首位のボラリス、そしてオーストラリアで首位のジェットスターのパフォーマンスです。

    世界最大手の航空会社のCO₂/ASK排出量

    シリウムのレポートは、ASKベースで世界最大の航空会社10社もランク付けしています。首位はライアンエアーで、サウスウエスト航空、デルタ航空が続きます。米国の主要航空会社や、ターキッシュエアラインズ、カタール航空、エミレーツ航空など長距離路線の航空会社も、ここに含まれています。

    業界全体での公平な比較を実現

    シリウムのCEOであるジェレミー・ボーウエンは、次のように述べました。「航空会社は初めて、一貫性のある検証済みの手法を用いて排出パフォーマンスを比較できるようになりました。EmeraldSkyは、公正な比較と有意義な進捗追跡を実現する業界標準のベンチマークを提供します。」

    この包括的なレビューは、二重に認証を受けた方法論でグローバルな運航状況を分析します。レポート全文には、以下の分野の広範な調査結果が含まれています。

    • グローバルカテゴリーのランキング:有効座席キロメートルあたりのCO₂排出量について、主要航空会社の上位20社と、世界最大手航空会社の上位10社をランキング
    • 地域別パフォーマンス:地域内および地域間路線における優秀な航空会社の内訳
    • 路線レベルの改善:最も効率性が向上した空港のペアを特定
    • オペレーションに関する洞察:機材構成、搭乗率、ルート最適化によるパフォーマンスの違いを明らかに

    このレビューは、業界全体の効率改善に役立つ包括的なオペレーションの洞察を提供し、サステナビリティの向上に取り組む航空関係者に実用的な情報を提供します。

    業界の新たな透明性基準の設定

    EmeraldSkyの方法論は、厳格な独立審査を経て、国際保証業務基準に基づく最高レベルの保証を達成しました。また、ロッキーマウンテン研究所のペガサスガイドラインに基づく認定により、気候変動に配慮した航空ファイナンスのアプローチの妥当性が確認されており、銀行や投資家が検証済みの排出データに基づいて情報に基づいた意思決定ができるように支援します。

    この標準化されたアプローチは、方法論に一貫性がなく有意義な比較ができないという、航空業界の断片化されたサステナビリティ報告の課題を解消します。この検証済みのベンチマークにより、航空会社は運航効率を正確に評価し、投資家は信頼性のある方法でパフォーマンスを評価し、企業は自信を持ってスコープ3排出量を報告できるようになります。

    四半期ごとの更新で説明責任を促進

    フライト・エミッションズ・レビューは四半期ごとに更新され、業界全体のパフォーマンスの変化とオペレーションの改善を追跡します。数百のデータポイントと複数のカテゴリーにわたる詳細な分析に基づくこのレポートは、航空業界の排出パフォーマンスに関する最も包括的な見解を提供します。

    ランキングと分析の全文を見る

    詳細な航空会社ランキング、地域別内訳、路線別分析、オペレーションに関する洞察を含むフライト・エミッションズ・レビューの全文は、cirium.com/flight-emissions-review からダウンロードできます。

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  • 貿易政策の転換が世界の航空業界をどう変えるのか

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。

    Joanna Lu
    Joanna Lu

    Joanna Lu, Head of Consultancy Asia, Cirium Ascend Consultancy

    新型コロナウイルスのパンデミックという激震が起きた際には、世界的に旅行がほぼ停止状態に陥りました。引き続いて航空業界は今、より長期的な影響をもたらす恐れのある別の種類の混乱に直面しています。主要国で顕在化する保護貿易主義や関税措置が、世界の経済的力学に多大な変化をもたらしています。これにより今後数年間、サプライチェーン、旅行パターン、航空戦略が再構築されていく可能性があります。

    コロナ禍が引き起こした危機は、急激ではあるにせよ時間的限界を伴うもので、その後は明確に回復への道をたどりましたが、貿易に関わる政策転換の影響はより緩やかであり、かつそれを反転させるのは困難である可能性があります。こうした変動が世界経済の長期にわたる分断の引き金となれば、路線網戦略、旅客需要からフリート配備や機材の経済性に至るまで、国際航空業界の構造に持続的な爪あとを残すかもしれません。

    コロナ禍の遺産と新たな分断化の波

    現在の状況は多くの点で、コロナ禍の教訓とそれに対する適応の延長線上にあります。新型コロナウイルスのパンデミックは、グローバルシステムに過度に依存することの脆弱性をあぶり出しました。結果として、企業や政府はより慎重になり、関税や貿易障壁、調達戦略の見直しなどを通じて、その慎重さを政策に反映しています。

    こうした環境は、航空業界にとって、以下の2つの重要分野で構造的な圧迫要因になりつつあるのかもしれません。

    1.旅客輸送――再定義されるプレミアム旅行

    企業の出張や従来型のビジネス旅行は、コスト意識の高い企業から引き続き厳しい視線が注がれています。プレミアム旅行の需要は全体的に回復していますが、その回復の大部分は、企業活動よりもむしろプレミアムレジャーが牽引しているようです。これは、欧米のいくつかの航空会社に顕著に見られる傾向です。

    しかしながら、Cirium FM Trafficの実際の旅客輸送データを見ると、ほとんどのグローバルネットワーク・キャリアにおいて、プレミアムキャビン(ファースト、ビジネス、プレミアムエコノミー)を利用する旅客の割合が、パンデミック前の水準に戻っていないことが判明しています。これは、企業出張の回復ぶりが依然として不安定かつ脆弱であることを示唆しています。

    主な観察事項:

    • シンガポール航空(SQ)はプレミアム輸送のシェアの点でキャリアグループをリードしたものの、2022年にはピークを迎え、2024年まで減少が続きました。
    • キャセイパシフィック航空(CX)は、2022年に一時的に上昇しましたが、その後プレミアムのシェアは2019年の水準に戻りました。
    • ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とデルタ航空(DL)のシェアは横ばいか、または低下しており、プレミアム旅行の比率の構造的な変化が示されています。

    グラフ:総輸送量に占めるプレミアムキャビンのシェア(2019~2024年)

    Source: Cirium Core

    これらの傾向は、運賃設定と客室収入の面では回復したものの、プレミアムの旅客数がなおパンデミック以前の水準を下回っていることを示唆しています。このことは、路線網計画、キャビン構成、ロイヤリティ・プログラム戦略にとって重要な意味を持ちます。

    2.航空貨物――地政学的影響の変化

    世界の製造企業は地政学的な不確実性を考慮してサプライチェーンを見直しており、航空貨物需要も変化しつつあります。企業が単一国での調達モデルへの過度の依存を弱めようとしている中、「フレンドショアリング」や「ニアショアリング」への関心が、特にハイテクや自動車の分野で高まっています。

    例えば、アップルがインドとベトナムで生産を拡大しているのは、中国中心の生産体制から脱却して多角化を図るという、より広範な傾向を反映したものです。こうした傾向は、航空貨物の動きにはまだ大きな変化をもたらしてはいませんが、アジア―アジア間やアジア―中東間における新たな輸送レーン構築に向けた貨物回廊の再編成の可能性を示唆しています。

    緩やかだが構造的な変化

    このような構造的な変化は徐々に展開する傾向があり、その影響がデータとして完全に可視化されるのは、しばらく時間が経ってからになるかもしれません。それでも、プレミアム旅行の構成比の変化やサプライチェーンの再構築といった初期の指標は、以下の通り、世界の航空業界の緩やかなリバランスが既に進行中であることを示唆しています。

    • 長距離の大陸間輸送から、よりリージョナルな運航へと軸足を移している
    • 機敏なフリート戦略、特に長距離向けシングルアイル機への依存度が高まっている
    • 貿易と政策の分断が進行する中、シナリオに基づいた計画立案の必要性が高まっている

    グラフ:平均区間距離(キロメートル)―定期旅客便と貨物便の比較(2019~2025年の各4月期)

    Source: Cirium Core

    旅客便の飛行距離は緩やかに増加し、2025年4月期には1,480kmにまで伸びて、2019年の水準をわずかに上回ると予測されます。貨物便の変動幅はより大きくなっていますが、引き続き長い平均区間距離を保っており、主要な貨物輸送回廊が当面は活発に動くことを示しています。こうした傾向から、関税が主導する分断化の影響が新たに顕在化しつつある中で、最終的には路線計画や機材配備への影響が重大になる可能性があります。

    ネットワーク戦略を評価する――地域的な転換

    航空業界における戦略転換を観察するひとつの方法は、路線ネットワークのパターンの変化を見ることです。  Ciriumのスケジュールデータによると、キャセイパシフィック航空、シンガポール航空、ユナイテッド航空を含む主要航空会社数社が2021年以降、5,000km未満の路線の運航シェアを伸ばしています。

    これは、マクロ的な不確実性の時代において、リージョナルフライトが低リスクで管理し易い選択肢になっているという、より広範な傾向を反映しています。特にアジアを拠点とする航空会社にとって、このデータは、回復力を高め、地域の成長を取り込むための基礎として、アジア域内路線に戦略的に方向転換することを示唆しています。

    例えば、キャセイパシフィック航空は、2024年通期で99億香港ドルの利益を計上し、2年連続の黒字になったと報告しました。その主な要因は、特に中国本土や他のアジア地域との地域的な結びつきを強化したことにあります。キャセイは、5,000km未満のフライトの割合を増やすことで運航効率を改善し、長距離路線の市場が依然として不安定であるにもかかわらず、大きな回復ぶりを示しました。

    グラフ:選択されたネットワーク航空会社別の定期リージョナル便(5000km未満)のシェア

    Source: Cirium Core

    このシフトは以下のように、単なる戦術的なものではなく、戦略的なものです。

    • 航空会社がリージョナル路線を通して、規制や需要の変化に即応できるようになる
    • 運航コストが低減する
    • 域内の貿易や観光の成長と合致する

    その恩恵を最も享受できる立場にあるのは、格安航空会社やリージョナル航空会社かもしれません。他方、長距離路線のフライトを運航する航空会社は、ネットワークの適正化とフリート構成の見直しを引き続き迫られる可能性があります。

    航空機の影響――需要だけでなく機材配備も

    こうしたシフトが機材価値に完全に反映されるまでには時間がかかる可能性はあるものの、以下の通り、その運航上の影響は既に表れています。

    • シングルアイル機、とりわけ長距離型のバリアント(派生型)は、国内路線とリージョナルな国際路線の両方に柔軟に対応できるため、ますます重要性が増している。
    • ワイドボディ機、特に旧型機は、長距離路線の市況回復が明確にならなければ、安定した配備の達成が困難になる可能性がある。

    明確な価格トレンドがない場合でも、保守的な長距離路線のフリート計画を立てて、配備戦略の適応性を高める必要性は高まっています。

    未来を見据えて――業界のステークホルダーへの主要な問い

    より断片化、地域化された世界への転換は、以下のような重大な問題を提起しています。

    • リージョナルおよび長距離市場において、自社のネットワーク戦略はどの程度多様化されているか?
    • 自社のフリート計画は、長引く長距離輸送需要の回復に臨機応変に対応できるか?
    • 貿易政策のシフトは、自社の調達、パートナーシップ、提携関係にどのような影響を与えているか?

    政策に相違があり、同盟関係が変化する時代においては、適応能力がますます競争上の優位性を決めることになるでしょう。航空業界の戦略には、旅行者の行動だけでなく、より広範な政治・経済動向も反映されなければならないのです。


    私たちCiriumは、フライト、スケジュール、フリートのデータを通して、これらの変化するパターンを追跡し続けています。いくつかのトレンドは、完全に具体化するまで時間がかかるかもしれませんが、今日のシグナルが指し示すのは、グローバルなリーチよりもリージョナルな俊敏性の方がより重要になるような未来、また戦略的な柔軟性が競争上の差別化要因の中核となるような未来なのです。

    私たちは、シナリオベースの分析とデータに基づく洞察的知見を提供し、お客様が不確実性を乗り越えて確信を持って計画を立てられるよう支援します。

  • 次世代エンジンの課題

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    YIRU ZHANG
    Yuri Zhang

    Yiru Zhang, Senior Valuation Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    PW1100Gフリートにまつわる根深い問題

    航空業界がサプライチェーンの混乱や信頼性への懸念を引き続き乗り越えようとする中、新世代エンジンを取り巻く課題が依然として重要な焦点となっています。2025年3月10日現在、PW1100Gを搭載した600機以上のA320ファミリーが駐機・保管されています。グローバルフリートに占める割合は35%となっています。最悪な時期は脱したとの見方もありますが、なお注意が必要です。対照的に、LEAPエンジン搭載の駐機中のフリートは少数です。季節的なトレンドに沿って減少を続けており、稼働フリートについてはより安定した軌道上にあることを示しています。

    RTXは、GTFエンジンの補償金として2024年に11億ドルを支払ったとしています。2025年にはさらに11億~13億ドルの支払いが予想されると報告しており、継続的な駐機・保管による経済的負担を強調しています。これらの支払いは、航空機の地上離着陸(AOG)事故が発生した際に行われるもので、航空会社の運航に持続的な影響が出ていることを示しています。

    出典:Cirium Core、2025年3月10日(航空機は連続7日間使用されないと駐機中と分類されるため、短期間のうちに再集計の対象となる)

    エンジン生産と納入の制約

    プラット・アンド・ホイットニーの親会社であるRTXは、2025年に大型商用エンジンの生産が14%増加し、予備品プールへの追加と比較して取り付け台数がわずかに増えることを示唆しています。Cirium Ascend Consultancyの分析に基づく2025年の納入予測は、2025年の納入目標を達成するべく航空機メーカーをサポートするという点から考えると、RTXや競合他社の発表と比較して下振れリスクを示しているように見えます。

    エンジン製造時の粉末冶金の問題は今後1年半から2年以内に概ね解決される見込みですが、その他の技術的課題やサプライチェーンの問題は依然として残っています。2030年まで続く次世代エンジン技術関連の不確実性により、航空会社は、CFM56とIAEを搭載した機材を当初計画よりも長期間にわたって保持することを余儀なくされています。この傾向は、現在よりも低い価格帯ではあるにせよ、2030年代までは旧世代エンジンの需要が持続することを示唆しています。

    シングルアイル機の市場価値の推移

    主なシングルアイル機のフリート加重平均での市場価値を2019年12月時点を基準に指数化して分析したところ、以下の通り、いくつかの注目すべき傾向が浮き彫りになりました。

    出典:2019年12月を基準に指数化された、Cirium Coreによる現行市場価値(フリート加重、一定機齢ベース)

    A320ceoと737-800が最も大きな上昇傾向となっています。2025年第1四半期には、ミッドライフ(中程度の機齢)の737NGの価値が上昇しました。A320ceoファミリーについては現在評価中ですが、A320とA321は共に、他のミッドライフのナローボディ機と同様の安定した傾向を示すと予想されます。

    旺盛なエンジン需要に支えられ、旧世代機材の価値は引き続き堅調に推移しています。データによれば、2023年および2024年までのリース延長の水準は、前回の市況サイクルの後期よりも高くなっています。CFM56エンジンとIAEエンジンについては、需要が今後3年間は堅調に推移する一方、新規生産が増加し、より多くの機材がパーツアウトを実施することに伴い、供給上の制約が緩和される可能性があります。マクロ経済の状況や旅客需要が軟化する場合には、このスケジュールが早まる可能性がありますが、今のところ市場は回復力を維持しています。

    増産傾向にもかかわらず、PW1100Gに関連した混乱は10年先まで続くとみられ、航空会社やリース会社の間で戦略的なフリート計画を立てる必要性は高まっています。

  • 航空会社によるACMIの徹底活用

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。

    Toshimitsu Sogabe, Aviation Consultant, Cirium Ascend Consultancy

    航空会社にとって機材、乗務員、整備、保険(ACMI)のリースは、運航面の課題に対処する上でますます不可欠な戦略となっています。新造機材の納入遅延、部品不足につながるサプライチェーンの制約、整備ターンアラウンド時間の長期化、全体的な運航上の制限といった要因が、ACMIソリューションに対する需要を押し上げ続けています。このような状況下で、私たちは、ACMI専門プロバイダーのフリートを徹底して活用している航空会社を評価してみました。

    以下の表には、2024年7月(北半球の夏)時点でACMIプロバイダーからの旅客フリートを多く保有していた航空会社上位10社が列挙されています。注意していただきたいのは、Cirium Fleets Analyzerで非ACMIプロバイダーとして分類されている”伝統的な”航空会社は含まれないということです(例えば、フィンエアーは自社保有のA330をカンタス航空にウェットリースしていますし、エア・バルティックはA220をルフトハンザ・グループにウェットリースしています)。

     AirlinesJul-2024Fleet from ACMI
    1Lufthansa Group35E190 E1/E2, CRJ1000, A320
    2THY (Ajet)25A320, A321, 737 Max 8
    3TUI Group24A320, 737-800, 737 Max 8
    4VivaAerobus21A320
    5SAS20CRJ900
    6Indigo16A320
    7Air France-KLM Group13E190 E1, A319, A320, A330-200
    8Condor9A320, A321
    8Wizz9A320, 737-800
    10Jet28A320, A321
    Others118
    TOTAL 298

    出典: Cirium Fleets Analyzer

    上記のリストには、フルサービスキャリア、格安航空会社(LCC)、リージョナル航空会社、貨物を運ぶ航空会社など、多様な組み合わせの航空会社が反映されています。

    これとは対照的に、2025年1月(北半球の冬)時点の上位10社には、ACMIの専門プロバイダーからのフリートを増やしたり減らしたりする航空会社がある一方で、完全にリストから外れる航空会社もあり、順位に変動が見られます。

     AirlinesJan-2025vs Jul-2024
    1VivaAerobus243
    2Indigo182
    3Lufthansa Group23-12
    4SAS15-5
    5THY (Ajet)13-12
    6Condor7-2
    7Air Peace66
    7Air France-KLM Group6-7
    9Saudia4-1
    9Air Arabia41
    9El Al41
    9Azerbaijan Airlines41
    9PSA Airlines41
    Others76-69
    TUI Group2-22
    Jet20-8
    SunExpress0-7
    TOTAL204-94

    出典: Cirium Fleets Analyzer

    ルフトハンザ・グループ、ターキッシュ・エアラインズ(子会社のアジェを通して)、エールフランス-KLMグループ、スカンジナビア航空などのフラッグ・キャリアがACMIプロバイダーのフリートについて、2025年1月にもその数をやや減らしつつ活用を継続している一方で、レジャーおよびツアー系の運航会社がそのようなフリートの使用を大幅に縮小または完全に廃止していることは注目に値します。最も顕著な例はトゥイ・グループです。2024年7月時点では22機の機材を運航していましたが、その大半を2025年1月までにACMIプロバイダーに返却しました。同様に、2024年7月時点ではACMIプロバイダーのフリートを組み込んでいたJet2とサンエクスプレス(それぞれ8機と7機)は、2025年1月までにACMIプロバイダーから調達したフリートの使用を完全に中止しました。これについては、レジャーおよびツアー系運航会社の繁忙期と閑散期の需要の変動が大きいことを考えれば理解できます。これに対し、インディゴは、プラット・アンド・ホイットニー製GTFエンジンの問題に起因する自社所有機およびリース機の継続的な運航停止を補うため、ACMIプロバイダーからのフリートを維持(実際には若干増加)しています。

    Operator RegionJul-2024Jan-2025Jan-2025 vs
    Jul-2024
    Europe1998744%
    Africa312374%
    Asia Pacific2632123%
    Latin America2435146%
    Middle East1320154%
    North America57140%
    TOTAL29820468%

    出典: Cirium Fleets Analyzer

    上記のグラフは、ヨーロッパが、ACMIプロバイダーからのフリートの利用の面でなお最大の市場であることを明確に示しています。興味深いのは、他の大陸に比べて航空部門が比較的小規模であるにもかかわらず、アフリカが第2位の市場になっていることです。アジア太平洋およびラテンアメリカ市場におけるACMI需要の大部分は、インディゴとビバエアロバスが牽引しています。このため、両社を除外すると、これらの2地域におけるACMIプロバイダーからのフリートの使用実績が大幅に減ることになります(トルコは、Cirium Fleet Analyzerでは「ヨーロッパ」に分類)。さらに、ヨーロッパの航空会社は、2025年1月にはACMIプロバイダーからのフリートの使用を大幅に減らしています。 一方、他の地域は全体的に増加していますが、アフリカだけは例外で、わずかに減少しています。これは、航空交通量の季節変動(南半球の国々を含む)や、インディゴのケースで見られたように、ACMIの使用を余儀なくさせる季節以外の課題など、複合的な要因によるものと考えられます。

    上述の通り、”伝統的な”航空会社が提供するウェットリースについては評価していないため、この評価が、市場におけるすべてのウェットリース需要の影響を完全に捕捉したものではないという点に留意することが重要です。しかしながら、その範囲内であっても、ACMIの活用に関する航空会社の要件や運航戦略には、明確な違いが見られます。

  • APACにおける2024年の飛行機利用を分析する――明るい兆しと残された課題

    Pang Yee Huat
    Pang Yee Huat

    Pang Yee Huat, Solutions Consultant, Cirium

    2024年はアジア太平洋地域における飛行機利用の面で特筆すべき年となり、とりわけ国際路線の著しい成長が見られました。今年はどの市場がトップパフォーマーになるでしょうか?

    APACにおける国別国際線旅客輸送量の上位10路線

    APAC’s Top 10 International Country Routes by Passenger Traffic Jan – Aug 2024

    ソース:Cirium FM Traffic, data filed Nov 4, 2024

    2024年の最初の8ヵ月間、日本は最も混雑する目的地の一つであり続け、韓国、中国、台湾を結ぶ路線が旅客輸送量のトップ3にランクインしました。日本と韓国、台湾を結ぶ路線の旅客数が2桁台の力強い伸び率を示した一方で、中国と日本を結ぶ路線の旅客数は25%減という顕著な下落率となりました。この減少ぶりは、座席キャパシティの21%減という数字にも表れています。全体として、中国発着の国際線座席キャパシティは、新型コロナウイルスのパンデミック前の2019年の水準から28%減と回復が遅れ続けています。中国に接続するすべての主要路線で減少が見られ、旅客輸送に関する課題を引き続き提起しています。 2024年の最初の8ヵ月間、日本は最も混雑する目的地の一つであり続け、韓国、中国、台湾を結ぶ路線が旅客輸送量のトップ3にランクインしました。日本と韓国、台湾を結ぶ路線の旅客数が2桁台の力強い伸び率を示した一方で、中国と日本を結ぶ路線の旅客数は25%減という顕著な下落率となりました。この減少ぶりは、座席キャパシティの21%減という数字にも表れています。全体として、中国発着の国際線座席キャパシティは、新型コロナウイルスのパンデミック前の2019年の水準から28%減と回復が遅れ続けています。中国に接続するすべての主要路線で減少が見られ、旅客輸送に関する課題を引き続き提起しています。

    日本は依然として最も混雑する目的地の一つだったのですが、中国の国際線座席キャパシティはパンデミック前の2019年の水準から28%減っており、回復が遅れ続けています。

    一方、ベトナム―韓国線は順調な成長ぶりを示しています。その旅客輸送量は15%増加し、2024年1月から8月にかけての座席キャパシティは2019年同期比で11%増加しました。この8ヵ月間には、ニャチャン―清州、ダラット―釜山、フーコック島―清州、フーコック島―釜山、カントー―ソウルの5路線が新たに開設されました。この市場ではベトジェットエア(VietJet Air)が圧倒的な存在感を示しており、総座席数390万席のうち110万席を同社が提供しています。これに続くのは、大韓航空の57万8,000席、次いでベトナム航空の50万席です。

    同様の成長ぶりが見られたもう一つの市場はインド―アラブ首長国連邦線で、2019年から2024年にかけて旅客輸送量と座席キャパシティがともに15%増加しました。この成長の原動力となった要素は、インディゴ(6E)とエア・インディア・エクスプレス(IX)がそれぞれ55%増と21%増の座席キャパシティを投入したことと、エア・アラビア・アブダビ(3L)の新規参入の結果、アラブ首長国連邦(UAE)発インド行き路線に40万7,000席がさらに加わったことです。

    APACにおける国別国際線座席キャパシティの上位10路線

    APAC’s Top 10 International Country Routes by Seat Capacity Q1 (Jan – Mar) 2025

    ソース:Cirium SRS Analyser, data filed Nov 4, 2024

    2025年第1四半期のアジア太平洋路線における予定座席数の上位10路線を分析すると、ほとんどの主要市場がパンデミック以前の水準を突破し、現在は成長段階にあることが明らかになります。注目されるのは、韓国―ベトナム線やインド―アラブ首長国連邦線といった路線が力強い上昇傾向を維持していることです。この2路線の座席キャパシティはそれぞれ27%と20%、増加しています。

    しかし、中国はこの上昇傾向の例外になっています。タイ、韓国、香港への主要国際路線は2019年の水準をなお大幅に下回っており、タイへの輸送量は依然として22%減の状況です。回復の可能性はあると思われますが、今後も市場の需要や国家政策の変更、さらに広範な経済条件を含め、さまざまな要因によって実績は大きく左右されるでしょう。とはいえ、適切な条件が整ってくれば、緩やかな回復が見えてくる可能性があります。

    中国発の主要国際路線は2019年の水準を大幅に下回っています。回復は市場の需要、政策変更、より広範な経済状況などの点で適切な条件が整うかどうかにかかっています。

  • データの活用:CiriumのEmeraldSky Analyticsでフライトの排出傾向を解明する

    フライトに起因する排出ガスが環境に与える影響を理解することは、航空業界のステークホルダーにとって極めて重要です。最先端のフライト排出量分析プラットフォームであるEmeraldSkyの最新データは、現在のフライト排出トレンドにまつわる包括的概要を提供します。注目すべきは、イギリス国内市場の1フライトあたりの排出量が過去5年間で18%増加していることです。同様に、イギリス―日本線のフライトは、主にロシア空域の閉鎖に伴う飛行時間の延長により、1フライトあたりの排出量が21%増加しました。

    こうした統計は、現在の業界慣行に影響を与える要因が複雑に絡み合っていることを浮き彫りにしています。ロシア空域の閉鎖により、多数の航空会社がより長距離の路線を選択せざるを得なくなり、結果として燃料消費量、ひいては排出量にも影響を及ぼすようになっています。しかしながら、この課題は、効率性の低い旧型機材の退役を含めた技術の進歩によって解決されつつあります。特に英米間の大西洋横断路線における次世代ジェット機への移行により、2024年夏には1フライトあたりの排出量が新型コロナウイルスのパンデミック前と比較して7%減少しており、定期便の数の全体的な増加にもかかわらず、CO2総排出量も減少したのです。

    特に英米間の大西洋横断路線における次世代ジェット機への移行により、2024年夏には1フライトあたりの排出量が新型コロナウイルスのパンデミック前と比較して7%減少しており、定期便の数の全体的な増加にもかかわらず、CO2総排出量も減少したのです。

    航空業界内の専門家の意見をみても、これらの結果が裏付けられています。Ciriumの市場開発担当シニアディレクターであるAndrew Doyleは、排出量を軽減するために革新的な技術を統合することの重要性を訴えています。

    Andrew Doyle
    Andrew Doyle

    航空業界は今後、変革の時を迎えます。航空機の効率性を高め、代替燃料を追求するためには、研究開発への継続的な投資が不可欠となります。ステークホルダーは、これらの洞察的知見を活用して事業戦略に磨きをかけつつ、地球環境の目標に沿った持続可能な慣行に焦点を当てることが求められるのです。

    航空業界が進歩を遂げる中、そのようなトレンドを理解することこそが、企業、旅行者の双方にとって重要になります。情報収集力と適応力を維持することで、企業は複雑なフライト排出量の問題に対処し、事業の成長と環境に対する責任のバランスを確保することができるのです。


    EmeraldSky logo representing aircraft and flight emissions

    本稿で使用したEmeraldSkyのデータの概要については、Emissions Calculations Overview (排出量計算の概要)をダウンロードしてください。

    その方法論についてより深く知りたい方は、Cirium.com/EmeraldSkyをご覧いただくか、またはこちら から当社専門家との面談をぜひご予約ください。

  • 航空路線の再編――グレーターベイエリアに注目する

    Aircraft Appraiser of the Year
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    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。

    Lionel Olonga
    Lionel Olonga

    Lionel Olonga, Senior Valuations Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    香港空港管理局は、周辺地域の競争力を高めることを目的として、航空会社に対し新規路線の開設と増便を奨励する施策を戦略的に導入しています。しかしながら、この手法は前向きな動きではあるものの、現地の人手不足と地域内の連携強化という広範な課題に対処するには不十分であることを証明するかもしれません。これらの問題をさらに深刻にしているのが、ロシア空域の使用制限による不公平な競争を理由に、一部の外国航空会社が中国発の運航を取りやめたことです。香港、マカオ、広東省を含むグレーターベイエリア(GBA=大湾区)の空港にまつわるこうした不利な状況は、この地域の当面の見通しに疑問を投げかけるものとなっています。

    さまざまな改善努力にもかかわらず、香港国際空港(HKG)のキャパシティは、新型コロナウイルスのパンデミック発生前の水準を下回る状態が続いています。Ciriumのデータによると、2024年第2四半期の香港出発便の座席キャパシティは、2019年同期と比べて29%減少しています。HKGは全地域向けにおいて大幅な減便に見舞われており、特にアフリカ、ヨーロッパ、オーストラレーシアへの路線の減便が最も顕著となっています。こうした苦境は、政情不安、経済的圧力、近隣空港との競争激化など、さまざまな要因に起因すると考えられます。それでも、最大の障害はやはり慢性的な人材不足です。

    輸送キャパシティが完全に回復する時期の予測を下方修正し、従来の2024年末ではなく2025年第1四半期の回復を目指すとしています。この遅れはパイロットと客室乗務員の不足に起因するものです。加えて、地上ハンドリングサービスの提供業者も人員不足に悩まされており、そのために外国航空会社のフライトのハンドリングを断ったり、過度に高いサービス料を課したりしているのです。このような労働力不足は香港の接続性を著しく阻害し、世界の航空関連産業における香港の全体的な回復をも妨げています。結果として、航空券の価格は高止まりし、旅行者が利用できる発着路線の選択肢も限られることが予想されています。

    GBAの主要空港の出発便座席数

    The departing seat capacity of major GBA airports

    Source: Cirium Core

    主要2空港である広州白雲国際空港(CAN)と深圳宝安国際空港(SZX)の座席キャパシティは、国内市場の力強い回復により、パンデミック以前の水準を上回りました。CANの全体的な便数および座席数は増加しており、特にアジア市場向けの伸びが顕著となっています。しかし、北米とオーストラレーシアへのフライトは著しく減少しています。有効座席キロ(ASK)の推移を見ると、CAN発着の大陸間輸送の回復がまだ遅れていることが示されています。SZXは、国際ハブ空港としての重要性が増していることを反映し、アジア、ヨーロッパ、中東線を中心にフライトが大きく伸びています。しかし、オーストラレーシア、北米各線のフライトは急減しました。

    GBA主要空港の有効座席キロ(ASK)ベースの座席キャパシティ

    GBA主要空港発フライトの地域別キャパシティ

    Flight capacity by region from major GBA airports

    Source: Cirium Core

    香港はグレーターベイエリア(GBA)内での競争激化に直面しています。国際航空会社が他の地域ハブ空港への直行路線を選択する傾向が強まっているため、トラフィック(輸送量)が香港から流出している可能性があります。この課題に香港が対処するためには、航空会社に運航を維持してもらうべく、財政面で魅力的な環境を用意することが不可欠です。この戦略において鍵となる要素は、パイロット、客室乗務員、地上ハンドリング担当者を含めた現在進行中の人員不足に対処することです。香港政府が航空セクターのために導入した労働力輸入スキーム(Labour Importation Scheme)は、こうした人的資源の目先の制約を緩和し、地域における香港の競争力を支えるものと期待されています。CANとSZXはともに2019年第2四半期から2024年第2四半期にかけて成長したことを示しており、CANは6.85%、SZXは18.39%という大幅な輸送キャパシティの増加をそれぞれ記録しています。これは、両空港が地域の主要ハブ空港としての地位を高めていることを示唆しています。深圳の急成長は、香港から市場シェアを奪う可能性のある戦略的転換を示しているのかもしれません。とはいえ、両空港とも、地政学的緊張の影響を反映して、北米へのフライトは減少しています。全体としてみれば、これらGBAの2空港の拡大ぶりは、グローバルな力学の変化によってもたらされる課題に直面しながらも、両空港が地域における重要性を高めていることを裏付けています。

  • “静かな”ファーンボロー航空ショーでツインアイル機が際立ちを見せる

    Aircraft Appraiser of the Year
    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。
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    Max Kingsley-Jones, Head of Advisory, Cirium Ascend Consultancy

    7月下旬に開かれたファーンボロー航空ショーでは、計260件の新規受注と発注コミットメントが発表されました。 ショーでの発表数としては近年で最も少ない規模だったのですが、Cirium Ascendでは、すべての新規取引の合計額は260億ドル(フルライフ価値ベース)に近いと推定しています。

    ショーで発表された取引の大半は”ビッグ2″メーカーに対するもので、その数は245機に上ります。残りの15機は、リージョナル・ターボプロップ機(ATRとデ・ハビランド・エアクラフト)でした。メインライン向け航空機の発注および発注コミットメントの3分の2(164機)は、エアバスの帳簿に計上されていました。

    Ciriumのフリートデータによると、今回のファーンボロー航空ショーでは、ワイドボディ機関連の発表が比較的多くなりました。総受注・コミットメント数はツインアイル機(貨物機を含む)がシングルアイル機を少し上回り、その内訳は126対119となっています。ツインアイル機の発注・コミットメントの総額は188億ドルです。これに対してシングルアイル機は70億ドルでした。

    ファーンボロー航空ショーにおけるエアバス、ボーイングの航空機カテゴリーおよび金額別の発表内容

    bar chart: Farnborough Airbus/Boeing announcements by aircraft category & value

    Source: Cirium Fleets Analyzer, *Includes factory freighter. Data includes firm orders and commitments to order

    今年、ツインアイル機市場が重視されているのは、シングルアイル機の生産ライン全体にはびこる過度に長いリードタイムを考えれば当然のことです。航空関連業界ではコロナ禍後、ツインアイル機の受注がやや少なくなっていたのですが、現在では10年後にかけて受注残の数が伸び始めています。

    エアバスとボーイングは、合わせて91件の新規確定受注と154件の受注コミットメントを発表しました。

    ボーイングは、ツインアイル機と貨物専用機(フレイター)の発表比率が比較的高いため、金額ベースではライバルのエアバスに肉薄しています(シェア44%)。

    ショーにおいて総機材ユニット数の点で最大規模の発表を行ったのは、サウジアラビアの格安航空会社フライナスです。同社は、A320neoファミリーの75機とA330-900の15機、合計90機の購入を発表しました。いつも多くみられる中東系航空会社の発表は、今回は顕著に少なくなりましたが、カタール航空は3月に777-9を20機発注していたことを明らかにしました。 ほかの中東系からの発表は、エミレーツ航空のみでした。同社は777F(新造フレイター)を新規に5機、確定発注しています。

    それでも、アジア太平洋地域の機材オペレーターがそれを補いました。4社合わせて106機の航空機の発注を発表し、ショーにおける取引ユニット数の43%を占めました。この地域のユニット数の中には、JAL(A321neo・11機、A350・20機、787・10機)、大韓航空(777-9・20機、787・20機)、ベトジェットエア(A330-900・20機)、ドルック・エア(A320neoファミリー・5機)が含まれています。

    ファーンボロー航空ショーにおけるエアバス、ボーイングの地域および航空機カテゴリー別の発表内容

    bar chart-Farnborough Airbus/Boeing  category17

    Source: Cirium Fleets Analyzer, *Includes factory freighter. Data includes firm orders and commitments to order

    世界の他地域の航空会社からの取引発表は、あまり目立ちませんでした。ヨーロッパからの発表は2件のみで、うち1件はヴァージン・アトランティック航空のA330-900・7機、もう1件はルクスエアの737-10 Max・2機となっています。アメリカの取引は1件のみでした。マイアミを拠点とするナショナル・エアラインズが、777F・4機の発注コミットメントを発表しています。ゴル航空とアビアンカ航空の親会社であるアブラ・グループは、ラテンアメリカ地域で唯一、A350・5機の発注コミットメントを発表しました。アフリカでは、リビアのベルニク・エアウェイズ(Berniq Airways)が、6機のA320neoファミリーを発注しました。

    今年のショーでは、伝統的に多いリース会社からの発表はあまりありませんでした。マッコーリー・エアファイナンス(Macquarie AirFinance)のみが発注(737-8Max・20機)を発表しています。

    エンブラエルは、ショーでの商業的な受注の発表こそありませんでしたが、E-Jet E1コンバージョン貨物機、E2旅客機バリアント、C-390エアーリフターを展示し、目を引きました。C-390エアーリフターについては、オランダとオーストリアから受注があったとしています。ブラジル系OEMの商業部門のCEOであるArjan Meijer氏はショーの中で、正式発表はしていないものの、少なくとも300機の航空機に関する様々な取引について現在交渉中であると述べました。

  • Ascend Consultancyによる今後の展望:A330neoが中国にやってくる?―適合性の分析 

    Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

    Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


    Yuanfei Zhao (Scott) Aviation Analyst
    Yuanfei Zhao (Scott) Aviation Analyst

    Yuanfei Zhao (Scott), Senior Aviation Analyst, Cirium Ascend Consultancy

    最近の市場動向をみると、人気の高いツインアイルタイプのA330ceoの後継機であるA330neoが、中国に導入される可能性が出てきています。ブルームバーグが6月に発表したリリースによると、エアバスと中国の航空会社の間で、100機以上のA330neoの売却に向けた話し合いが進められています。エアバスはこの協議についてまだ正式に認めていませんが、市場関係者はさらなる進展を待っているところです。

    この機種が中国市場に導入される可能性に今、関心が集まっているのです。コストと性能の観点から言えば、A330ファミリーは主に短・中距離の高密度路線向けに設計されており、A350のような類似タイプの機種と比べて競争力のある価格設定となっています。Ciriumのデータでもこうした特性が示されています。トレント(Trent)のエンジンを搭載したA330-900neo(2024年1月製造、追加の仕様なし)のフルライフの推定市場価値は約1億700万ドルです。これに対し、A350-900は同様の条件で1億5800万ドルとなっています。

    この価格戦略により、A330neoは長距離路線で運航できるにもかかわらず、特定の市場セグメント内において、単価、運航経費、性能バランスの点で有利に位置づけられています。

    このような特徴は、A350や787、777のような長距離路線を最大のターゲットとする他の主要ツインアイル機とは明らかに異なります。

    下のグラフは前述の航空機について、2015年以降、中国系航空会社による中国発全便の運航機種ごとの平均ブロックレンジ(航空機が動き出してから停止するまでの距離)を示しており、国内線と国際線の両方を網羅しています。

    中国系航空会社のA330ceoフリートの平均ブロックレンジは2,250kmである一方、A350は2,530km、787は2,920km、777は3,780kmとなっています。

    このことは、A330ceoフリートが中国の他の主要ツインアイル機と比べて平均的に短い路線で運航されているというだけではなく、中国の航空会社が運航する他の長距離路線向け機種の平均ブロックレンジも、ceoフリートと比較してそれほど長くないことを裏付けています。

    2015年から2023年にかけて中国の航空会社が運航したフライトを分析したところ、5,000kmを超えるフライトはわずか14%であることが判明しました。このような状況を踏まえると、中国の航空会社にとっては、大半の短・中距離路線でA330をより多く利用することが、経済的には賢明であるように見えます。

    フリート計画の視点から見ると、中国で稼働中および駐機・保管中の212機のA330ceoのうち、33機(全フリートの15%)の機齢が現在15年以上となっています。

    これらの機材は、10年後までにフリート計画に基づく決断を迫られる可能性が高くなっています。加えて、当該A330ceoフリートの約22%は、中国国外で登録された中国系ファンドの支援を受けるリース会社を含む外国リース会社との間でオペレーティングリース契約を結んでいます。

    リース満了時のリース機材の運命は、不確実性に大きく左右されます。リース会社は、リースを延長するか、より有利な市場に機材資産を移転させるか、より良い価値を引き出すために機材を退役させてパーツアウトするか、あるいは市場の実勢に基づいて旅客機から貨物機に転換(コンバート)するかについて、柔軟に決定できるからです。

    要約すると、A330ファミリーの機材のコストと性能の特性は中国市場に合致しており、資産単価、運航コスト(座席数ベース)、機種・ルート適合性のバランスの取れた組み合わせを提供しています。中国系航空会社が長期的にA330フリートを維持または拡大するつもりであれば、新世代のneoを想定した計画立案に着手することが望まれます。しかし、その際の主な考慮事項としては、機材納入枠の不足とOEMの生産率の制約が挙げられます。この制約があるため、10年後までにA350や787といった機材の納入枠を確保することが事実上不可能になってしまっているのです。A330neoのオーダーブックが比較的少ないことから、この10年間に納入できる枠はなお一定程度、確保できる可能性はありますが、その数は多くないとみられます。

    その結果、新型A330neoがリプレースまたは納入増を通して中国系航空会社の大規模なフリートとして定着するのは、受発注契約が速やかに確定、成立したとしても、10年後以降になるかもしれません。