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航空業界のグリーンウォッシュ対策:透明性が高く正確な排出量測定を追求する


欧州委員会による最近のグリーンウオッシュ対策をご紹介します。

JIm Hetzel
Director of Product Marketing
Wilson Caulfield
Head of Sales, EMEA

欧州委員会が発表した2024年4月30日付プレスリリースによると、同委員会はこのほど、いわゆるグリーンウォッシュ(環境配慮を装って誤った印象を与えること)を行った航空会社20社に対し、環境に関する不当な宣伝行為を働いたとして断固たる措置を取りました。このリリースには、「欧州委員会および各国の消費者保護当局は、誤解を招くグリーンウォッシュを行った航空会社20社に対する措置を開始した」と記されています。これらの航空会社は、自社の環境への取り組みについて誇張したり、虚偽の説明をしたりすることで、消費者や利害関係者に誤解を与えていたことが判明したのです。この厳しい対応は、規制当局による監視を強化するとともに、航空業界が温室効果ガス排出量について、透明性のある客観的な測定方法を採用することが急務であるという現状を浮き彫りにしています。

グリーンウォッシングが意味するもの

グリーンウォッシュは航空会社の評判を落とすだけでなく、社会的信用や投資家からの信頼も損ないます。そのような行為は、持続可能性への真っ当な取り組みを阻害します。財政的、法的な影響も甚大になる可能性があります。2050年までに排出量実質ネットゼロの目標を達成しなければならないという重圧が高まっている航空業界にとって、深刻な結果を招くのです。効果的で信頼のある気候変動対策は、正確なデータと透明性のある報告を提出できるかどうかにかかっています。

独立した監視システムの必要性

こうした問題に対処し、すべてのステークホルダーからの信頼を醸成するために、航空業界は、信頼度が高く科学的に正確な排出量データを保証するような独立した監視システムを持たなければなりません。それは、以下のような要素を有するシステムです。

自主性のある正確なフライト排出量の算出に重点を置く

Ciriumは、信頼と独立性のあるデータ分析を通じて、2050年までのネットゼロ達成という目標に向けて業界を後押しすることに全力を注いでいます。このミッションをサポートするべく、Ciriumは高度な方法論であるEmerald Skyを開発しました。これはデータ、分析、革新的な手法を統合し、CO2の飛行時の排出量と飛行時に予測される排出量の両方について、比類のない精度で測定するものです。

大雑把な推定や仮定に依存する従来の炭素計算法とは異なり、Emerald Skyは、最先端の技術と独自のデータを駆使して、航空機の燃料消費量とCO2排出量を正確に計算します。これにより、現在および将来の気候変動規制を満たすために必須となる、より正確なフライト時の排出量の報告を確実に行うことができます。

CiriumはEmerald Skyを通して、環境に関する誓約を達成するために必要な正確さと透明性を業界に提供することを目指しています。

業界を前進させる

航空会社の使命とは、単にCO2排出量削減への意欲を表明することだけにとどまりません。今こそ、環境への影響と対応策の策定を自らの問題として捉え、科学的裏付けのある具体的な成果に向けて取り組む時なのです。

グリーンウォッシュに対処し、堅牢な排出量モニタリングシステムを採用することは、単なる規制要件ではありません。航空関連業界の持続可能な未来を構築するために不可欠な要素なのです。私たち航空関連業界の環境保護に関する主張が、私たちの航空機と同じように空高く飛躍できることを証明するために、共に努力しましょう。

ぜひCiriumにお問い合わせください。温室効果ガスの排出量を客観的かつ科学的に測定する正確無比な方法をお伝えいたします。Ciriumのソリューションは、持続可能性への取り組みの透明性、信頼性、そしてグローバルなネットゼロ目標との整合性の実現を保証します。

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ネットゼロへの道:増え続ける商用航空界のCO2排出量(パート3)


稼働フリートの変化が与える影響

Andrew Doyle, Cirium - Senior Director, Market Development
Aerospace Big Data Europe, London 28th November 2018. Images copyright www.tellingphotography.com

筆者:Andrew Doyle (Senior Director – Market Development, Cirium)

注:これは3部構成の第2部です。第1部第2部をお読みください。

2024年4月に世界で稼働したエアバスとボーイングの旅客機タイプのフリートを見てみると、前回の排出量ピークだった2019年7月と比較して、最新世代のボーイング737Maxが(2020年後半に世界的な運航停止命令が解除されて以降)1,500機近く導入された一方、エアバスのA320neoとA321neoが計1,800機近く追加されていることが最も注目されます。この間、旧世代のA320ceoの稼働フリートが500機以上減少し、450機以上の737-800が稼働フリートから排除されました。

ワイドボディ機については、老朽化した旅客仕様の747-400の稼働フリートが130機から20機のみとなり、レガシー機の767-300のフリートは190機近く減少しました。A380の稼働フリートは233機から160機に減少し、A330-300の稼働フリートも110機以上減っています。これらの機材は、計400機弱の最新世代のA350とA330neoの追加機材、さらに270機以上の787に置き換えられ、補充されています。エアバスとボーイングの旅客ジェット機の稼働フリートの合計はこの5年間で1,000機以上増加し、約21,000機になりました。これは排出量の点からみて、最新世代のエンジン技術の普及が進んだことによる1フライトあたりの効率性向上の相殺分を上回る増加規模です。

ここに私たちの見解を示します。

商用航空業界はいま岐路に立たされており、増大する旅行需要に応えつつ、環境への影響を大幅に削減するという二重の課題に直面しています。その克服のためには、航空会社、航空機メーカー、各国政府、ステークホルダーが一丸となって、持続可能な技術と燃料に投資する必要があります。

事態の緊急性に対応し、技術革新を受け入れ、野心的な炭素削減目標の達成に向け尽力することは、健全な地球を保ったまま航空業界の未来を切り拓いていくために不可欠なステップです。

持続可能性の道のりは平坦ではありません。

しかし、積極的な対策と協力的な取り組みによって、航空業界はこの重大な課題に立ち向かうことができるのです。

航空機とフライトの排出量に関する正確な知見であるEmerald Sky Aircraft and Flight Emissionsをぜひご活用ください。


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ネットゼロへの道:増え続ける商用航空界のCO2排出量(パート2)


航空会社のCO2排出量削減に影響を与える要因

Andrew Doyle, Cirium - Senior Director, Market Development

筆者:Andrew Doyle (Senior Director – Market Development, Cirium)

注:これは3部構成の第2部です。第1部第3部をお読みください。

Cirium独自のEmerald Skyの方法論とデータ分析によると、2019年にCO2排出量が最も多かった航空会社200社(割合にして総排出量の93%。うち185社は現在も運航中)のうち81社は、2024年7月までの5年間でASK(有効座席キロ)あたりのCO2を平均3.9%以上削減できる見込みです。最も改善された航空会社(アイスランド航空)は、大規模なフリート更新プログラムの恩恵により24%以上の削減を記録する見通しです。他の航空会社、例えば排出量8.1%減と見込まれるブリティッシュ・エアウェイズは、新型コロナウイルスのパンデミックの間、747-400のような特に燃料消費の激しい航空機の全フリートを段階的に廃止する決定を下しました。

これとは逆に、フィンエアーのASKあたりのCO2排出量は、2019年から2024年の間に10%以上増加すると予測されていますが、これは主に、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、ロシア領空が使用できなくなったことが要因です。

この結果、フィンランドのフラッグキャリアであるフィンエアーが運航するA350フリートのASKあたりの燃料使用量は、約20%増加しました。これは、大圏距離ベースの方法論ではなく、Ciriumの飛行時間(分)ベースの方法論でフライト内容が把握されることにより、アジア発着便の飛行時間が延びたためです。

航空業界が直面している持続可能性に関する主要な課題は、商用旅客機の増加が予測される中、持続可能な航空燃料(SAF)の供給が大幅に拡大するまでは、CO2排出量の絶対量が増加し続けることにあります。

国際的な最新の推計によれば、世界全体の排出量のうち航空関連業界が占める割合は約2%と比較的小さいものの、化石燃料の使用にすぐに代替し得る手段がないこと、また上空で巻雲(飛行機雲)が形成されることによって温室効果が増大する可能性があることから、この業界は依然として風当たりが強い状況となっています。

次週のパート3「稼働フリートの変化が与える影響」もどうぞお楽しみに。EMERALD SKYの詳細については、当社までお問い合わせください


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  • プレスリリース

Ciriumのエメラルド・スカイ、航空業界の炭素排出と燃料消費データの革新に向けた先駆的な取り組み


Ciriumは、世界中の航空機の炭素排出量と燃料消費データを捉える最も正確な方法を開発しました。このデータにより、管理会社、企業の出張部門、航空機ファイナンス企業、そして航空会社が座席ごとの排出量を正確に追跡することが可能になります。

航空機の炭素排出量と燃料消費量の世界的なデータを正確に捉える

管理会社、企業の出張部門、航空機ファイナンス会社、航空会社による座席ごとの排出量の正確な追跡が可能に


ロンドン、29日5月2024年 — Ciriumは、航空機の排出ガスと燃料燃焼を測定するための、業界で最も精度の高い独自の標準を導入しました。

これは航空機の種類と技術仕様をフライト別に分析する画期的かつ革命的な方法論で、リアルタイムの運航データと飛行条件とを組み合わせることで、排出量追跡におけるこれまでにないレベルの精度と信頼性を保証します。

CiriumのEmerald Sky(英語)は、同社の包括的なデータ、高度な分析、革新的な技術をシームレスに統合し、フライトによるCO2の現在の排出量と予測排出量の両方の測定において、これまでにない精度を発揮します。

実際の飛行経路ではなく予定ルートを使用したり、風速や風向といった変数を無視したりするなど、大まかな推定や緩い仮定に依存する従来の炭素計算機とは異なり、エメラルド・スカイは具体的なサービスクラスの座席別に排出量の算出結果を提供し、航空機の排出量測定における新たな基準を打ち立てます。

「シリウムの使命は、正確な燃料消費量と炭素排出量のデータに関する業界基準を確立し、航空業界が持続可能性の目標を達成できるようにすることです」とシリウムのCEO、ジェレミー・ボーウェンは述べました。

Jeremy Bowen, CEO - Cirium

「シリウムの世界最高水準の方法論は、各航空機の標準的な運航重量、乗客と手荷物、貨物積載量、エンジン効率の経年劣化まで考慮し、航空業界が掲げる大胆な持続可能性目標の達成に資する最も正確なデータを提供します」。

航空会社や業界関係者の支持を集めるエメラルド・スカイは、最大5年間の履歴データの他、12か月先までのカーボンフットプリント予測データの利用も可能です。

この強力なデータは、航空機別の排出量の正確かつ独立した評価を可能とし、より多くの情報に基づいた意思決定が航空業界全体に浸透するのを後押しします。その結果、フライト排出量報告の精度が高くなり、これは、現在および将来の気候変動規制を遵守する上で極めて重要なことです。

より質の高いデータを提供するエメラルド・スカイでは、以下のことが可能となります。

飛行機が環境に与える影響に大きな注目が集まる世界において、エメラルド・スカイの厳格なアプローチは、正確な報告と責任ある航空実務に必要不可欠です。

エメラルド・スカイは、航空業界の「ネットゼロ」の目標とともに、航空と環境の未来に有意義なプラスの影響を与えるというシリウムの継続的な使命をサポートします。

Emerald Skyについてもっとお知りになりたい方は、こちらまでお問い合わせください(英語)


メディアに関するお問い合わせ:
Cirium – media@cirium.com
The PC Agency – cirium@pc.agency (UK)
Juliett Alpha – cirium@juliettalpha.com (Global)

Cirium®は航空分析の情報源として世界で最も信頼されています。強力なデータと最先端の分析を提供し、幅広い業界関係者をサポートしています。航空会社、空港、旅行会社、OEM、金融機関が業務を最適化し、十分な情報に基づいた意思決定を行い、収益増大を加速させるために必要となる明瞭性とインテリジェンスを提供しています。

詳しくは、LinkedinでCiriumをフォローしていただくか、ウェブサイト(cirium.com/jp)をご覧ください。

  • 業界予測
  • 運航

ネットゼロへの道:増え続ける商用航空界のCO2排出量(パート1)


航空会社の総排出量は今年7月に過去最高を更新する見込みです。これはフリートの増加分が、機材の効率性向上による減少分を上回るためです。

Andrew Doyle, Cirium - Senior Director, Market Development

筆者:Andrew Doyle (Senior Director – Market Development, Cirium)

注:これは3部構成の第2部です。第2部第3部をお読みください。

エンジン技術や航空機設計の大幅な進歩が顕著な時代においては、航空関連業界が環境のサステナビリティに向けて、まっすぐに飛躍の道を歩んでいるとの期待があるかもしれません。しかし、現実はもっと複雑であり、懸念すべき状況です。さまざまな技術の進歩にもかかわらず、この業界は重大な岐路に立たされています。温室効果ガスの排出量が過去の水準を超えて急増すると予測されており、グローバル規模で気候変動問題に対処するための道のりに暗雲が立ち込めているからです。

Ciriumの最新の予測によると、定期旅客便に起因する月間二酸化炭素(CO2)排出量は、2024年7月には7,400万トンと過去最高を記録し、新型コロナウイルスのパンデミック前の最高値だった2019年7月の7,300万トンを上回る見込みです。

それでも、良いニュースもあります。有効座席キロ*(ASK)当たりのCO2排出量として測定される効率性は、この5年の期間で3.8%以上改善される見通しです。これは主に、最新技術のエンジンを搭載した航空機の割合の増加によるものです。

2019年7月には、計310万便弱で9,150億ASKが供給され、CO2排出量はASKあたり平均70g強と算出されました。Ciriumの2024年7月の予測では、実際のフリートに紐づけされた航空会社の公表スケジュールに基づくと、計320万回以上のフライトが約9,800億ASKを供給し、CO2排出量は平均68g弱になる見込みです。

プラット・アンド・ホイットニー(P&W)のPW1100Gを搭載したエアバスA320neoファミリーの何百もの機材が現在、エンジン点検のため待機中であり、一方でボーイングの737マックスも2件の死亡事故後、長期にわたる運航停止の影響で納入が制限されました。こうした事態がなければ、排出量に関する効率性の改善幅はもっと大きくなっていたでしょう。また、パンデミック後のサプライチェーンの問題や機体認証の課題もあり、最新世代のワイドボディ機の就航数が、2019年当時の想定よりも少なくなってしまいました。

次週のパート2「航空会社のCO2排出量削減に影響を与える要因」もどうぞお楽しみに。Emerald Skyの詳細については、当社までお問い合わせください


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  • Ascend Consultancy
  • 航空専門家の視点

Ascend Consultancyによる今後の展望:長距離ビジネスジェット市場の寸評


長距離ビジネスジェット市場全体の動向と2024年に向けての展望。

Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


Youcef Berour Minarro. Ascend by Cirium

筆者:Youcef Berour Minarro(Principal Valuations Analyst, Cirium Ascend Consultancy)

ガルフストリーム(Gulfstream)の新型機G700は、1年以上の納入遅延と数ヵ月の不確実な時期を経て、2024年3月29日に米連邦航空局(FAA)の型式証明を取得しました。これにより、長距離ビジネスジェットに分類される同機は、顧客への引き渡しに向けて大きな一歩を踏み出しました。これは、ガルフストリームの親会社であるジェネラル・ダイナミクス(General Dynamics)にとっても、収益回復をもたらすマイルストーンとなります。ジェネラル・ダイナミクスは、ボーイング737Maxの事故後、FAAの認証プロセスが長引いたために納入遅延に直面し、結果として2023年の収益において10億ドル、利益において2億5,000万ドルの損失をそれぞれ計上したと主張しています。

ファルコン10Xが納入されればダッソー(Dassault)の最大かつ最長航続距離の航空機となり、ボンバルディア(Bombardier)のグローバル7500やガルフストリームG700と直接競合することになります。

ガルフストリームは形式証明取得に加えて、G700の性能向上、すなわち当初計画よりも短くなった同機種の離着陸距離についても発表しました。G700のこの前向きな展開は、長距離ビジネスジェット機市場全体が現在どのような状況にあり、2024年に何を期待すべきかについて考える良いきっかけになると思われます。

OEMのその他の進展について

2023年にFAA欧州航空安全機関(EASA)の認証を取得したダッソーのファルコン6Xは現在、納入が進められています。現在2機が就航しており、今年中に増産が始まる見込みです。Cirium独自の新規納入予測によると、今年中に15機ほどの引き渡しが行われ、その後2025年にかけて納入が増加するとみられます。ダッソーが開発中のファルコン10XのEIS(稼働開始)は、当初は2025年を予定していましたが、サプライチェーンの問題を理由に2年遅れの2027年に延びました。ファルコン10Xが納入されればダッソー(Dassault)の最大かつ最長航続距離の航空機となり、ボンバルディア(Bombardier)のグローバル7500やガルフストリームG700と直接競合することになります。

ボンバルディアのグローバル8000は、グローバル7500(現在165機以上が稼働中)の航続距離延長型バリアント(異形機種)として2022年に再びローンチ(開発立ち上げ)され、現在もなお開発中となっています。この8000は、最大マッハ0.925の速度まで認証された航続距離7,700nmの7500の後継機となるもので、機体と全長も同じになっています。その性能の向上は、GE Passportエンジンのソフトウェア更新と空虚重量の最適化によってもたらされ、既存のタンクにもっと多くの燃料を搭載できるようになります。ボンバルディアは、改修指示書(Service Bulletin=SB)を通じて7500の所有者に改修オプションを提示する予定です。Global 8000は2025年に就航する予定です。

現在稼働中のビジネスジェット機フリートは23,000機を超えており、そのうち長距離向け区分の機材が4,000機近くを占めています。

フリート規模

現在稼働中のビジネスジェット機フリートは全体で23,000機を超えており、そのうち長距離向け区分の機材が4,000機弱(17%)を占めています。このセグメント(区分)の航空機は通常、航続距離が5,000海里を超え、さまざまなOEMの主力製品となっています。このセグメントにおけるOEMの裾野は、他のビジネスジェット機セグメントに比べてはるかに狭くなっています。長距離機材市場は現在、ガルフストリーム(49%)、ボンバルディア・グローバル(Bombardier Global)のファミリー(28%)、ダッソー(24%)が独占している状態です。このセグメントで最も人気のある機種はガルフストリームG550で、現在は570機が稼働しています。これに僅差でトライジェット(三発ジェット)のファルコン900ファミリーが続き、現在529機が稼働中です。

ソース:Cirium Fleets Analyzer, In-service, April 2024

在庫機材と流動性

2023年の12ヵ月間に公開された利用可能機材状況に基づく当社の分析によると、同年の長距離ビジネスジェット機の総在庫水準は、2022年と比較して大幅に増加しています。2023年初頭の時点では、一般に販売可能な長距離ビジネスジェット機の数は、このフリート全体の4%強にあたる約160機となっていました。この数字が2023年末までには、230機以上にまで増加していたのです(50%増)。ビジネスジェット機全体でも同様の傾向が見られ、同じ12ヵ月間で在庫レベルが最も増加したのはミッドサイズ機(中型機)のセグメントでした。

2024年4月現在、販売中の長距離ビジネスジェット機は230機で、これは販売中のビジネスジェット機フリート全体の6%に相当します。

流動性の点についてCirium Fleets Analyzerのデータをみると、2023年に取引されたフリート総数は前年比約20%減となっています。2024年はこれまでのところ、中古機販売については相対的に伸びが鈍化し、機材の市場滞留日数が伸びていることから、市況が減退している可能性があります。

ソース:Cirium Fleets Analyzer and Publicly Sourced Inventory

2024年の長距離カテゴリー機の価値はどうなっているのか?

今年に入ってからも、機材が市場に長く滞留する中、在庫水準が依然として増加を続けており、流動性は低下傾向にあります。機材についての当社の価値評価に関連して、航空機取引業者と話し合ってみると、機材価格には全般的に下落傾向が見られるようです。今年に入ってからの4ヵ月間で、既に機材の価値は若干軟化していると私たちは評価しています。私たちはこのサイズのカテゴリーだけでもガルフストリームG450、G550、V、G650/G650ERの各タイプについて評価を実施し、結果として、市場価値の評価(オピニオン)については2%から最大11%までの減少を観察しました。ただし、特にG450については、チャーター便の運航数が減少して以来、市場が大幅に減速しているため、顕著に20%も減少しています。一方でG650ERの低機齢の機材は、価値を安定して維持しています。ボンバルディアのグローバル7500は、当社による価値オピニオンが2~6%上昇しました。2024年を通して同じような傾向が続いても、驚くことはないはずです。私たちは折に触れ、市場に対して分析を報告するつもりです。

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Ascend Consultancyによる今後の展望:COMACはエアバス、ボーイングの2社独占に本当に挑戦できるのか?


市場機会の見通し

Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


Rob Morris, Ascend by Cirium

筆者:Rob Morris, Global head of consultancy, Cirium Ascend Consultancy

今年1月に発生した737-9 Maxの不幸な事故により、ボーイング737の生産体制が引き続き苦境に陥っています。このため私たちは、シングルアイル機の供給がボーイングの納入遅延により不安視されるなか、中国商用飛機(COMAC)が生産を拡充してその需要を満たしていく可能性について何度も質問されてきました。エアバスもA320ファミリーの生産拡大に悪戦苦闘していることを考えれば、この疑問はさらに大きくなります。A320ファミリーの生産は、2019年には月平均で60機に近づいたものの、新型コロナウイルスのパンデミック期には40機未満に逆戻りしました。その後、現在は50機程度となり、2026年の計画目標である75機に向かおうとしているところです。5月初旬に香港で開催された航空機に関するイベント「ISTAT Asia」で、あるリース会社の幹部は「ボーイングとエアバスはCOMACにチャンスを与えた」と述べました。また、別の関係者は航空機メーカーの頭文字を使って「今日の“AB”は、10年後には“ABC”になる」と指摘しました。つまり、COMACに対してドアは開いているのですが、それをくぐり抜けていくことができるのかどうかが問題なのです。

需要の観点から見れば、ビジネスチャンスは確かに存在します。

2023年11月に公表された最新のCirium Fleet Forecastでは、今後20年間で計40,000機以上のシングルアイルおよびツインアイルの旅客ジェット機の納入需要が発生すると予測しています。

エアバスとボーイングは2000年から2019年までの20年間に、計19,600機弱の商用旅客機を納入しました(納入機数には、ボーイングが1997年に買収したマクドネル・ダグラス社のレガシー航空機5機が含まれます。この買収により、2000年は、商用大型機市場が現在のような2社独占状態を築いた年となりました)。したがって、今の2強企業が2043年までに生産量を倍増させない限り、第3の企業の参入余地が確実に出てくるのです。

それにしても、33,000機近くもの納入需要が予測されているコモディティのシングルアイル機分野において、COMACは現行機種のC919の生産拡大を果たし、そのチャンスを生かすことができるのでしょうか?受注状況には明るさが見えており、Ciriumの機材データベースには現在、既に引き渡された5機に加え、さらに998機が確定発注されていると記録されています。しかしながら、下のグラフが示す通り、この受注残は2040年いっぱいまでの納入が予定されており、競合するエアバスやボーイングのシングルアイル機よりもはるかに長い納入期間となっています。現在、受注残の46%のみが航空会社6社から発注コミットメント(発注の誓約)を得ており、全社の本拠地が中国となっています。残りの543機は12社のリース会社から発注されています。その発注元は、BOC Aviationを除いて本拠地が中国国内にある中国資本の会社です。これらの機材については、引き渡し先の顧客を見つける必要があります。新しい航空機プログラムがこれほど早い段階で、しかも数多くのリース会社から引き合いに出されるのは異例なことです。これはおそらく、航空各社がC919について、今のところどのように評価しているのかを示唆しています。ただし、最近の中国国際航空と中国南方航空からの100機ずつの発注は、多くのリース会社の発注よりもはるかに確固とした内容になっているようです。

CiriumのFleet Forecastも楽観的な見方を示しており、2042年までのC919プログラムの機材納入数は現在1,700機弱と予測されています。これらの納入機の大半は国内顧客向けです。輸出顧客向けに販売されるのは、概ね政治的影響力によって販売キャンペーンを推進できる中国の「一帯一路」関連諸国向けの約250機にとどまると予想されます。今回の予測期間中、中国では6,000機以上のシングルアイル機の新規納入が見込まれており、C919の市場シェアはボーイングの30%、エアバスの45%に対し、約25%を獲得するとみられています。

そのような楽観的な見方がある中で、シングルアイル機市場に参入しようと努力しているCOMACの現在の実績はどうなっているのでしょうか。また、その実績は、最も新しく市場に参入して成功した企業と比較してどうなのでしょうか。ここで言う企業とはもちろん、1980年代後半に市場に参入したエアバスのことです。エアバスは1988年3月、エールフランスに最初のA320を納入しました。COMACは2022年12月、中国東方航空にC919の初号機を引き渡しました。それから17ヵ月後の今、COMACは、その同じ単一の顧客に5機を納入したばかりです。エアバスは1988年のA320の初号機納入から17ヵ月間のうちに、ヨーロッパ、北米、アジアの9つの異なる航空会社に計49機を納入しました。35年以上前、とりわけ市場が現在よりもはるかに小さかった時代に、エアバスはその10倍の数の新型機を世界に向けて送り出しているのです。エアバスは当時、今のCOMACにはない重要な優位性を有していました。それは1960年代以降、フランスとイギリスにあるエアバスのパートナー企業が、シングルアイル旅客機であるカラベル、トライデント、ワン・イレブンを計630機以上製造し、世界の90弱の顧客に納入していたことです。このころのエアバスは、競合していたボーイングとマクドネル・ダグラスのシングルアイル機に対し、A320ファミリーを信用度の高い世界的な競合機として確立するのに必要な定時出発の信頼性と性能を顧客に提供するべく、独自の航空機サポートネットワークを活用できたのです。COMACはそのようなサポートネットワークを持たないため、これから顧客の航空会社向けのサポート体制を懸命に構築しなければなりません。航空各社は、定評あるエアバスやボーイングの機材を凌駕するような、性能と定時出発の信頼性をCOMAC機に期待するからです。

既に納入された航空機の現在の実績は、どうなっているでしょうか?Ciriumのデータによると、中国東方航空の5機は今、上海虹橋から成都、北京、西安行きの国内3路線の定期便に使用されています。

フライトト追跡データによると、同機は4月に計398便、1日平均では5.9時間、運航されたことが確認されています。

この同じ月、中国で稼働しているボーイング737-8 MaxとA320neoの1日あたりの平均飛行時間は、それぞれ8.1時間と8.4時間でした。つまりC919は、今のところ明らかに抑制されたスケジュールで運航されています。運航サービス面での機材の能力を証明し始める段階に入る中、その稼働水準は、平均するとボーイングおよびエアバスの競合機の70%程度となっています。しかしながら、今年2月の時点では、C919は、737とA320の1日あたりの平均稼働時間の50%程度しか達成していなかったため、改善の兆しが既に見えていると言えます。また、路線の点でも改善の兆しがあります。報道によると、C919は2024年6月1日に、上海虹橋―香港線の単発の復路便で運航される予定です。この後、同路線がC919を使った定期便になるとの続報もありました。

将来についてはどうでしょうか?既に触れた通り、Ciriumの受注残データでは、COMACが2031年に130機以上の機材を顧客に納入するとの見通しが示されています。COMAC自体、今後5年以内に年間の生産能力を最大150機に増強する意向を示しています。また、COMACは、A320にその小型、大型のバリアント(異形機種)であるA319とA321を追加したエアバスの戦略にやや似た形の航空機ファミリーを開発しているところです。現行のC919より胴体が短いバリアントである「プラトー(plateau)」バージョンについては、チベット航空がローンチカスタマーとして発注し、その製造・開発が今年2月に立ち上がっています。2029年までに年間150機の航空機を製造できるようにするという構想は、表面上は野心的に見えます。1998年に納入された168機のA320ファミリーは、同年にボーイングが324機、マクドネル・ダグラス(そのころにはボーイングが100%所有)も42機を納入した当時のシングルアイル機市場で30%以上のシェアを占めていました。それでも、エアバスは年間150機以上の納入を達成するのに10年以上を要したのです。Ciriumの予測では、2029年に世界で計約1,800機のシングルアイル機が納入されることになっているため、COMACの150機は市場全体の10%未満となります。

COMACが大型商用機市場でエアバスやボーイングと肩を並べる可能性があることについては、疑いがありません。しかし、この分析によれば、COMACがその市場参入のドアをくぐるペースは、30年以上前にエアバスが同じドアをくぐった時よりも相対的に遅くなることが示唆されています。現在ボーイングは明らかに弱体化していますが、いずれは問題を解決し、ボーイング737ファミリーの生産についても、COMACが2029年に構想する生産機数の約4倍の水準にまで回復させることでしょう。同じ時間の尺度で、エアバスも、COMACが構想している約6倍の規模でA320ファミリーを生産することになりそうです。

大型商用機市場への参入障壁は常に高く、ボンバルディアのシングルアイル旅客機であるCシリーズ(CSeries)が最終的に失敗に終わったように、多くの企業にとって乗り越えられない可能性が高い分野です。COMACは、そのような市場の最も新しい挑戦者です。COMACが享受しているのは巨大な国内市場です。おそらく新造シングルアイル機の総納入数の15%程度が中国向けになることでしょう。国内市場を活用して、売上を伸ばすことができるのです。しかし今のところ、その販売ペースは、1980年代に市場参入した当時のエアバスが達成したペースよりもはるかに遅いようです。したがって、今の「AB」が本当に「ABC」になるのは、かなり先のことになりそうです。

Cirium Fleet Forecastの詳細についてはこちらをご覧ください。

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Ascend Consultancyによる今後の展望:足許の金利上昇がリース料に与えている影響について


インフレが高止まりしている昨今において、米国の長期金利もここ数年上昇/高止まり傾向にある。

Cirium Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントによる最新情報の全文をお読みください。Ascend Consultancyのアナリストとコンサルタントは、航空会社、航空機製造・メンテナンス企業、金融機関、保険会社、非銀行系投資家に緻密な分析、解説、予測を提供するエキスパートです。

Cirium Ascend Consultancyのチームをご紹介します。


筆者:曽我部 敏光 Cirium Ascend ConsultancyのAviation Consultant

FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年2022年3月より11回連続で利上げを行い、その後の5月1日には6会合連続で政策金利を据え置くことを発表した。

金利とリース料についてはこれまで一定程度の相関関係が確認できるため、金利上昇はリース料の上昇にも寄与してきたものと考えられてきた。但し、リース料の上昇幅が十分であったかどうかについては議論の余地がある。

The above chart shows that the market lease rates of Airbus A320neo and Boeing 737 Max jets have reached the $400,000-per-month mark


ソース: Ascend Value Trends, Federal Reserve Economic Data (FRED)


上図を確認する限り、A320NEOとB737MAXに関しては足許月40万ドルの大台に乗ったものと観測されている。特にA320NEOについては、デビュー年である2015年に月40万ドル超のリース料からスタートして以降下落傾向にあったが、2024年にようやく同水準まで回復したことになる。

但し、同期間中の金利水準を確認してみると、足許の米10年債利回りよりも2015年のほうが遥かに低い水準で推移している。

同様に、2007/2008年では新造機価格が数百万ドル単位で低かったであろう前世代のB737NGやA320CEOのリース料についても、当時40万ドル以上と高値圏で推移していたにも関わらず、同時期における米10年債利回りは足許の水準と同等以下で推移していた。

リース料上昇幅は不十分か

過去との対比で足許の資金調達コストが高くなっているにも関わらず、新造機のリース料が過去と同等以下の水準となっている背景として、過去と比較し(i) 航空機ファイナンス需要が過去対比で増加している一方、リース市場において次世代機の供給不足により十分なセール・アンド・リースバック取組機会がないことから、過当競争によりリース料が抑制されリターンが低くなっている、又は (ii) 各リース会社が取引時において、リース満了時の残価設定や重整備調整金及びメンテナンスリザーブの回収額を高めに設定している、或いは(iii)その両方が起きているものと推察される。

上記(i)については、ボーイングとエアバスの直近の月間生産数を確認する限り、明らかに次世代機の供給不足となっている。ナローボディ機の月間初飛行機数を確認する限り、エアバスは2024年第1四半期で月平均46回、ボーイングは2024年の2月・3月に月平均12回であった。既に新造機の発注を行っている一部のリース会社では取組パイプラインを確保できているものの、全体として各リース会社は新造機の取組に苦慮している状況であり、トップライン確保のため中古機取組へ戦略シフトを検討するリース会社も出てきている。(ii)については、次世代機/前世代機ともに整備コストが上昇していること、次世代機の供給が追いついていないことから、リース満了時の残価及びリース満了時調整金の増加を期待した取組が一部で増えているものと考えられるが、供給不足が中長期なトレンドとなるかについては注意が必要である。

将来のリース料の変動や各航空機リース会社の次世代機へのセール・アンド・リースバックの取組スタンス変更については、Cirium Ascend Consultancyとしても今後注視していきたい。

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急速に進むイノベーション――中東は未来の航空業界をいかに再構築するのか


長い間、野望と成長の象徴であったこの地域の航空関連業界は今、目覚ましい変革の最中にあります。これは飛行機利用の未来を確実に作り変えるものです。

筆者:Alex Brooker, VP of research, development and discovery

中東の真ん中で今、静かな革命が起きています。長い間、野望と成長の象徴であったこの地域の航空関連業界は今、目覚ましい変革の最中にあります。これは飛行機利用の未来を確実に作り変えるものです。

技術革新、持続可能性、旅客体験の向上に専心する中東の業界関係者たちは、これから世界の航空コミュニティに向けた新たな基準を打ち立てようとしています。今週ドバイで開催されるArabian Travel Marketで、世界の航空関連のステークホルダーが一堂に会します。この地域での取り組みと具体的なビジネス機会について見ていきましょう。

中東での変革の最前線にいるのが、世界有数の航空会社や空港を有するアラブ首長国連邦です。ドバイを拠点とし、年商290億ドル(約2兆8000億円)を誇るエミレーツ航空は、航空業界における可能性の限界を常に押し広げてきました。

同社は250機以上の航空機を保有し、世界140ヵ所以上の目的地に路線網を展開しており、最新技術を駆使して卓越した旅客体験を提供しています。機内エンターテインメント・システムから生体認証のセキュリティ対策に至るまで、この航空会社のイノベーションへの取り組みは、業界に高いハードルを設定してきました。

しかし、そうした卓越性を追求しているのはエミレーツ航空だけではありません。アブダビを拠点とするエティハド航空のほか、フライドバイ(flydubai)やエア・アラビアといった格安航空会社(LCC)も、サービスの強化や参入地域の拡大を通して大きな前進を遂げています。純粋な運航実績面では、オマーン・エアがCiriumの定時運航率(OTP)ランキングで世界第3位に入り、2023年度の「地域OTPアワード」を受賞しました。キング・ハーリド国際空港(RUH)は2024年3月の定時出発率が87.32%で、世界で2番目に定時性の高い空港となりました。これらの航空会社や空港は、長期的な成功を確実につかむために、変化する顧客ニーズに適応し、持続可能な慣行を取り入れることの重要性を認識しています。その意味で、この地域の航空業界全体にとって困難な月であったにもかかわらず、欠航やフライトの遅延を最小限に抑えたことは、誰もが認める前向きな一歩になりました。

中東・アフリカにおけるCiriumのOTP地域最新情報――2024年4月発行

中東・アフリカでは、今年3月の欠航便数が12%も増えました。欠航が2月の1,739便から1,950便に増えたのです。Safair(FA)は3月も、中東・アフリカ地域および格安航空会社カテゴリーの両方において、なお揺るぎないリーダーでした。

同社の3月のOTPは96.67%と傑出しており、2月の93.96%からは3ポイント近く上昇しました。

これは世界の全地域、全カテゴリーにおいて、全航空会社中最高のスコアでもあります。次いでオマーン航空(WY)が、93.32%という素晴らしいOTPで2位に入りました。ロイヤル・ヨルダン航空(RJ)は、OTPが前月より13ポイントの脅威的な上昇を示して89.68%となり、ランキング7位から3位に浮上しました。ガルフ・エア(GF)は、OTPが2月の84.08%から4ポイント上昇して88.35%となり、ランキング4位を維持しました。カタール航空(QR)のOTPは87.36%で、前月の83.27%からは4ポイント上昇し、ランキングは5位となりました。この地域の空港も3月、大幅に実績を向上させました。キング・ハーリド国際空港(RUH)のOTPは前月の83.13%から4ポイント上昇して87.32%となり、世界の空港カテゴリーで2位の座を確保しました。クウェート国際空港(KWI)のOTPは87.32%で、2月の80.51%から7ポイント近く上昇しました。一方、イズミル・アドナン・メンデレス空港(ADB)のOTPは91.61%となり、前月のOTP89.57%を2ポイント上回りました。[B(1]

イノベーション・ハブがコラボレーションを可能に

この地域の航空業界で最も注目すべき進展のひとつは、ドバイにあるエミレーツのEbdaaのようなイノベーション・ハブの出現です。Ebdaaは、創造性、コラボレーション、そして持続可能なエネルギーの触媒のような役割を果たします。この最新式の施設では、大学、テクノロジー・サプライヤー、新興企業から極めて優秀な頭脳が結集し、先端ソリューションの開発を推進しています。水素を動力源とする航空機のプロトタイプ(試作機)から先端的な航空交通管理システムに至るまで、Ebdaaから生まれる画期的なプロジェクトの数々は、航空関連業界の未来を形作るというこの地域の誓約の証しです。

しかし、イノベーションは新技術の開発だけにとどまりません。中東の航空業界は、トレーニングや乗客体験に対する新しいアプローチも開拓しています。

例えば、エミレーツ航空は、航空機の乗務員・従業員の新人研修やトレーニングを強化するため、拡張現実や没入型体験のテクノロジーを導入しています。これらのテクノロジーは、職場環境のリアルなシミュレーションの提供を通して、トレーニング時間を短縮するとともに、新しい従業員が円滑に職場に適応することを可能にしています。

同様に、世界で最も忙しい空港のひとつであるドバイ国際空港は、2024年まで完全にタッチレスでチェックポイントを通過できるようにする計画を立ち上げ、この種のテクノロジーの活用において業界をリードしています。ここでは、乗客は高度な生体認証技術により、継ぎ目のないシームレスなチェックイン、保安検査、搭乗手続きを体験できるようになります。この取り組みは、待ち時間を短縮し安全性を高めるだけではなく、新型コロナウイルスのパンデミックを経て、より衛生的で便利な旅行体験を提供しようとするものです。こうした進展は中東全体で見られるようになっており、乗客が空港内を移動し、航空会社のスタッフと接する方法に革命をもたらしています。

とはいえ、急速な成長とイノベーションを遂げる中東の航空関連産業に課題がないわけではありません。中東では熟練労働者の不足に直面しており、2033年までにUAEだけで約22,000人のパイロットと乗組員が必要になるという試算もあります。この問題に対処するため中東諸国は、次世代の航空分野の専門家を育成する教育機関と連携し、トレーニングおよび開発プログラムに投資しています。

もうひとつの課題は、気候変動の問題に直面するなか、持続可能な慣行が求められていることです。中東の航空会社や空港は、CO2排出量の削減の面で大きく前進しましたが、まだやるべきことは数多くあります。持続可能な航空燃料の採用、より燃料効率の高い航空機の開発、環境に配慮した地上業務の実施といったことはすべて、航空業界の長期的な持続可能性を確保するための重要なステップです。この目的に向かって中東の航空会社や空港は、持続可能な航空燃料の採用、燃料効率の高い航空機の開発、環境への負荷の低い地上業務の実施など、環境に優しい取り組みに対し多額の投資を行っています。例えばエティハド航空は、2035年までにCO2素排出量を50%削減し、2050年までにネットゼロ(CO2排出量実質ゼロ)を達成すると誓約しています。このような努力は、運航上の利益にとどまらず、今は多くの取引が環境への配慮を求める 「グリーンな紐付き 」であることから、業界の財務的な裏付けを確保するためにも不可欠です。Ciriumはこうした分野にも多額の投資を行っています。最近では当社のEmerald Skyについて、ロッキーマウンテン研究所から、航空業界に合わせて調整された初の気候変動対応型金融フレームワークの先端ツールとして適格性認証を受けました。

このような課題があるにしても、中東の航空業界は今、楽観と決意のムードに覆われています。

この地域のリーダーたちは、航空関連産業が持つ計り知れない可能性を認識したうえで、その将来への投資に全力を傾けています。サウジアラビアが掲げている野心的な計画から、中東地域全体で築かれつつある戦略的パートナーシップに至るまで、この業界を前進させるという一体感と目的意識が強く感じられます。

今後数年間で、ここからさらに画期的な進歩が生まれることが期待されます。水素を動力源とする航空機の開発から、シームレスかつタッチレスな旅行体験の実現まで、中東の航空業界は可能性の限界を押し上げようといるのです。これらのイノベーションが実現すれば、私たちの旅行方法が一変するだけでなく、新世代の起業家やイノベーターたちに大きな影響を与えることでしょう。中東の航空業界のサクセスストーリーは、ビジョン、協力、そしてイノベーションの力の証しなのです。この地域は、人材、インフラ、テクノロジーへの投資を続けることで、より輝かしく持続可能な未来への礎を築きつつあります。その地平線にしっかりと目を向け、一つずつイノベーションを実現しながら、中東は世界の航空業界を新たな高みへと導こうとしています。


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誰が前進し、誰が後退するのか――航空機のグラウンドタイムに注目する


Ground Events Analyticsが、中国のMRO市場、エミレーツ航空のA380改修プログラム、そして世界中の何百もの整備格納庫でいま実際に何が起きているのかを明らかにします。

Andrew Doyle, Cirium - Senior Director, Market Development

筆者:Andrew Doyle, Senior Director, Market Development

CiriumのGround Events Analyticsの導入に伴い、これまで見えにくかった機体整備点検や客室改修の分野に対する独自の洞察が可能になりました。私はこの新しいツールを使って、中国のMRO市場、エミレーツ航空の大規模なエアバスA380の客室刷新キャンペーンの進捗状況、さらにボーイング787の納入の遅れが767のアップグレード需要に与える影響について調べました。

宇宙ベースの追跡で中国の現状が明らかに

中国における整備、修理、オーバーホール業務の競争状況については、包括的なフライト追跡データの入手が困難なため、これまでは把握が困難でした。しかし、Ciriumが宇宙ベースのADS-B(Automatic Dependent Surveillance – Broadcast=自動従属監視放送)のサービスプロバイダーであるAireonと提携したことにより、航空機の到着から出発までのグラウンドタイム(地上にいる時間)における位置と継続時間を初めて正確にモニタリングできるようになりました。この追跡情報を、市場をリードするCiriumの機材およびMRO契約データと組み合わせることで、当社の市場専門家とデータ科学者たちは、特定の機材がいつ、どこで定期整備を受けているかについて、高い信頼度をもって推測する高度なアルゴリズムを開発することができました。

以下のツリーマップでは、Ground Events Analyticsを使用して実行できる分析タイプの例が示されています。これは、2024年2月までの12ヵ月間に記録された特定の機材タイプごとの地上日数の合計に基づき、中国のMROプロバイダーをランク付けしたものです。それぞれのケースで、ヘビーチェック(徹底した点検)を受けた機材の数と地上滞在時間の中央値を示すことが可能になっています。

巨大な改修プログラム

エミレーツ航空に目を向けると、この新ツールは、同社がアップグレードを予定している全67機のA380のうち少なくとも22機について、まったく新しいプレミアムエコノミー・キャビンの設置を含めた客室改修が完了したことを示しています。同社は2022年11月に業界最大級の改修プログラム計画を発表しており、8日ごとに1機の改修開始を目指し、各改修の完了までには約16日かかると述べています。つまり、今年5月末までに67機すべてのA380を改修し、運航に復帰させるということです。

Ground Events Analyticsによれば、これまでにアップグレードが確認された22機のうち9機は、地上滞在中に「C」または「ヘビー」クラスの整備・点検も受けていることが分かっています。

追跡された地上時間が最も短かった機材は、2023年5月中旬から客室の改修を受けた機体番号A6-EVFの23日間でした。これまでにアップグレードされた22機は、既に新キャビンが取り付けられた状態でエミレーツ航空に引き渡された最後の6機のA380フリートに加わることになります。

ドリームライナー納入遅延でレガシー・ツインジェットが息を吹き返す

最後に、2021年5月から2022年7月にかけてのB787(ドリームライナー)の納入停止が、ユナイテッド航空のレガシーフリートであるB767の客室アップグレード計画にどのような影響を与えるかを見てみました。私のグラフでは、ドリームライナーの引き渡しが遅れる中、旧型のツインジェット機の改修活動が著しく活発化していることが示されています。


Ground Events Analyticsが将来の機材整備の監視と予測にどう役立つかについてもっと知りたい方は、Ground Eventsページ(英語)をぜひご覧ください。

  • Ascend Consultancy
  • 航空専門家の視点

Ascend Consultancyによる今後の展望:先進航空モビリティ – 2024年4月の寸評


Cirium Fleets Analyzerは今年に入って以降、先進航空モビリティ(AAM)セクターの新規の発注コミットメントを450件弱記録しました。

Ascend Tim Chun Hing Li, Ascend by Cirium

筆者:Tim Li, Aviation Analyst at Cirium Ascend Consultancy

今年第2四半期に入り、Cirium Fleets Analyzerのデータベースには、年初来計450件弱の先進航空モビリティ(AAM)セクターの新規発注コミットメントが記録されました。合計機数は13,500件をわずかに超えています。AAM市場は、ボロコプター(Volocopter)が2024年のパリ五輪期間中の運航開始を宣言するなど、当初設定された運航開始日の目標達成に少しずつ近づいています。第1四半期には、いくつか明るい材料も出てきました。EHangはE216-Sについて、中国民用航空局(CAAC)から世界初の型式認証を取得した後、その一般販売を開始しました。他のOEM(航空機メーカー)も、自国の規制当局から生産組織承認(POA)を取得し、設計に基づく生産への道をさらに切り開いています。それでも、そのような事業が実現するという絶対的な確証はまだありません。

データの対象範囲は以下の通りとなっています。

航空機市場グループ航空機メーカー機種注釈
eVTOL – UAV/UASBETA TechnologiesALIA-250 
eVTOL – Urban Air MobilityAMSL AeroVertiiaNewly added
eVTOL – Urban Air MobilityAerofugiaAE200 
eVTOL – Urban Air MobilityArcher AviationMidnight 
eVTOL – Urban Air MobilityAscendance Flight TechnologiesAtea 
eVTOL – Urban Air MobilityAutoFlightProsperity 1 
eVTOL – Urban Air MobilityBETA TechnologiesALIA-250 
eVTOL – Urban Air MobilityCrisalion MobilityIntegrityNewly added
eVTOL – Urban Air MobilityDuFour AerospaceAero3 
eVTOL – Urban Air MobilityEHangEH216 
eVTOL – Urban Air MobilityEHangVT-30 
eVTOL – Urban Air MobilityEve Air MobilityEve 
eVTOL – Urban Air MobilityHorizon AircraftCavorite X7Newly added
eVTOL – Urban Air MobilityJaunt Air MobilityJourney 
eVTOL – Urban Air MobilityJoby AviationS4 
eVTOL – Urban Air MobilityLilium GmbHLilium Jet 
eVTOL – Urban Air MobilityManta AircraftANN2 
eVTOL – Urban Air MobilityOdys AviationOdys eVTOL 
eVTOL – Urban Air MobilityOverair IncButterfly 
eVTOL – Urban Air MobilityPlanaCopterPlane CP-01 
eVTOL – Urban Air MobilitySirius AviationSirius Jet 
eVTOL – Urban Air MobilitySkyDriveSD-05 
eVTOL – Urban Air MobilityTCab TechE20 eVTOL 
eVTOL – Urban Air MobilityVertical Aerospace Group LtdVX4 
eVTOL – Urban Air MobilityVolocopter GmbHVoloCity 
eVTOL – Urban Air MobilityVolocopter GmbHVoloConnect 
eVTOL – Urban Air MobilityWisk Aero LLCCora 
eVTOL – Urban Air MobilityXTI Aircraft CompanyTriFan 600 
Business Electric – Multi EngineElectraElectra eSTOL 
Business Electric – Multi EngineAirflowM200 
Business Electric – Multi EngineBye AerospaceeFlyer 800 
Business Electric – Multi EngineElectronElectron 5 
Business Electric – Multi EngineEviationAlice 
Business Electric – Single EngineBETA TechnologiesCX300 
Business Electric – Single EngineVoltAeroCassio 330 
Regional Electric – SmallAura AeroERA 
Regional Electric – SmallHeart AerospaceES-19Programme cancelled, and revised to ES-30
Regional Electric – SmallHeart AerospaceES-30 
Regional Electric – SmallJektaPHA-ZE 100 
Regional Electric – SmallLYTE AviationLA-44 Skybus 
Regional Electric – SmallMaeve AerospaceMaeve 01Programme cancelled, OEM revised to M80*

eVTOL – アーバンエアモビリティ(UAM)

Cirium Fleets Analyzerが捉えたeVTOLセクターの発注コミットメントの総数は現在、10,300件をわずかに上回っています。EVE Air MobilityとVertical Aerospaceは、過去9ヵ月間に新規受注を一切記録していないにもかかわらず、最も発注コミットメントが多いOEMとして際立っています。これらの新規コミットメントは圧倒的にアジア太平洋地域からのもので、以前はよく見られたリース会社のような馴染みのある名前はほとんどありません。


資金調達の持続――業界の成長に不可欠な要素

Ciriumのデータによると、発注コミットメントの伸び率自体は減少しています。この6ヵ月間のコミットメント総数の純増数は600件をわずかに下回る水準で、うち約80%がアジア太平洋地域からのものでした。コミットメント件数は全体として、その前の6ヵ月間と比較して50%以上減少しています。しかし、開発サイクルの現段階では、受注伸び率の減退は想定外ではありません。

CiriumのFleets Analyzerデータベースによると、現在、機体デザインが登録され、発注コミットメントも得ている機体デザインは20以上に上っており、新規参入企業も続々と現れています。これらの要因からみて、AAM市場に対する熱意はまだ衰えていないことが分かります。

一般に発注コミットメントとは、将来に支払いが行われることが確約されていることを意味し、多くの場合は合意された諸条件が適用されます。そのような条件の例としては、開発スケジュールの遵守が挙げられます。発注コミットメントは投資元の信頼を高め、最終的には支払いに結びつくものですが、OEMにとって即座にキャッシュフローの源にならないことがよくあります。製品開発、特にこのような先駆的技術の開発には、長い時間とコストがかかります。約束を果たすために設定された節目に到達し、それによってAAMのビジョンを実現する能力を獲得するために、OEM各社は、親会社、政府、あるいは既存・新規の投資家から、新たな資金を調達する必要があるのです。

直接融資が減少すれば、業界の将来の発展に大きな影響を与えるでしょう。製品開発とマーケティングの努力への継続的なサポートを保証するという意味で、近い将来から中期的な将来にかけて、企業・事業の統合が注目を浴びる可能性があります。

ビジネス電動機 – マルチエンジン

電動ビジネス航空機セクターの発注コミットメントの総数は現在3,200件を超えており、過去6ヵ月間で約500件増えました。この約500件のうち330件以上を占めるのが、米ダラスを拠点とするJSX航空によるコミットメントです。その発注機種はAURA AEROのERA、ElectraのeSTOL、Heart AerospaceのES-30などさまざまです。また、ElectraのeSTOLは、アメリカのリージョナル機運航会社であるSurf Air(90件)のほか、インドのJet Set Go(50件)からも追加の受注コミットメントを得ています。

*ヨーロッパの新興企業であるMaeve Aerospaceはその戦略を見直しして、「M80」と名付けられた80人乗りのハイブリッド電動航空機という新しいコンセプトを打ち出しました。つまり、もともと開発していた新型機「M01」(44人乗り)については、現在は保留中ということになります。その当初の発注がM80に移管されるかどうかはまだ不明です。

現在、こうした大型規格のコンセプトに沿った機材設計のほとんどは、航空機が完全に電気だけで動くというビジョンから転換し、代わりにハイブリッドのコンセプトに基づいて行われるようになっています。


  • 航空専門家の視点

ドリームライナーの第一陣の就航機、改修の時期が接近中


ボーイング787-8の第一陣が就航してから10年以上が経過し、いくつかの航空会社が同機の客室の改修プログラムを発表しています。Ciriumのシニア航空データリサーチアナリストであるJames Mellonが、機材の内装更新における新たなビジネス機会について考察します。

 James Mellon, Senior Aviation Data Research Analyst, Cirium

筆者:James Mellon, Senior Aviation Data Research Analyst, Cirium

Ciriumは、AIX 2024のOfficial Data Partner(オフィシャル・データパートナー)です。

ボーイング787-8(ドリームライナー)の第一陣の就航機は、機齢が既に10年以上になっています。機体は大掛かりなメンテナンスが必要であり、最近ではいくつかの航空会社が運航機の客室の改修プログラムを発表しています。Ciriumのシニア航空データリサーチアナリストであるJames Mellonが、Cirium独自のデータ洞察力を駆使して、この新たな市場機会を分析します。

ボーイング787はまったく新しい機種と見なされていますが、商用運航は2011年から行われています。したがって、最も古い787-8型機は、10年以上にわたって運航されています。機体の初回の構造的なメンテナンス・点検が必要な時期に達しているだけでなく、客室を刷新する機種の最有力候補にもなっています。

いくつかの航空会社は最近、自社の787-8を今後数年間で新しい客室に改修することを明らかにしました。とはいえ、Ciriumが最近発表したGround Events(英語)分析ツールを使って調べてみると分かる通り、大掛かりな内装アップデートが行われるのは、これらの改修例が初めてではないとみられます。

Ciriumは2019年10月以降、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)、ユナイテッド航空の各社が運航する787-8を対象に、計18件の客室改修事象を追跡してきました。

先ごろユナイテッド航空は、自社のワイドボディ機全機について、新しいビジネスクラス「Polaris(ポラリス)」を組み込んでリフレッシュするとともに、プレミアムエコノミーの客室「Premium Plus(プレミアム・プラス)」を導入しました。Ground Eventsの分析によると、ユナイテッドの787-8の12機すべてがその改修作業のため、アモイにあるHAECOの施設(Taikoo Aircraft Engineering)に移送されました。

787-8については、2011年から12年にかけて最初の15機が納入された日本では新規航空会社の立ち上げに使用されています。格安航空会社(LCC)のZIPAIR Tokyo(ジップエア・トーキョー)は2019年にJALによって設立され、当初のフリートは親会社であるJALの最も機齢の高い787-8で構成されていました。この機材譲渡に先立ち、機体の整備点検と客室の改修が行われ、座席数は206席から290席に増え、より高密度な座席レイアウトが導入されました。

ジップエアのフリートについてはその後、工場で生産されたばかりの787-8が2機、補充されました。しかし、ボーイングが2021年6月から2022年8月にかけて787の納入をいったん停止したため、2機とも当初の予定より遅れて同社に到着しています。新型コロナウイルスのパンデミック後に増加した旅行需要に対応するため、JALは中古の787-8を複数、ジップエアに追加譲渡していますが、いずれも以前に譲渡した機材と同様の客室改修工事が必要となりました。

Ground Eventsの分析によると、ジップエアの6機の787-8は、3つの異なる施設において、自社とサードパーティのMROプロバイダーにより改修が施されました。

ANAグループはAirJapan(エアージャパン)を立ち上げ、2024年2月に運航を開始しました。ジップエアと同様、エアージャパンもANAから譲渡された高機齢の787-8を使用して中距離・低コストの運航サービスを行っています。さらに5機がオールエコノミーの客室に改修され、2024年中に就航する予定です。

「-8」は787の初期型のバリアント(異形機種)で、胴体延長・長距離型の787-9が初就航するまでの2年半の間に計165機が納入されています。

ソース:Cirium Fleets Analyzer

最近、787-8の改修プログラムに関する航空会社の発表が相次いでいます。改修の際、古い座席は多くの場合、新造機との共通化を図るため新しい座席に取り替えられます。

Ciriumのフリートデータによると、787-8は7機が永久に使用を停止しました。ボーイングがプロトタイプ(試作機)として保有する4機に加え、Norwegian(ノルウェイジアン)の旧機体2機が2023年にパーツアウトされています。また、運航会社に引き渡されることのなかった別の機体も部品を取り外され、解体されようとしています。

これまでに787の全バリアント計1,100機超が製造されており、中でも787-8は現在383機が稼働中で、11機が保管されています。787の受注残は800機弱で、その中には48機という比較的少ない数の787-8の確定購入契約が含まれています。つまり、787の生産は2030年代まで保証されているということです。

新型ワイドボディ機の製造・納入ペースは、航空会社が希望するよりも遅くなっています。結果として、市場では中古機が好まれるようになりました。その機材価値は上昇し、長期的な運航を意図した客室改修のビジネス事例が正当化されるようになっています。

航空会社6社が最近、今後数年以内に787-8の客室改修工事を実施すると発表しました。こうしたアップグレードの中心となるのは、新しい座席、機内エンターテインメント、インターネット接続システムです。場合によっては、これらの航空会社が運航する、一般的には低機齢の他のワイドボディ機と内装が同じものになるでしょう。

ソース:Cirium Fleets Analyzer

2019年にCollins Aerospace(コリンズ・エアロスペース)製の新しいビジネスクラス席「Club Suites(クラブ・スイート)」を立ち上げたブリティッシュ・エアウェイズは、2024年内にそれを787-8フリートに導入します。座席の横方向の配列が従来の「2-3-2」構成から「1-2-1」構成に変更されたため、すべての乗客が通路に直接アクセスできるようになり、利便性が向上しました。これらの機材は、他の客室のアップグレードとWi-Fiの追加を含めて、新たに納入される同類機種の787-10やエアバスA350-1000と同等の内装となります。CiriumのGround Eventsの分析によれば、今回の787-8の改修は、イギリスのカーディフにあるBAの整備施設で実施された同社の777フリートの改修に続くものです。

エチオピア航空はAdient Aerospaceに対し、787のビジネスクラス用ライフラットシートの供給を依頼しています。CiriumのFleets Analyzerによると、エチオピア航空は、150度のリクライニングが可能で「2-2-2」配列のアングルシートのビジネスクラスを備えた787-8を10機運航していますが、どの機材に改修を施すかについては発表していません。この10機は同社保有機のうち最も機齢の高い787-8で、「1-2-1」配列でプライバシードア付きの最新世代のビジネスクラスシートが普及する前の2012年から2014年にかけて納入されました。

今後予定されている改修のすべてにおいて、プレミアム客室が「1-2-1」配列に変更されるわけではありません。

ジェットスターは、アブレスト(横一列の席数)が「7」の構成を維持する予定ですが、プレミアムの旅行需要が高まっているため、この客室クラスの座席数を21席から44席に増やします。カンタス航空の子会社も、11機の787-8に乗務員休憩スペースを設置すると発表しており、それらの機材を新たな長距離路線の市場開拓のために使用する可能性を示唆しています。Fleets Analyzerによると、ジェットスターは98機のA320neoファミリーを発注残として確保しており、その中にはA321XLRが36機含まれています。これらの長距離用シングルアイルジェット機は、現在787-8が就航しているジェットスターの路線に投入される可能性があり、それによりジェットスターの路線網拡大の余地が広がることになります。

複数の航空会社がこうした比較的機齢の低い機材の客室改修を計画していること、また重整備が必要なタイミングでもあることから、論理的に考えて、787-8を運航する他の航空会社もこの機会に自社フリートを更新するとみられます。

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