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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点, 航空機投資

2023年3~4月の商用航空機市場のセンチメント指数:航空関連セクターに見る価格決定力

June 1, 2023

誰が価格決定力を握っているかという点は、商用航空セクター全体における重要なテーマです。

Michael Graham, Ascend by Cirium

筆者:Michael Graham, Valuations manager at Ascend by Cirium

Ascend by Ciriumは2021年4月、商用航空機市場センチメント指数(CAMSI)を導入しました。この月次指標では、主要市場のステークホルダーへのアンケート調査を通して、市場センチメントと価値・リース料のトレンドを追跡します。ステークホルダーには、リース会社、銀行、OEM、パーツアウト事業者、航空会社、ブローカーが含まれます。

私たちはCAMSIにおいて、NPS指標の手法を使用しています。これは、「高過ぎる」または「上昇傾向にある」の回答数から「低過ぎる」または「下降傾向にある」の回答数を差し引き、それを当該の質問に対する総サンプル回答数で除した割合として算出されます。40~-40%の範囲のスコアは概ね「安定」を表し、-40%未満のスコアは「否定的センチメント(感情)」を表し、40%超のスコアは「肯定的センチメント(感情)」を表すものとします。


「あらゆるコストが高騰している」。 この嘆きは、最近のサプライチェーンの混乱、労働力不足、そして高インフレの中で、ますます多くの人々が口にするようになっています。今、生活費高騰の危機が消費者を直撃していることは周知の事実です。スーパーマーケット、エネルギー供給会社、さらには航空会社さえもが、そのような価格高騰を引き起こした”欲張り”な張本人として多方面から非難されています。しかし、価格高騰は、企業のコストの急激な上昇と、そのコストを顧客に転嫁できる能力の違いにも起因しています。コストをどれだけ転嫁できるかについては、基本的には企業の価格決定力次第です。提供するサービスの需要と供給、競争の度合い、そして非常に重要なこととして、顧客にどれだけ支払う意思と能力があるかによって決まります。

誰が価格決定力を握っているのかという問題は、航空関連業界全体の重要なテーマとなっています。この問題は、航空会社が運賃を設定する能力、OEMのエスカレーションレートや、リース会社がリース料の引き上げを通じて資本コストの増大を反映させる能力などに関わってきます。新型コロナウイルスのパンデミックが深刻化したころ、リース会社もOEMも、価格決定力をほぼ完全に失いました。各国の渡航制限措置により、航空会社が大半の保有フリートの駐機・保管を余儀なくされたからです。航空各社は、既存のリース料の支払いを継続することはおろか、機材の追加リースや受領を行うこともできない、あるいは行う意向もないという状況でした。このような需要の大崩壊に直面し、多くのリース会社は、機材を維持し続けるため、あるいは遊休在庫の機材を活用するために、価格の見直し、「最低価格ゼロ」のPBH (飛行時間に応じた整備)の取引、固定的なリース料の引き下げ、さらには支払い猶予を受け入れざるを得ませんでした。

ソース:Ascend Commercial Sentiment Index

CAMSIから得たリース料の平均NPSの推移を見ると、3年前に比べて現在は、リース会社の立場が逆転しているように見えます。

旅客需要の回復と、新造機の供給上の制約により、機材リースの価格決定力は、航空会社からリース会社に再び移ったように思われるのです。Ascend by Cirium Valuesが行ったデータポイントに基づくリース料の評価も、この仮説を支持するものとなっています。

例えば、ここ12ヵ月間において、エアバスA320-200シャークレットとボーイング737-800NGのリース料は、フリート加重平均・一定機齢ベースでそれぞれ21%および32%、引き上げられています。これは、中古機材のバイヤーにとっても、伝統的にシングルアイル機よりも流動性が低いツインアイルタイプの一部でさえ、多くの機種でますます売り手市場になりつつあることを示唆するデータです。ここ12ヵ月間でボーイング787-9は16%、エアバスA330-300(HGW)は17%、それぞれリース料が上昇しました。それでも、ここで留意しておきたいのは、多くの機材タイプの市場価値(MV)、リース料ともに、パンデミック前の水準に回復するにはまだ時間がかかるということです。

前述したインフレの抑制のために各国中央銀行が積極的に金利を引き上げているため、より割高な借入金利に直面しているリース会社にとっては、これらすべてが安心材料となるはずです。しかし、4月のCAMSIのNPS指標は、リース会社の価格決定力は決して絶対的なものではなく、航空会社が機材をリースするために単に「より多く支払う」意思があるとは限らないこと、またはその支払いができないことも示唆しています。今年4月の「リース料動向NPS」の全体平均は、当社が2月に行った前回のリース料調査時と比較して3ポイント下落しました。この結果は、1月から3月にかけて13ポイント上昇した「市場価値動向」の平均NPSとは対照的です。 

4月の市場価値の下落が5月の市場価値調査に反映されるかどうかはまだ不透明ですが、市場価値とリース料のNPSがともにしっかりプラス圏を維持していることは、覚えておきたいところです。それでも、こうした「修正」は、金利上昇と供給量の減少が徐々にリース料に反映されつつある一方、航空機のオペレーティングリースが依然として熾烈なビジネスであり、機材配備を巡るリース会社間の激しい競争が、リース料とリース料要因に緩やかな影響を与え続けていることを示しています。価格決定力は常に市場に左右されるものであるということを再認識させられます。


私たちは、市場のすべての側面を反映させるべく、常に新たなアンケート回答者を探しています。回答者には、調査結果の完全版(上記の内容は主な概要に過ぎません)を入手できるというメリットがあります。アンケートに回答するための時間はわずか3分ですが、それにより回答者は、入手し得る最も大局的な機材価値の市場トレンド情報を手に入れることができるのです。CAMSIのアンケート調査に参加したい方は、michael.graham@cirium.comまでご連絡ください。アンケート回答者には、調査結果の完全かつ詳細な分析(10以上のグラフを含む)が提供されます。

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