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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点

商用航空機市場のセンチメント指数:燃料について考える

November 3, 2022

航空会社にとって、燃料は最大のコストです。

Michael Graham, Ascend by Cirium

筆者:Michael Graham, Valuations manager at Ascend by Cirium

Ascend by Ciriumは2021年4月、商用航空機市場センチメント指数(CAMSI)を導入しました。この月次指標では、主要市場のステークホルダーへのアンケート調査を通して、市場センチメントと価値・リース料のトレンドを追跡します。ステークホルダーには、リース会社、銀行、OEM、パーツアウト事業者、航空会社、ブローカーが含まれます。

私たちはCAMSIにおいて、NPS指標の手法を使用しています。これは、「高過ぎる」または「上昇傾向にある」の回答数から「低過ぎる」または「下降傾向にある」の回答数を差し引き、それを当該の質問に対する総サンプル回答数で除した割合として算出されます。40~-40%の範囲のスコアは概ね「安定」を表し、-40%未満のスコアは「否定的センチメント(感情)」を表し、40%超のスコアは「肯定的センチメント(感情)」を表すものとします。


最近は、車にガソリンを入れるのにも高いお金がかかります。これは特に、ロシアのウクライナへの軍事侵攻の影響で燃料価格が過去最高となったこと、そして侵攻を続けるロシアから資金を奪うために同国のエネルギー輸出に関する制裁が行われたことが要因です。OPECとロシアなどの産油国で構成するOPECプラスが、原油価格を支えるために11月から1日あたり200万バレルの減産を決定したことも、ガソリン代の高騰に拍車をかけています。

それでは、航空会社について考えてみましょう。航空会社にとって燃料は最大のコストです。厳しい冬を迎えるにあたり、その価格は再び1ガロンあたり4米ドルを超えて急騰しています。また、軍事侵攻後に浮上した一つの商品トレンドとしては、「クラック・スプレッド」(原油と石油製品の価格差)の拡大があります。これはつまり、ジェット燃料とブレント原油のバレルあたりの価格差のことです。ここ数日間で、このスプレッドは4月以来最大の水準に達しています。この背景には、パンデミック後にジェット燃料の需要が回復したこと、ディーゼル燃料やジェット燃料などの石油製品に精製しやすい重質原油のロシアでの供給が減少したことなど、複数の理由があります。

ソース:US EIA

これを踏まえて、私たちは8月に一旦休止した商用航空機市場センチメント指数(CAMSI)の活用を再開するにあたり、2月の軍事侵攻開始前に初めて提起された疑問に立ち返って、調査の回答者に対して2023年第3四半期のジェット燃料価格の予測について見解を尋ねました。ジェット燃料の価格については、1米ガロンあたり3.0米ドルから4.0米ドルの範囲になると考える人が大多数(74%)でした。2022年9月19日時点では、米国ガルフコースト価格(FOB)はわずか3.06米ドルでした。逆に、今年2月時点では、2023年第3四半期に1米ガロンあたり3.0米ドルを超えて価格が上昇するとみていた調査の回答者の割合は、わずか24%でした。

機材のリース料に目を移すと、マクロ経済の不確実性が増しているにもかかわらず、機材需要が回復し、 旅行市場も拡大していることから、全体としては引き続き堅調に推移しています。リース料の動向については、新造機のボーイング737 Max 8のNPS(ネットプロモータースコア)が+65%となり、CAMSIランキングのトップの位置を維持しています。とは言うものの、今年2月以降、エアバスA320-200neoはアメリカのボーイングのライバル機に徐々に追い付き、NPSスコアが2月の最低値の+29%から現在は+57%に上昇しています。この上昇により、A320-200neoはより大型のA321-200neoと肩を並べる位置にまで上がってきました。しかし、市場では、A320-200neoには、737Max 8との比較において、わずかながらなおリース料のプレミアムが設定されていることは、覚えておくとよいでしょう。

旧型の機種をみると、機齢10年のボーイング737-800NGが引き続き、エアバスA320-200ceoをリードしています。しかし、2022年には、このヨーロッパの機材であるA320-200ceoのNPSスコアが継続的に上昇している一方、737-800のNPSスコアは6月以降に5ポイント後退しています。これはもしかすると、737Maxの供給が増大し、旧型機である737-800のリース料をやや低下させていることの表れかもしれません。

一般にリース会社の”飯の種”とされるシングルアイル機ですが、相対的に長らく停滞していたツインアイル機のリース市場にも、今夏の初め以降、駐機・保管機数が300機以上減少するなど、明るい兆しが見え始めています。Ascend価値評価委員会(VRB)は7、8、9月の3ヵ月の間に、ボーイング777-300ERや787-9を含む多くのツインアイル機の価値とリース料の引き上げ作業に着手しました。エアバスA330-300の市場価格とリース料は、最新の分析では安定的に推移していますが、新型のA350-900は現在、評価中となっています。

その回復ぶりは、リース料の推移のNPSスコアにも表れています。ボーイング787-9は、エアバスA350-900に対して僅差のリードを保ち続けています。実際、ボーイングは787ドリームライナーの納入を再開する許可を得ており、個々の機材が米連邦航空局(FAA)の検査対象になるとはいえ、この機種がようやく確固たる基盤を築いたようにみえます。2021年に起きた数多くの航空会社の再編劇に伴い、市場のリース料が大きな打撃を受けた後、A350-900もその保管料が下落し、リース料に若干の上昇圧力が見られるなど、現在はしっかりとプラスの領域に入っています。

新造機の供給が引き続き制御され、旅客需要が回復し、燃料価格が高騰していることにより、より効率的な航空機が有利になっていることから、前述のプラス基調は継続すると結論づけられます。ただし、インフレや金利上昇によって顧客の経済状態が悪化し、企業の事業コストも上昇していることから、必ずしも進行中の回復が今後も続くとは言えません。


私たちは、市場のすべての側面を反映させるべく、常に新たなアンケート回答者を探しています。回答者には、調査結果の完全版(上記の内容は主な概要に過ぎません)を入手できるというメリットがあります。アンケートに回答するための時間はわずか3分ですが、それにより回答者は、入手し得る最も大局的な機材価値の市場トレンド情報を手に入れることができるのです。CAMSIのアンケート調査に参加したい方は、michael.graham@cirium.comまでご連絡ください。アンケート回答者には、調査結果の完全かつ詳細な分析(10以上のグラフを含む)が提供されます。

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