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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点

Ascend Consultancyによる今後の展望:商用ジェット向けパーツアウト市場は回復しつつあるのか?

March 13, 2023

機体の退役・パーツアウト市場はここ24ヵ月間、数量的に例年よりはるかに低い水準で推移してきました。

Rob Morris, Ascend by Cirium

筆者:Rob Morris, Global head of consultancy at Ascend by Cirium

今週、EirTrade Aviationが所有者に代わって2機のボーイング787-8の解体・委託業務を管理するというニュースがありました。これには、商用ジェット機(シングルアイル機とツインアイル機)のパーツアウト市場が数年前から低迷が続いていることを実感させられました。Cirium Fleets Analyzerのデータベースには、2019年に502機の機材の退役が記録されました。それ以降、2020年、2021年、2022年には、それぞれ465機、333機、325機の退役が記録されています。データには常に若干のタイムラグがあるため、2022年の合計数は最終的にやや増加する可能性があります。しかし、退役・パーツアウト市場で取引された機体数は、ここ24ヵ月間、例年よりはるかに少ない水準で推移したことは明らかです。これまでの経緯を見ると、2010年から2019年までの最後の景気拡大サイクルにおける年間平均の退役・パーツアウト機数は540機弱となっており、最高は2013年の694機でした。

その後、航空会社がここ数年間、退役の数量を減らした要因は明確です。コスト管理のために機材の稼働率を下げ、機体の整備費用を最小限に抑えたからです。

そのため、機体の中古使用可能資材(USM)や部品取り用エンジンの需要は低水準にとどまりました。一方で、2019年までの比較的高いレベルの退役・パーツアウト活動により、多くのUSMやエンジンが「保留」状態となっていたため、供給自体は相対的に高水準で維持されました。しかし、2022年には機体のメンテナンス活動が再び活発化して取引数量が多くなってきたため、機体資材の消費量がますます増加し、一方で供給量は減少しました。

これはつまり、2023年には確実に、再びパーツアウト活動が活発化するということなのでしょうか?前述の787-8は、この機種としては、パーツアウトされる最初の(商業的に納入された)事例です。これらの機材は、具体的には製造番号(MSN)が35304と35305であったと記録されています。両機は製造後、それぞれ(当時のオペレーティングリース会社であるILFCからリースされた機材として)2013年6月と8月にノルウェー・エアシャトルに納入されていました。この2機は、さまざまな所有者の変更を経て、2019年、グラスゴー・プレストウィック空港に駐機・保管されました。同空港は実際に、グラスゴーから南西に35マイルほど離れたエアーシアの海岸に位置しています。当時、ロールス・ロイスのトレント1000エンジンはタービンブレードに問題を抱えており、これを搭載していた当該の787-8は、エンジンの修理が予定されている間、駐機していたと推測されます。

とはいえその後、世界は新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われ、2年前にはノルウェー・エアシャトルが事実上の経営破綻に追い込まれたことも周知の事実です。そのような背景から、2機の787-8は4年近く経った今でも、エンジンについては取り外されて別の場所に保存されているものの、機体そのものは同じ場所に駐機・保管されたままなのです。現在、駐機・保管されている787-8は世界的に見ても少ないのですが、需要も低くなっていることから、「機体の解体後のサプライチェーンを効率化して価値を最大化する」ために、パーツアウト市場へと向かわせることになります。Ascendの鑑定によると、2013年に製造された787-8の半減期の市場価値は現在、3,000万ドルとなっています。これに相当するパーツアウトの鑑定額は、同じく半減期であることを考慮すると、2,000万ドル(ダウンサイドシナリオ)から4,900万ドル(ベースシナリオ)の範囲です。もちろん、私たちはその機材の機体やエンジンの状態は把握していませんが、所有者は、「現状のまま」の状態で売却したり、メンテナンスに再投資してからリース(当社の現在の市場リースレートでは月額約37万ドル)に出したりするよりも、パーツアウトした方がより良好な価値を実現できると思われます。

しかし、ノルウェー・エアシャトルの話はさておき、2023年から現在までの初期データを見ると、今年はパーツアウト市場の取引数量が極めて多くなることが示されているようです。今年の年初から2月末までの退役機材数は69機(下の表参照)となっています。2022年の同じ期間の退役機数は、わずか45機でした。2019年の同じ期間は73機でした。今はまだ3月の段階ですが、前景気サイクル終了時の年間退役機数に戻る可能性があるように思われます。

Selected Types
Type2023 RetirementsAverage Age (Yrs)
737-600717.0
737-700224.0
737-800321.4
787-829.6
A318118.1
A3191218.7
A320623.5
A321226.1
A330-300422.5
All SA & TA6925.3

最後になりますが、退役機の内訳も興味深い様相を呈しています。737-600と-700が計9機、A318とA319が計13機という構成は、(今では旧世代の)737NGやA320ceoファミリーといった小型で経済的に利益性の薄いバリアント(変異機種)の機体が、まずはエンジンを取り外してリースするために活用され、その後は機体部品やランディングギアなどをUSM市場に提供するために活用される有力な候補になることを示唆しています。旅客から貨物へのコンバージョン市場はおそらく今後数年で飽和状態になり、結果としてドナー機体の需要も減退するため、2023年は、退役規模がようやく2019年以前のレベルに戻る年になるのかもしれません。


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