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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点

Ascend Consultancyによる今後の展望:オフショア ― 希望を持てる理由

January 27, 2023

2022年第3四半期には、苦境に立たされていたシコルスキー社のS-92Aとレオナルド社のAW139の需要がともに増加し、両機種の価値が向上しました。

Sara Dhariwal, Ascend by Cirium

筆者:Sara Dhariwal, Senior Aviation Analyst at Ascend by Cirium

2022年初頭には、原油価格の高騰と継続的な業界再編により、オフショア航空市場は安定する見通しであることを示す兆候がありました。しかし、石油・ガス部門の変動性にさらされるフリートの割合が高い機種を中心に、依然として余剰感が目立ちました。

この数年間で、私たちはオフショア業界の状態を表す言葉を「グリーンシュート」(緑の芽)から「シーウィード」(海藻)に変更しました。市場が改善する兆しは見えるものの、その大部分はまだ水面下にあり、先行きも不透明なものだったからです。とはいえ、ある種の海藻の最大の長所は、一定の条件下では驚くほど速く成長することです。

新型コロナウイルスの大流行から世界が脱却し、ウクライナ侵攻でロシアへの制裁が強化される中、各国は直ちにエネルギー供給先の確保に乗り出しました。2022年第3四半期までには、苦境に立たされていたシコルスキー社のS-92Aとレオナルド社のAW139の需要が増加したため、余剰生産能力がオフショア関連業界に投入され、両機種の価値向上につながりました。

石油・ガス業界の不況が始まって以来、このセクターに対して大きなエクスポージャーを有するヘリコプターの価値が向上したのは初めてのことでした。

こうした現在の石油・ガス部門の需要指標は、7年間の低迷を経て、確かに明るい材料になっていると言えそうです。

もちろん、景気回復が円滑でない場合も多く、インフレ圧力による経済的負担、経済成長の減速の見通し、サプライチェーンやMROのキャパシティに関する問題など、多くの市場要因が作用しています。

2016年以降の景気後退を考えれば予想し得ることですが、オフショア分野への機材の新規納入は大幅に減少しています。Cirium Fleets Analyzerのデータによると、2010年から2015年まで年間平均100機強のヘリコプターが納入されたものの、次の2016年から2021年までの5年間は30機弱に減少しています。2022年には14機の納入が記録されましたが、OEMメーカーがまだ正式な数字を発表していないため、変更される可能性があります。新たな投資を行うことを正当化するためには、需要が継続し、現在の経済状況が将来の投資と釣り合うことについて、妥当な程度まで確信できていなければなりません。

ソース:Cirium Fleets Analyzer

Ascend by Cirium 2022 Helicopter Fleet Forecastでは、当面の間、業界は低水準の納入を継続し、現在のフリートの約20%の入れ替えに焦点を絞るだろうと予測しています。

この業界が常に発展し続ける中、将来の需要を予測することは困難です。現在、化石燃料への依存を減らす傾向や、新しい技術の出現が見られます。ここでいう新技術とは、新たな輸送手段だけではなく、石油掘削装置(オイルリグ)をより少ない人員で効率的に稼働させるような技術のことも指しています。

過去のデータを見ると、景気回復のピーク時、石油掘削装置1基に対するヘリコプターの割合は約0.55機で、当時はキャパシティが機材の供給量をはるかに上回っていました。逆に景気低迷期には、石油掘削装置1基に対してヘリコプター1.1基という割合になり、供給過剰で需給バランスが悪化し、価値の押し下げ圧力が強まりました。

現在、入手可能なデータでは、ヘリコプターの割合は掘削装置1基あたり0.8機となっています。このデータから、とりわけオイルリグの近代化が進んでいることを考慮すると、ヘリコプターはなお供給過剰の水準になっていることがわかります。

経済的な観点から見たヘリコプターの重要なメリットの一つは、資産としての強力な残存価値、すなわち有用な経済寿命です。これは、Ascend by Ciriumのモデルでは30年となっています。

納入数の減少は悪い兆しに見えるかもしれませんが、過去数年間のOEMの自制ぶりは賞賛に値するものであり、この資産クラスの高い残存価値を支えています。

経済寿命を維持し、投資の魅力を高め続けるためには、新規発注ではなく、既存機材を使用することが重要であることは明らかです。もちろん、新しい機材を買うより、機材を再利用する方が環境に優しいことは言うまでもありません。

エアバス・ヘリコプターズが最近発表したZF Luftfahrttechnikの買収は、OEMである同社がこのセクターでの地位向上を目指していることの表れかもしれません。

これからの数年間は間違いなく、この業界の将来を決定付ける重要な期間になるでしょう。

その他の市場について

その他の救急医療サービス(EMS)や捜索救難(SAR)といったセクターでは、価値が2022年を通じてほぼ横ばいの状態が続きました。

ベル 505、ベル 407、レオナルド AW109のような法人向け小型機市場では、新造機の長いリードタイムに助けられながら、需要が増加して余剰キャパシティを吸収したため、中古機フリートの価値が堅調に推移し始めました。

しかしながら、企業のヘリコプター利用はGDP成長率の変動幅に大きく影響されるため、2023年に予測される経済成長の鈍化の影響を受ける可能性があります。

準公共部門は、政府支出に大きく依存しています。世界情勢が不安定化する中、そうした政府の予算は防衛費に多く割かれることが予想され、EMS、SAR部門への支出に影響を与える可能性があります。

今年も、ヘリコプター分野にとって興味深い年になることは間違いありません。Ascend by Ciriumのチームは、今後も市場の動向に注意しながら、価値に影響を与える可能性のある動きを監視し続けていきます。詳細については、当社にお問い合わせください


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