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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点, 航空機業界の動向予測

分析:中国のパンデミック後の回復に向けた険しい道のり

July 11, 2023

中国系航空会社は、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響からの回復に関しては世界から遅れていますが、それでも今後10年間は、世界の航空関連市場を支配することになるでしょう。

筆者:Asia Finance Dashboard Editor, Vanessa Gu

今年1月に2019年の水準に戻った中国のフライトのキャパシティは、今年第3四半期末まで引き続き増加し、パンデミック前の水準を30%上回ると予想されています。

Rob Morris, Ascend by Cirium

しかし、6月27日に開催されたブルームバーグ・インテリジェンスの中国航空業界の回復に関するウェビナーで、Cirium Ascend Consultancyのグローバルコンサルタント統括であるRob Morrisが発表したデータによると、この増加傾向は圧倒的に国内旅行によるものであり、一方の国際便の回復は依然として抑制された状態となっています。

「機材供給の問題もありますが、地政学、運航ルートの権利、それに国内政治や国家間の関係、信頼性に関する問題もあります」と、Morrisは述べています。

遅れる国際線市場の回復

Cirium Diioのスケジュール・データによると、6月の中国発着国際線の座席供給量を示す有効座席キロ(ASK)は、パンデミック前の水準と比べて50%以上減少したことが明らかになっています。

ソース:Cirium Schedules

2023年9月の中国発着国際線の座席供給量(キャパシティ)は、平均で前年比48%減のままです。2019年9月には中国発着の国際線キャパシティの16%を占めていたアメリカ―中国線の運航便数は、運航路線の権利や地政学的な問題により、今年9月には80%以上減少しているだろうとMorrisは話しています。

ソース:Cirium Schedules Data, 22 June 2023, brackets indicate total share of September 2019 China International Capacity

十分に使用されていないフリート

世界的に見れば、機材稼働率も2019年の水準に戻っているものの、中国についてはシングルアイル機、ツインアイル機ともにそうなってはいません。これにより、「既存の機材をさらに活用し、路線ネットワークにさらなるキャパシティを生み出す重要な機会」が生まれることになるとMorrisは考えています。

Ciriumの機材追跡データによると、中国のツインアイル機の稼働時間は1日平均7.5時間で、世界の同約12.5時間を大きく下回っています。

シングルアイル機の方の稼働率も、世界平均の約9時間に対し、中国は8時間弱と低くなっています。

ソース:Cirium aircraft tracking data

Morrisは、こうしたツインアイル機の稼働率低下は、ワイドボディ(ツインアイル)機が主に国内線ネットワークで運航されていることを明確に示していると指摘し、「国際線の方の成長を可能にするためには、実質的により多くのシングルアイル機、あるいは他のツインアイル機がフリートに組み入れられ、現在ワイドボディ機運航および国内市場にあてがわれているキャパシティを解放できるようにする必要がある」と語っています。

Morrisはまた、このような目先の課題があるにせよ、中国は「座席キャパシティ面で今後10年間、世界の増加率を大幅に上回る」と述べ、その伸び率は世界全体の伸び率の1.6倍になる見込みだと付け加えています。

これにより、中国の機材フリートは倍増し、今後10年間で約3,800機の新造機が必要になると予想されています。

中国系航空各社は現在、発注残として750機しか新造機を確定発注していませんが、これは各社が事実上、予想される需要に基づいて「少なく発注した可能性がある」ことを示しているとMorrisは述べています。

C919が台頭する?

中国がフリートの倍増を目指す中、Comac(中国商用飛機)のC919は、同国系航空会社の今後の成長計画において重要な役割を果たすと期待されています。

Cirium Ascendは、中国で必要となる新造機のフリートのうち、500機のC919が今後10年間に就航し、新規納入機数の15~20%を占めると予想しています。

これは重要な数字ではありますが、依然としてエアバスが予想する1,500機、ボーイングが予想する800機のそれぞれ納入数を下回っているとMorrisは指摘しました。

現在までに中国東方航空が商用運航したC919は1機のみで、今年5月28日に128人の乗客を乗せて上海発着便を就航させています。

Ciriumのフリートデータによると、Comacは今年末までに、さらに8機のC919を納入する予定です。エアバスやボーイングがサプライチェーンの問題に直面している今、Comacには市場シェアを拡大するチャンスが到来しているわけですが、それはMorrisによると、「この機会にすぐ実行できれば」という条件付きです。加えて彼は、Comacが「既存の有力OEM」よりもうまく納入を実行するのは難しいとも話しています。

Morrisは、中国におけるエアバスおよびボーイングのナローボディ機フリートは99%以上の出発信頼度(Dispatch Reliability)を誇っており、航空各社はC919にも同様の水準を達成することを期待していると指摘しています。

C919が市場で有力な競合機種となるには、このレベルの出発信頼度で1日8時間から9時間程度、稼働できるようにする必要があるのです。

中国の航空セクターには成長のビジネス機会があるのは間違いありませんが、大きなリスクと逆風にも晒されています。そのビジネス機会は、コロナ後の世界で生まれたものであるため、私たちが既に知っているようないつも通りのビジネスではない可能性があるのです。

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