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航空業界のAIに関するQ&A:Kevin Hightower(製品マネジメント担当副社長)とNiha Shaikh(製品担当副社長)

October 17, 2023

Kevin HightowerとNiha Shaikhが、AIとは何か、そしてAIが航空業界にどのような影響をもたらすのかを考察します。

Kevin Hightower, VP of Product Management

今年は特に、ChatGPTのような生成AIツールが大いに注目を集めました。AIは多くの人によって、現世代で最大の”破壊的技術”であると称賛されています。そして政府や関連業界団体は、このテクノロジーを適切に規制するための効果的なチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)のシステムの確立に向けて、大急ぎで(そして状況に受動的に対応しながら)取り組んでいます。

Nina Shaikh, VP of Product for Cirium Sky
Niha Shaikh, VP of Product

このQ&Aでは、CiriumのKevin Hightower(製品マネジメント担当副社長)とNiha Shaikh(製品担当副社長)が、AIとは何か、そしてAIが航空業界にどのような影響をもたらすのか、さらにはAIを積極的に活用した場合に航空業界の未来がどうなっていくのかについて考察します。

AIとは?

AIとは基本的に、コンピュータ・システムによって実行される一連の機能のことであり、それを完成させるには通常、人間の知性が必要となります。本質的には、人間の思考や問題解決法を模倣する技術です。

AIは最近、ChatGPTのような生成型ツールの台頭により脚光を浴びるようになっていますが、それは「新しい」技術なのでしょうか?

テクノロジーとしてのAIは、実は新しいものではありません。生成AIツールは、ChatGPTやGoogle Bardのようなツールのインターフェースの進化によって、より主流の技術となり、広く使われるようになりました。今までは、コモディティ化されていたり、ユーザーにとって特に使いやすかったりするインターフェースは存在しなかったのです。

多くの企業や業界は、バーチャルなカスタマーサービスツールや予測入力といった形でAI技術を利用していることに、これまでは気づいていなかったかもしれません。このテクノロジーは生成AIの爆発的な普及によって初めて、総じて中心的な位置を占めるようになったのです。

現在のAIは、航空業界にとってどの程度有用なのでしょうか?

生成AIが得意とすることは2つあります。1つは、まず手始めに、今まさにユーザーが直面している問題に関する質問に対し、答えを出していくことです。もう1つは、既にそれを作り出してはあるものの、さらに深みを加えたいと思うような対象に、磨きをかけていくことです。

つまり、航空業界にとっては、例えば、利用者のプロジェクト開始を手助けをしたり、業界の動向についての質問や、ある航空会社または空港の背景に関する質問に答えたりするのに適しています。しかし、現時点では、この技術を活用するモデルには、業界やその関係企業についてより多くの情報に基づいた分析的な判断を下すために必要な、完全なデータセットや批判的な分析能力はありません。

航空業界は他の多くの業界と同様、データに大きく依存していますが、生成AIツールは、現在の形では、各種の数字や高度に蓄積されるデータを扱うことに対し、特に長けているわけではありません。

それでも、これも他の多くの業界と同様に、このAI技術は、航空業界の関係者のアナログ的な日常業務の時間を減らすのに役立つ可能性があります。

適切な種類のタスクにAIを効果的に活用することで、業務ループ内にいる人間の認知的負荷を大幅に軽減することができるのです。それは、人間に取って代わるものではなく、優れた意思決定を行おうとする際、人間の能力を補うのに役立つものです。

AIは業界にとって何らかの脅威となるのでしょうか?

いいえ、むしろ業界をサポートし、向上させるはずです。もし日常業務の一部を自動化できれば、より批判的な思考や人間の洞察力を必要とするような、日常的ではない業務に費やす時間を確保することができます。

航空業界にとっては、人が行わなければならない面倒な作業の数を減らすのに役立ちます。AIが適切に活用されれば、より良い成果、より良好な旅客体験、より安全でクリーンな旅行、そしておそらくは従業員の定着率と採用活動の改善にもつながるはずです。

特に航空会社や空港にとって、AIはどの程度有用なのでしょうか?

AIは、航空会社や空港のオペレーションを一変させる可能性を秘めています。航空会社や空港のオペレーションには多くの盲点やサイロ化が見られます。このため、このテクノロジーを効果的に活用することにより、そうした盲点やサイロ化が解消され、業界の運営・運用方法が本質的に変革される可能性があります。

私たちは既に、航空会社が顧客体験の向上に役立つAI搭載のチャットボットなどのツールを導入し、リテールや商用面でさまざまなAI技術を活用しているのを目の当たりにしています。つまり、こうしたAIを活用したツールが、航空会社のオペレーション全体に浸透するのは時間の問題なのです。

AIの導入は、実は他の新しい技術を採用するのと同じことです。良いやり方もあれば、悪いやり方もあります。適切なデューデリジェンスとチェックを行い、事業のニーズに合った正しい方法でテクノロジーが導入されれば、それは航空会社や空港にとって、ビジネスの真の牽引役として機能するはずです。

航空・旅行セクターのAIは将来、どのような役割を果たす可能性があるのでしょうか?

特に無人航空機システム交通管理(UTM)市場の台頭を考慮すると、AIの可能性は無限だといえます。これまで有人の乗り物のみが占有していた空域を、無人機を含めたより多くの飛行物体が共有することになるからです。UAVの市場はこれから拡大する一方となりますが、現在のシステムはそれに対応できるものにはなっていません。だからこそ、AIのような新技術は、将来の航空輸送量の増加に対応する上で、システムの向上に役立つ大きなチャンスを生み出しているのです。

航空業界は、技術革新や進化と縁の深い業界です。実際、GPS、無線通信、レーダー技術など、特定の画期的技術の採用に関してはリーダー的存在です。

AIの活用は、業界をより良く変え、業務をより効率化し、プロセスを最適化することを通して、航空業界全体のパフォーマンスをさらに向上させる可能性があるのです。

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