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ANA: 定時到着率、世界1位

ANAは、Cirium(シリウム)の航空データの分析から得られるインテリジェンスを活用し、定時運航を含む主要な運用指標のベンチマークを行っています。 Ciriumのデータは、将来および過去のフライト時刻表から、リアルタイムの運航情報やフリート情報まで、航空会社が時刻表と路線計画を最適化し、フライト遅延やゲート情報をモバイルアプリなどで通知することで顧客満足度の向上や、混乱を最小限に抑えるのに役立ちます。2,000のデータソースから収集される300テラバイトを超えるCiriumのリアルタイムのデータ分析は、正規化され、保存され、簡単にアクセス可能であり、航空会社はデータに基づきビジネスおよびオペレーション上の意思決定を行うことができます。Q&Aは以下から読んで下さい。

Q:コロナのパンデミック流行を鑑みるとANAは4冠達成しただけでなく、非常に高い定時到着率を残している。この好成績を達成するのにオペレーションのデジタル化がどのように作用しているのか?

平子 裕志 氏, 全日本空輸株式会社代表取締役社長 (取材当時)

ANAのオペレーションに従事する全ての者が、顧客志向に立って行動し互いに協力しながら、お客様の期待に応える品質の提供に努めています。その基盤となる考えは、お客様・社員の「安心」と「信頼」を第一に考え、航空運送事業の基本品質を「安全性、定時性、快適性、利便性」と定めていることからも明白です。

この度、2021年のCirium社による調査で、ANA+ANAウイングス+エアージャパン合計のネットワーク部門と、ANA単体の両部門で世界第1位、ならびにアジア・パシフィック部門でも1位に認定されました。重要な事は、これがオペレーションに従事する全てのスタッフの日頃からの定時運航への意識の変化と行動の成果であり、誇りに思うとともに、「ANA便は時刻に正確だ」と感じていただけるお客様が増えることを嬉しく思います。

ANAでも、他の航空会社と同様にオペレーションのデジタル化に努め、運航に関わる業務は高い率でシステム化されており、今後もデジタル化を推進していきます。

平子 裕志 氏, 全日本空輸株式会社代表取締役社長 (取材当時)

ANAがこだわったのは、社内システムのデジタル化はもとより、お客様とのコミュニケーションのデジタル化です。より一人ひとりのお客様にOne to Oneなご案内を届けられるように、運航情報や搭乗に関するご案内をパーソナルデバイスに届けるサービスをデジタル化で実現しました。搭乗開始の案内はもちろんのこと、ご出発の前日に搭乗予定便の混雑案内や保安検査場の混雑予測をお伝えしています。お客様は混雑状況を踏まえて早めに空港に来られ、コロナ環境下では空港での混雑を避けて余裕をもって出発いただけます。羽田空港のような大きな施設では、保安検査場から遠い搭乗口からの出発の場合にお知らせもしています。一人ひとりのお客様にあった情報を提供することで、お客様のご理解・ご協力を得ることができ、お客様と共に定時品質を創りあげています。

一人ひとりのお客様にあった情報を提供することで、お客様のご理解・ご協力を得ることができ、お客様と共に定時品質を創りあげています。

平子 裕志 氏, 全日本空輸株式会社代表取締役社長 (取材当時)

2021年定時運航レポートをダウンロードする

ANAの定時運航に関する統計を見て、2021年に世界で最も定時運航が多い航空会社になる理由を知ってください。

Q:テクノロジーとデジタルトランスフォーメーションの推奨/唱導において、ここ数年のANAの定時品質向上にデータ分析をどのように活用したのか?

平子 裕志 氏

ANAグループは、ANAグループ各社・オペレーションに関わる各部門で定時品質を推進するチームを構成しています。

このチームが、定期的にデータ分析をし、ボトルネックとなっているプロセスを可視化し対策を講じています。例えば、過去定時出発率が伸び悩んだ際に、ドアクローズ時間を見直し、早めにドアクローズをする文化を浸透させました。

ANAでは、オペレーションの実績ならびに各工程のデータを社内システムに蓄積し、社内でも利用できるようになっています。定時品質のチームだけでなく、各空港や部門でも独自にデータ分析を実施し、自分たちのオペレーションの振り返りと課題解決を意欲的に行っています。Cirium社のデータを利用することで、世界中の航空会社のデータとの比較ができるので、相対的分析が進みました。

ジェレミー ボーウェン, CEO, Cirium

ご存じの通り、Ciriumでは、フライトの時刻表、運航データ、航空機鑑定や機体番号別の機材仕様まで、毎日300テラバイトを超える航空データを収集し、管理しています。こうした豊富なデータを航空会社がいつでも利用できる状態にしておくことで、特に現在のような、市場の変化が激しく、確定的だと判断できることなど何もない状態においても、航空会社が日々のオペレーションで柔軟性と高い対応力を確保できるようにしています。

Ciriumは航空データ分析企業です。 この分析は、主に4つの層で構成されています。記述的分析(過去に何が起きたか)、診断的分析(なぜ起きたのか)、予測的分析(将来何が起こるか)、処方的分析(予測される事態に何をすべきか)の4つです。これらのデータセットは、フライト予約から搭乗、離着陸、さらには機材整備まで、航空会社の業務プロセスのさまざまな工程を評価するうえで効果を発揮します。

航空会社は、当社が収集した各データセットを活用することで、社内や、競合他社との比較のため、ベンチマークの作成やモニタリング、パフォーマンスの改善の分析が可能に
なります。定時運航率の分析はその好例といえるでしょう。また、航空データにリアルタイムでアクセスすることで、収益向上の機会を迅速に特定することもできます。

データは、さまざまな外部データソースや、航空会社の
オペレーションなどから収集されますが、それらは1か所に集約され、分析も簡単です。自社のパフォーマンスについて360度の視点で情報を収集できるため、意思決定者は、より効果的かつ効率的に意思決定を下すことができます。

航空会社は、当社が収集した各データセットを活用することで、社内や、競合他社との比較のため、ベンチマークの作成やモニタリング、パフォーマンスの改善の分析が可能になります。

ジェレミー ボーウェン, CEO, Cirium

Q:コロナのパンデミック流行はANAのオペレーションにどのような影響を与えたのか?ANA独自の、もしくは予期しなかった挑戦は?

平子 裕志 氏

新型コロナウィルスの最も大きな影響は、ANAだけでなく航空業界における人的流動の激減です。ANAでも国の新型コロナ対策に合わせ、国際線・国内線で運休や減便が発生しました。定時品質の観点では、世界的にコロナ影響で航空需要が低迷し減便となったことで、空港施設や航空交通路混雑による遅延が抑制されました。航空業界全体として、新型コロナウィルスが流行する前と比較して、定時性が高まる航空会社が増えました。その中でもANAグループは高みをめざし、2021年はNetworkで95.28%、 Mainlineで95.04%という高位な実績を残し、世界一位に認定されました。

ANA Cares

新型コロナウィルスはお客様の意識も大きく変えました。感染防止の観点で衛生やソーシャルディスタンスへの意識が高まりましたが、ANAグループは、空港・機内などあらゆるシーンで清潔・衛生的な環境を提供する新型コロナウイルス感染症予防対策「ANA Care Promise」の取り組みをいち早く進めました。衛生やソーシャルディスタンスの確保のため、通常より出発・到着時に時間を要すことから搭乗降機方法を見直し搭乗降機時間の伸びを最低限に抑えるなど、様々な工夫をして定時運航に努めています。現在は、出発時の機内へのご案内で機内・通路における密を回避し、スムーズにご搭乗いただけるよう、機内へのご案内の順番を変更しました。

Q:コロナのパンデミック流行はANAのオペレーションにどのような影響を与えたのか?ANA独自の、もしくは予期しなかった挑戦は?

平子 裕志 氏

Ciriumは、世界の600を超えるデータソースからリアルタイムに収集している世界でも類を見ない規模の会社であり、データの信頼性は高く、重要な評価基準と考えています。新型コロナウィルスのパンデミック流行で航空会社の運航便はめまぐるしく変動しました。

日々変動する各社の運航情報をリアルタイムにデータ分析できるCiriumのソリューションを使い、分析を深めています。

平子 裕志 氏
ジェレミー ボーウェン

Ciriumのミッションは、最大限に正確かつタイムリーな情報を顧客に提供することです。そのため当社では、必要なときに、必要な場面で正しいデータが、顧客に合った形で、効率的に提供されるように努めています。

正確なリアルタイムデータをいつでも提供できるようにすることは極めて重要です。これにより航空業界は、厳しい状況においても迅速に方向転換できるようになります。パンデミックが始まったころ、航空データと分析は極めて重要な役割を果たしました。誰もが、次にどう行動すべきかを必死に見極めようとしていたころです。従来しっかりと体系化されていたこの業界が突如、先行き不透明になり、多くの問いが浮上してきました。6~8か月後のフライトスケジュールには何が起こるだろうか。運航を続けるべきはどの機材で、地上に待機させるべきはどの機材だろうか。事業を継続させるために一部の機材を現金化した方がよいだろうか、といった問いです。

そうしたなか、航空会社や空港、さらに政府機関は、Ciriumのデータを活用することで、将来の業務シナリオを立てるための効果的な手段を獲得できました。たとえば、Diioという分析ツールから、フライトの時刻表やフリート、旅客数などに関するデータをもとに需要予測を立てることができました。

私たちは現在も、「フライト数と旅客数が通常レベルに戻るのはいつだろうか?」と問い続けています。 また同時に、このパンデミックを乗り越えつつ、新しいデータによって新しいトレンドも継続的に発見しています。その好例が、航空貨物が航空会社にとって思わぬビジネスチャンスとなったことです。こうした業界インサイトを迅速に理解していくことこそ、航空会社が業務を賢く調整していく助けになるのです。

Q:コロナのパンデミックが始まってから航空会社各社のオペレーションはどのように変わったのか?航空会社の運航における最もデジタル化が期待できるエリアは何か?

平子 裕志 氏

パンデミックによりお客様の非接触型のサービス需要が高まっており、ここ数年は空港~搭乗・降機+イレギュラー時のセルフサービスを重点的に拡充しています。運航におけるデジタル化については上述のとおり、社内システムのデジタル化とお客様とのコミュニケーションのデジタル化を進めています。また、航空機移動の予定にあわせて、お気に入りの観光スポットやレストランを予定に追加することで、旅に行く前にはアプリ上で計画を立てて、旅の間はスマホで旅のしおり」を開けばスマートに移動でき、旅から戻った後も、思い出として残すことができる「旅のしおり」というサービス提供も始めました。このように、ANAでは旅行計画サポート・予約・搭乗の各シーンにおけるパーソナライズでセルフ完結型のデジタルサービスを拡張していきます。

ジェレミー ボーウェン

このパンデミックにも光明がいくつかありますが、その1つは、航空業界のデジタル化が加速したことです。旅客間の感染リスクを減らすための非接触のチェックイン、スケジュール調整や路線計画、旅客数の予測などの業務プロセスを迅速化することなどです。プロセスのすべてのステップが測定可能になり、データを蓄積することができれば、より効果的な業務の流れになるようにそれらのステップを最適化することができるでしょうし、実際にそうなるはずです。

また、このパンデミックが始まってから、航空業界のサステナビリティへの取り組みも加速しました。

ジェレミー ボーウェン

そうしたなか、航空会社や空港、さらに政府機関は、Ciriumのデータを活用することで、将来の業パンデミック以前は、多くの企業でサステナビリティは、ほぼ間違いなく優先順位の最下位に位置していました。それが今では、この業界の主要な目標の1つにまで駆け上がりました。しかしデータがなければ、このサステナビリティ目標の達成度を測ることはできません。 たとえばCO2排出量を測ることは簡単ではありません。Ciriumは現在これに取り組み、航空会社によるそれぞれのサステナビリティ目標の達成を支援するため、この取り組みを続けていくつもりです。

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