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Ascend Consultancy, 航空専門家の視点, 航空機投資

商用航空機市場のセンチメント指数:あえて古い機材に注目する

February 20, 2023

民間航空機の世界では今、2023年の幕開けとともに古い機材が大流行しているようです。

Michael Graham, Ascend by Cirium

あえて古い機材に注目する

筆者: Michael Graham, Valuations manager at Ascend by Cirium

Ascend by Ciriumは2021年4月、商用航空機市場センチメント指数(CAMSI)を導入しました。この月次指標では、主要市場のステークホルダーへのアンケート調査を通して、市場センチメントと価値・リース料のトレンドを追跡します。ステークホルダーには、リース会社、銀行、OEM、パーツアウト事業者、航空会社、ブローカーが含まれます。

私たちはCAMSIにおいて、NPS指標の手法を使用しています。これは、「高過ぎる」または「上昇傾向にある」の回答数から「低過ぎる」または「下降傾向にある」の回答数を差し引き、それを当該の質問に対する総サンプル回答数で除した割合として算出されます。40~-40%の範囲のスコアは概ね「安定」を表し、-40%未満のスコアは「否定的センチメント(感情)」を表し、40%超のスコアは「肯定的センチメント(感情)」を表すものとします。


長期的なリターンを得るためにはどのような資産に投資すべきかを判断するのは、難しいことです。イギリスでは、資金的に余裕のあるほとんどの人は過去70年間にわたり、平均的な住宅の価格が実質ベースで5倍(*)になった不動産市場に信頼を置いてきました。また、1957年以来、S&P500(S&P500種指数)から年間12%弱(1)というさらに高いリターンを生み出してきた株式への投資を選択した人もいます。しかし、これら2種類の資産はともに、ここ10年間でもう少し馬力のあるもの、つまり「クラシックカー」にその地位を奪われてしまいました。例えば、イギリスの自動車専門誌である「Classic Car Weekly」は、2005年に8万ポンドで購入した「アストンマーチンDB5」には、現在その10倍近い価値があると伝えています。このように、人気のあるヴィンテージ車種の価値が、軒並み跳ね上がっているのです。民間航空機の世界でも今、2023年の幕開けとともに古い機材が大流行しているようです。

それまで1年半にわたって順調に上昇していたCAMSIのNPSスコアにある種の波乱が起きたのは、昨年11月のことでした。2022年第3四半期から第4四半期にかけて、調査対象となった全機材タイプの平均市場価値(MV)トレンドのNPSは6ポイント低下し、リース料も修正されることになりました。それでも、MVとリース料の両方の指標がともにプラスの領域で推移したのは、特筆すべきことです。問題は、これが一時的な急落なのか、それともより固定的な下落傾向の始まりなのか、ということでした。

ソース:Ascend Commercial Aircraft Sentiment Index

2023年1月の市場価値調査の結果は、前者の一時的な急落という表現の方が、より正確である可能性を示唆しています。2022年10月の前回の価値調査から2023年1月までの間に、平均NPSスコアは+22ポイントから+29ポイントに回復しています。

しかしながら、上のグラフが示す通り、この回復を牽引しているのは新型機ではなく、10年前の機種、すなわちエアバスのA320ceoとA330-300、そしてボーイングの737-800NGと777-300ERなのです。

その結果、CAMSIに含まれる全10機種の個々のNPSが初めてプラスに転じ、価値が幅広く回復していることが確認されました。反対に、新しい機種のNPSは低迷しています。平均するとまだ新しい機種のスコアの方が高いのですが、その差は急速に縮まってきています。私たちが現在実施中の2月のリース料調査の結果が待たれるところです。

NPSスコアがこのように復活した理由はさまざまです。まず、統計的に見ると、エアバスA320neoやボーイング737-8(Max)といった新しい航空機は、CAMSIを開始してからNPSスコアが急激に上昇しているため、平均値あたりにまで戻ることは避けられないでしょう。

第二に、OEMが、新しいナローボディ機の納入の遅れをもたらしている数多くの課題に取り組むまでには、まだほど遠い状況にあるという根拠が示されています。

これは、キャパシティを渇望する航空会社や、成長のために新たな機材を必要とするリース会社にとっては、非常に残念な事態です。それだけではありません。たとえ機材が納入されたとしても、最新世代の超低燃費エンジンが使用されているにもかかわらず、運航時の出発の信頼性(出発信頼度)が期待されるよりも低いことが多いのです。

これらのことから、市場では、景況を浮上させる揚力を提供する旧型機がより好意的に受け止められているようです。結論として、航空会社の新型機が予定通りに納入されていない場合、あるいは業界用語でいうところの「技術的な問題」がある場合、今のところ旧型機に頼る以外に選択肢はないということになります。旧型機は後継機に比べて燃費はよくないかもしれませんが、旅行需要が回復していることを考えると、運賃を支払う乗客が安全かつ確実に空の旅に出られるのであれば、それに越したことはないのです。

*ソース:Barclays Bank
1ソース:Schroders


私たちは、市場のすべての側面を反映させるべく、常に新たなアンケート回答者を探しています。回答者には、調査結果の完全版(上記の内容は主な概要に過ぎません)を入手できるというメリットがあります。アンケートに回答するための時間はわずか3分ですが、それにより回答者は、入手し得る最も大局的な機材価値の市場トレンド情報を手に入れることができるのです。CAMSIのアンケート調査に参加したい方は、michael.graham@cirium.comまでご連絡ください。アンケート回答者には、調査結果の完全かつ詳細な分析(10以上のグラフを含む)が提供されます。

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